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1000万~2000万円の損を乗り越え、500万円を10億円にした「勢い投資」

特集
2022年6月23日 10時00分

第17回 日本株&アメ株で勝つ人
~個人投資家4800人の調査で判明!
(億り人・バガー投資家・クラフトマンさんの場合その1)

登場する銘柄
マネックスG<8698>、アスタリスク<6522>、日本製鉄<5401>、日本電気<6701>、長谷工コーポレーション<1808>、東日本旅客鉄道<9020>

編集・構成/真弓重孝、取材/高山英聖(株探編集部)

【タイトル】クラフトマンさん(40代・男性・専業投資家)のプロフィール:
元手500万円を日本株で9億8000万円に増やした億トレ。主な投資手法は、数日~1カ月で値上がり益を狙うモメンタム投資。2004年に日本株投資を開始し、ITエンジニアとして働きながら、休憩時間などを活用して地道に売買を続けてきた。株式投資では、パチプロとして過ごしたときに体得した確率理論を試行錯誤して築いた勝ちパターンを武器にしてきた。18年に脱サラし、以降は専業投資家として活動。関東在住で、奥さんと子ども2人がいる。

足元の株式相場は、米国の金融政策を巡る思惑で乱高下する状況が続く。中長期的な相場のモメンタム(勢い)は図りにくい状況だが、短期のモメンタムは依然として強い。

今回紹介する専業投資家のクラフトマンさん(ハンドルネーム)は狙った銘柄の株価モメンタムに注目し、数日~1カ月のスイング投資で、500万円の元手を196倍の9億8000万円に増やした億り人だ。

1度も元本追加していないことから、2004年以降の年平均成長率は34%と、腕のいいヘッジファンド並のパフォーマンスを挙げている。成功の秘訣は、「どういう状況になったらモメンタムが出てきやすいか」をパターン化して売買を繰り返すこと。資金の大半を1つの銘柄につぎ込む集中投資を行うので、株価の上昇率が2倍に届かなくても、得られる利益はときに数千万円単位になる。

具体的にどう稼いできたのかを見ていこう。

マネックスG、「インパクト重視」で1億3000万円の利益

モメンタム投資での勝ちパターンは、テーマ株で且つインパクトの強い材料が出た銘柄を狙うやり方。

比較的、最近に成功した銘柄の1つが、ネット証券大手のマネックスグループ<8698>。2018年4月9日と10日に平均取得単価485円で100万株を仕込み、約2週間後の27日に株価621円で売却。5億円を投じ、1億3000万円のリターンを獲得している。

■『株探プレミアム』で確認できるマネックスGの日足チャートの長期推移
(2017年12月~18年10月)

【タイトル】

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同

注目した材料は、同社によるコインチェック(東京・渋谷)の買収提案だ。このニュースが4月3日に報じられると、マネックスG株は急伸し、同日はストップ高で引けている。

「これは一度のストップ高では織り込める材料ではない」。そう感じたクラフトマンさんは、ストップ高をつけた4営業日後に買い出動し、2回に分けて計100万株を購入した。

この材料にインパクトを感じた理由は2つ。1つはテーマ性だ。18年当時は仮想通貨ブーム。暗号資産取引アプリで知名度の高いコインチェックの買収は、市場の注目を集めやすいと思った。

もう1つが、収益性の高いコインチェックをマネックスGがそれなりに安い価格で買収できたこと。その買収価格は、コインチェックの取引所で580億円分の仮想通貨が流出した事故の影響が加味されたもの。クラフトマンさんは、市場の期待は高まると予想した。

購入時に重視するのは長期チャート。週足・月足で表示し、その時点の株価が長い推移の中でどの位置にあるのかなどを確認する。マネックスGでは2009年以降の高値水準を久しぶりに超える水準になっていたことで「大相場に発展する可能性がある」と買い材料を得られた。

このようにクラフトマンさんがチャートで確認するのは、過去の騰落水準などで、テクニカル指標については移動平均線を参考に見る程度にとどめている。

■マネックスGの月足チャート(2008年6月~19年1月)

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利確の基準は、厳格に決めはおらず、ある程度上昇したタイミングを狙う。同社株を27日に手放したのは、その日に大きく値下がりしたため。前日のストップ高でさらなる上昇を期待したが、想定は外れた。「ここで一相場が終わったと判断した」(本人)

「なぜか上がる」の経験則で2500万円稼いだ例も

材料に強いインパクトを感じなくても、「なぜか上がる」の経験則で大きなリターンを掴んだ例もある。それが、モバイル機器向けバーコードリーダーなどを開発するアスタリスク<6522>だ。

同社が新規上場して翌月となる10月19日、クラフトマンさんは株価2015円で購入。8営業日後の29日、株価が2000円台後半に上がったタイミングで利確した。8000万円弱を投じて2500万円の利益を得た。

■アスタリスクの日足チャートの長期推移(2021年9月~12月)

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注目したきっかけが、購入前日の10月18日に同社株がストップ高を付けたこと。理由を調べると、同社が同15日に発表した業績予想が材料視されたことがわかった。

発表では、22年8月期に売上高が前期比39.9%増、営業利益が同71.1%増、当期純利益が同49・8%と、2桁の増収増益予想とした。

この内容は、クラフトマンさんにとっては、それほどインパクトの強いものではなかった。にもかかわらず買い判断を下したのは、上場後に株価が冴えないIPO(新規株式公開)銘柄がしばらくしてポジティブ材料を発表すると、上場初日の株価を超えて何倍にもなるケースを何度か見てきたからだ。

「今回も同じ事が起きるかもしれない」と購入に踏み切り、リターンをさらった。ただし、同社株はクラフトマンさんの利確後も上昇し、11月半ばにはクラフトマンさんの買値の3倍を超える6685円の高値をつけている。

本人は「利確が早かった」と後悔しているが、わずか半月で株価が50%ほど跳ね上がったことを踏まえれば、「頭と尻尾はくれてやれ」という相場の格言に乗る方が正解だったといえそうだ。

勝率20~30%でも資産倍増の秘訣

このように集中投資で大きなリターンを掴んできたクラフトマンさんだが、もちろん全ての売買で成功しているわけではない。むしろ一度の売買における勝率は「20~30%程度。勝ちより負けの方が多い」と本人は振り返る。

集中投資を行う理由は、リスクを取ってより大きなリターンを得るのと、機敏に動けるようにするため。後者で特に意識しているのが暴落の兆候を察したとき。「すべて売り切るのに時間がかかるリスクを小さくしたい」(本人)

クラフトマンさんは集中投資のリスクをどう乗り越え、成功を勝ち取ったのか。秘訣をキーワードにすると、「瞬時の切り替え」と「粘着質」という一見相反する2つになる。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 「確率変数の収束」を投資に応用

 

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