オプティム Research Memo(1):主力のライセンス収入が好調に推移し、創業来22期連続増収を達成(1)

特集
2022年7月8日 15時01分

■要約

オプティム<3694>は、現 代表取締役社長の菅谷俊二(すがやしゅんじ)氏が佐賀大学学生時代である2000年に友人らと起業したAI・IoT技術を得意とするベンチャー企業である。“ネットを空気に変える”がミッションであり、「OPTiM Cloud IoT OS」のデファクトスタンダード化を通じて、第4次産業革命の中心的役割を果たす企業を目指している。従業員数は645名(2022年4月1日時点)で、その約7割がエンジニアである。当初から世の中にないサービスを作り出すことを念頭に技術開発を行っており、関連の特許を数多く所有している。大手企業のパートナーは数多く、同社の技術力やポテンシャルは内外からも高く評価されている。2014年に東京証券取引所(以下、東証)マザーズ上場、2015年には同市場1部に昇格し、2022年4月の同市場再編に伴いプライム市場へ移行した。

1. 事業内容

同社の事業は、「Optimal Biz」を主体とする事業(Corporate DX)と、「OPTiM Cloud IoT OS」を活用した事業(Industrial DX)に分けられる。「Corporate DX」は全業種・産業を対象とした社内業務改善・効率化のためのデジタル化を提案する。「Optimal Biz」等の提供を通じて累計18万社以上の顧客基盤を有しているが、この顧客基盤に対して、「OPTiM ID+(プラス)」や「OPTiM Contract」といった新たな提供価値を持つサービスを、販売パートナーを活用して提供する。主力サービスであるデバイス管理「Optimal Biz」は、企業向けのスマートフォン・タブレット・パソコン・IT機器などのセキュリティ対策や一括設定の分野で必要不可欠なサービスで、成長する国内MDM(Mobile Device Management)市場でシェア1位を11年継続している。また、ストック型のビジネスモデルであり、この安定収益が同社の開発投資を支えている。「Industrial DX」は、「OPTiM Cloud IoT OS」を基盤に、個別産業を対象に事業創造のためのデジタル化を推進する。AI・IoTの新プラットフォーム「OPTiM Cloud IoT OS」は2016年に「Optimal Biz」を進化させ完成し、これによりITを使って業界に変革を起こす「〇〇×IT(〇〇に業種が入る)」の取り組みが本格化した。最も成果が顕在化しているのは建設業界である。2017年には小松製作所<6301>(以下、コマツ)など4社共同で建設生産プロセスの新プラットフォーム「LANDLOG」がスタートし、パートナー企業及び顧客が増え続けている。農林水産業では、2016年に農業分野でドローンを活用した害虫駆除の実証実験に成功した。2018年には同社が主導する“スマート農業アライアンス”が全国規模で行われ、米や大豆を始めとする作物が本格的に収穫された。医療分野においては、2016年に遠隔診療サービス「ポケットドクター」、2020年に「オンライン診療プラットフォーム」をリリースした。直近では、(株)メディカロイド(川崎重工業<7012>とシスメックス<6869>の合弁会社)が開発した国産初の手術支援ロボットシステム「hinotori(TM) サージカルロボットシステム」のネットワークサポートシステムに、同社の技術が使われている。

同社は創業来、知財戦略に基づく豊富な技術力及び事業創造力を背景に、常に革新的なサービスを提供し新しい市場を開拓してきた。国内市場ではシェア1位のサービスを複数擁し、豊富なライセンス収益を基盤としたビジネスモデルを確立している。また、近年ではAI・IoT・Big Dataのマーケットリーダーとして、各産業のトッププレイヤーと強固なビジネスディベロップメントを推進している。

2. 業績動向

2022年3月期の連結業績は、売上高が前期比10.5%増の8,310百万円、営業利益が同15.2%減の1,534百万円となり、創業来22期連続の増収を達成した。売上構成の約7割を占めるストック売上では、主力サービスである「Optimal Biz」が順調にライセンス数を増やした。同サービスは、国内MDM市場において11年連続でトップシェアを獲得しており、デファクトスタンダードとなっている。その他のストック売上としては「OPTiM Cloud IoT OS」関連も好調に推移した。売上構成の約3割を占めるフロー売上も堅調に推移しているが、これらは主に数年前から取り組んでいる〇〇×ITの3大産業分野(農業×IT、医療×IT、建設・土木×IT)からの業績貢献である。利益面では前期比で減益となったが、これは2023年3月期以降の収益拡大を見据え、積極的に成長投資を行ったことが要因である。同社のビジネスモデルは本来、売上高営業利益率で20%以上を出す実力を持つが、第4次産業革命の中心的役割を果たす企業を目指し、先行投資を積極的に行った。

3. 成長戦略・トピックス

「Corporate DX」は、全業種・産業を対象とした社内業務改善・効率化のためのデジタル化である。新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)により、オフィス業務のデジタル化によるリモートワーク推進、業務効率化、コスト削減といったニーズが急拡大している。同社は、「Optimal Biz」等の提供を通じて累計18万社以上の顧客基盤を有しているが、この顧客基盤に対して、IoT向け遠隔操作サービスや認証セキュリティサービス、契約書管理サービスといった新たな提供価値を持つサービスを、販売パートナーを活用して提供することを目指す。

「Industrial DX」は、個別産業を対象とした事業創造のためのデジタル化である。これまでの「〇〇×IT」戦略の推進により、同社のAI・IoTプラットフォームへの接続デバイスや産業向けキラーサービスが増加していることから、デバイスカバレッジの強化や産業用キラーサービスの開発・提供を継続して推進していく。トピックスとしては、農業分野では2021年11月に、ピンポイント散布シリーズに新しいラインナップ「ピンポイントタイム散布」が加わった。建設・土木分野では2022年3月に、国土交通省が改定した「3次元計測技術を用いた出来形管理要領」において、3次元測量アプリ「OPTiM Geo Scan」が国内で初めて要領に準拠したアプリケーションとなった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)

《YM》

提供:フィスコ

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