デリバティブを奏でる男たち【32】 オクジフ改めスカルプター・キャピタル(前編)

特集
2022年7月25日 13時30分

◆利益ランキングの控えめな常連

今回はオクジフ・キャピタル・マネジメントを取り上げます。同社は2019年に創設者のダニエル・オクが退社した際、社名をスカルプター・キャピタル・マネージメント<SCU>に変更しました。この会社は最近のヘッジファンド利益ランキングにおいて、2018年に11位、2019年に14位、そして2020年と2021年はともに13位でした。ランキング上位の常連というわけではありませんが、常に安定した地位を確保している「控えめな常連」といったところでしょうか。

2018~2021年利益トップ15のヘッジファンド(単位は10億ドル)
2018年の利益2019年の利益2020年の利益2021年の利益
1ブリッジ
ウォーター
8.1TCI8.4タイガー・
グローバル
10.4TCI9.5
2ルネサンス4.7ローン・
パイン
7.3ミレニアム10.2シタデル8.2
3ツーシグマ3.2ルネサンス5.6ローン・
パイン
9.1DEショー6.4
4シタデル2.1エガートン5.0バイキング7.0ミレニアム6.4
5DEショー2.0シタデル4.9シタデル6.2エリオット6.0
6ミレニアム1.8バイキング4.3DEショー5.4ブリッジ
ウォーター
5.7
7ファラロン1.3ファラロン3.7エリオット5.0バウポスト3.4
8ブレバン・
ハワード
0.9ミレニアム3.4TCI4.2ファラロン3.3
9エリオット0.8エリオット3.2エガートン3.7サード・
ポイント
3.3
10バウポスト0.4DEショー2.8ブレバン・
ハワード
3.0エガートン3.1
11オクジフ/
スカルプター
0.2バウポスト2.4ファラロン2.9デービッド・
ケンプナー
2.4
12キャクストン0.2SAC/
ポイント72
2.3SAC/
ポイント72
2.5アパルーサ2.1
13SAC/
ポイント72
0.0アパルーサ1.5オクジフ/
スカルプター
2.3オクジフ/
スカルプター
1.9
14ムーアキャピタル-0.1オクジフ/
スカルプター
1.3アパルーサ1.9キングストリート1.8
15キングストリート-0.1ポールソン1.1キングストリート1.6SAC/
ポイント72
1.7
全社-41.0全社178.0全社127.0全社176.0

出所:各種報道(再掲)

ユダヤ人の創設者オクは1961年に生まれました。米ニュージャージー州メープルウッドで育ち、両親が設立したデイスクール(寮制ではない私立学校)、ソロモン・シェクター・デイスクール・オブ・エセックス・アンド・ユニオン(後に彼の母親の名にちなんでゴルダ・オク・アカデミーと改名)に通いました。卒業後はペンシルベニア大学に進学し、化学を専攻していましたが、入学1年後にウォートン・スクールへ移り、金融学を専攻します。

ということは、第7回で取り上げたポイント72アセットを率いるスティーブン・A・コーエンや第10回で取り上げたオークツリー・キャピタルを率いるハワード・マークスの後輩であり、第31回で取り上げたD1キャピタルパートナーズを率いるダニエル・S・サンドハイムの先輩ということになります。

オクは大学を卒業後、金融業界でのキャリアを名門投資銀行のゴールドマン・サックス・グループ<GS>でスタートしました。そこでは後にゴールドマンの共同会長となり、米財務長官も務めたロバート・ルービンが率いるリスクアービトラージ(上場企業間のM&Aに伴う裁定取引)部門を担当します。リスクアービトラージに関しましては、第26回ファラロン・キャピタルのトム・ステイヤー(前編)のところで簡単に説明しましたので、ご参照ください。ちなみに、ステイヤーも同じ頃にゴールドマンのリスクアービトラージ部門で働いていました。

▼ファラロン・キャピタルのトム・ステイヤー(前編)―デリバティブを奏でる男たち【26】

https://fu.minkabu.jp/column/1408

◆自らのファンドを立ち上げる

オクはリスクアービトラージ部門から株式部門へ異動となった後、自己勘定取引の責任者、米国株式取引の共同責任者へと出世していきます。同社ではある程度キャリアが進むとプレイヤーからマネージャーへ昇格することになりますが、彼はプレイヤーとして投資業務を続けていたかったようです。

そこで11年間働いたゴールドマンを離れ、1994年に自らのファンドを立ち上げることにしました。ちょうど第14回で取り上げたアパルーサ・マネジメント率いるデビッド・テッパーも1992年にゴールドマンを離れ、自らのファンドを立ち上げていましたので、もしかしたらオクは、そんなテッパーや以前に同じ部門で働いていたステイヤーに感化されたのかもしれません。

▼アパルーサ・マネジメントのデビッド・テッパー(前編)―デリバティブを奏でる男たち【14】

https://fu.minkabu.jp/column/1179

ファンド立ち上げの際は、米技術メディア誌のパイオニアとして知られ、出版王ともいわれたジフ・デイビス<ZD>のウィリアム・バーナード・ジフ・ジュニア(1930-2006)の息子たちが運用するジフ・ブラザーズ・インベストメントと提携。1997年末まで他の資金運用をしないとの約束で1億ドルの初期投資を得て、オクジフ・キャピタル・マネジメントを創設しました。

(続きは「MINKABU先物」で全文を無料でご覧いただけます。こちらをクリック)

◆若桑カズヲ (わかくわ・かずを):

証券会社で株式やデリバティブなどのトレーダー、ディーラーを経て調査部門に従事。マーケット分析のキャリアは20年以上に及ぶ。株式を中心に債券、為替、商品など、グローバル・マーケットのテクニカル・需給分析から、それらに影響を及ぼすファンダメンタルズ分析に至るまで、カバーしている分野は広範囲にわたる。MINKABU PRESS編集部の委託により本シリーズを執筆。

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