100倍の原動力は身近な銘柄選び、でも本当に貢献したものは
すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 お多福さんの場合-第2回
2018年に40万円を元手に株式投資を開始。2年ほどで利益を100倍、その後に5000万円の追加資金を経て4年で億り人になったすご腕ウーマン。本業では勤務時間が安定せず、時間のやりくりに追われる兼業投資家。2人の子供の母でもある。
投資スタイルは、新高値を抜けた銘柄に着目し、期待値の高い銘柄にピラミッティングをしていくトレンドフォロー型。投資知識を身に付けるため、図書館でたくさんの投資本を借りて読み、成功者の記事をノートに貼って繰り返し確認するなど努力を積む。
現在も通勤時間に投資動画や自身作成の投資メモを読むなど学習を継続中。四半期決算時は手書きのノートで業績変化をメモして気づきを得る。実際に店舗や関連施設に足を運び、自身の目でも好業績につながる要素があるかも確認する。勉強会では自発的に学び、様々な考え方を貪欲に吸収し、自己研鑽中だ。
第1回「開始2年で利益100倍のパワフル女子、郵船トレードで7割増の技」を読む
お多福さん(ハンドルネーム)は、投資開始後2年ほどで元本40万円を100倍の4000万円に拡大させている。その原動力になったのが、「遠くの半導体より、身近でわかる銘柄」のスタイルだ。
これをモットーに、神戸物産<3038>、エムスリー<2413>、ケアネット<2150>など、自分の仕事や理解しやすい業種の中から、その時々のスター銘柄にうまく乗ることに成功した。
身近な銘柄で攻めることに徹することになったのは、半導体関連銘柄のRS Technologies<3445>で、それまで乗っていた35%の含み益を溶かし損失を出すというイタイ経験をしたこと。この失敗を教訓に自分自身が理解できる銘柄に対象を移し、実店舗を見に行ったり、スタッフから情報収集をしたりなどの方法を加えて投資判断するようになる。これが大成功を呼び込んだ。
投資を始める際に、自分の職種に関連するセクターの銘柄や、外食産業や小売など商品の良し悪しや業績の動きを、自分の目と耳で確認しやすいセクターの銘柄を狙うのは、よくあるケースだ。
そんな中、初心者だったお多福さんが短期間で目覚ましい成果を出したのは、常に「自分はまだまだ未熟者だから、理解できるところから始めよう」と謙虚にとらえ、貪欲なまでに学ぶ姿勢を持ち続けていることだ。
今回はお多福さんの、その留まることなき進化を支える意識の変化に迫る。まずは、ステップアップの土台となった神戸物産のトレード例から見て行こう。
神戸物産では、株価4倍上昇の波に乗る
「めっちゃ安い!」
お多福さんの資産拡大につなげた成功銘柄の1つ、神戸物産との出合いは、子どもが大好物のアイスクリームを買いに業務スーパーに出かけた際、商品価格の安さに思わず目を疑ったことだった。
同社株の初回買いをしたのは、投資を始めて約半年後の2018年12月末。以降、買い増し、利確をタイミングよく行い、全保有分を利確したのは20年の8月25日前後となる。この間、同社の株価は4倍以上も上昇。1回目で触れた日本郵船<9101>のトレードと同様、この上昇の波をほぼあますことなくさらった形だ。
途中、主な買い増しをしたのは、19年9月中旬頃(チャートの①の部分)。同月12日の、19年10月期第3四半期決算発表後、引き続きの業績好調を受けて、軟調だった株価が上昇に転じたタイミングだ。この年、10月から消費税が10%へと増税になり、低価格商品が人気の業務スーパーにより注目が集まることも期待した。
次いで20年1月初め(②の部分)、19年12月発表の通期決算の好調を確認し、かつタピオカブームも追い風となり、株価上昇に勢いが出てきた頃だ。
その後、20年3月のコロナショックでは全体相場に引きずられて調整を余儀なくされたものの、同社の成長シナリオは変更なしと判断。含み益が乗り気持ちや資金に余裕があったことなども支えとなり、ポジションを減らしつつもホールドを継続する。結果、その後の反転局面もしっかリ捕まえることができた。
■神戸物産の週足チャート(18年1月~20年12月)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
■『株探プレミアム』で確認できる神戸物産の四半期業績の長期推移
街角ウォッチングが冴えたトレード
神戸物産株を初めて購入したのは、投資を始めてそう実績も積んでいない頃。1回目記事で触れた「新高値抜きタイミングで買い出動」「4つのステージ」「ボックス理論」など、主としてテクニカル面での投資判断に役立つ知識はまだ持たない時期だった。
そんな中で、お多福さんの強みとなったのは、「身近な会社だからこそ、変化に気づくことができるのでは?」という気づきをもとに、企業ウォッチングに力を入れたことだった。
買って安心して放ったらかしではなく、業績や月次の内容に変化がないか、IR(投資家向け広報)ニュース等の確認を継続したことが好トレードにつながる。
この行動は、単に「バイ・アンド・ホールド」するのではなく、米国の投資家、ジム・クレイマー氏が唱える「バイ・アンド・ホームワーク」、つまり「買った後にホームワークをしよう」に即したもので、投資勉強会で紹介された考え方だ。
では、先に触れたとおり、神戸物産が展開する業務スーパーの安さに驚き興味を持って以降、何を考え、どんな行動をとったのか。
駐車場の車を見ると、次第に高級車が増えていく
お多福さんは、スーパーへの関心を高めアンテナを張りながら通ううち、ある変化が見えてくる。
駐車場に止められる車を見ると、これまで目立ったのは軽トラックや年季が入った車だったのに、次第にそれがセレブ系の雰囲気へと変わっていく。ファミリータイプや、トヨタのレクサスなど皆が良く知る高級車が増えていったのだ。
この頃、店内の客層に目を向けると、以前と比べて、ファミリー層や普段あまり見かけない上品そうなお客さんが目に付くようになった、とお多福さんは言う。さらに、こうした新たな客層が、いくつもの買い物かごを使って商品を大量に購入していく姿を見る機会も多くなっていく。
客単価上昇の動きが業績押上げにつながると見たお多福さんは、早速、企業のウェブサイトを確認へ。同社の差別化項目として「ローコストオペレーション」「M&A(企業の合併や買収)」「フランチャイズ」がキーポイントになっていることを知る。
どれも初めて聞く用語で戸惑いはしたが、そこで思考停止にはならないのがお多福さん。1つ1つ、言葉の意味を調べ、それでもわからないところはIRに問い合わせをし、業務スーパー、ひいては神戸物産の強みを理解し期待感を膨らませていった。
■神戸物産が展開する業務スーパーの店頭写真
注:筆者撮影
仕事帰りの疲れた時も、「あれ?」と思ったらまずは確認
自分の目で見て納得するまで知るために、足を使って調べることも惜しみなく行っていく。
20年コロナ禍のある時、ニュースで「輸入品の納入が滞っている」と伝えられると、輸入品の取り扱いが多い神戸物産にも影響があるのではないかと思い、すぐに店舗に確かめに行ったという。
店舗内を見渡すと、確かに商品はほとんどない状態。店のスタッフに様子を伺うと、「コロナ禍でお客さんが商品の買いだめをしている」との返事がくる。強い需要を感じて、その後の業績アップの確信度を高める材料となった。
こうした取り組みと並行して、同社株購入後、ルーティンワークとしていたこともいくつかある。四半期ごとのIR資料の読み込みなど、自分なりの定点観測を行うことだ。月次や四半期決算が発表されると、その都度、売り上げや粗利益、営業利益の進捗を評価し、成長鈍化の兆しはないかを確認していった。
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