明後日の株式相場に向けて=「逆金融相場終了」のコナンドラム
きょう(10日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比180円安の2万7819円と続落した。7月下旬に長期波動の分水嶺である200日移動平均線を明確に上回り、その後も2万8000円台固めの動きが定着し、いよいよ満を持してボックス圏上放れかと思った矢先、前日は思ったよりも深押しで2万8000円ラインまで押し戻された。リズム的にはきょうが踏ん張りどころだった。切り返せなくとも前日終値からそれほど離れていない地点で着地してお茶を濁せるのであれば、お盆明けの上昇相場に向け期待が募りやすい。日柄的には上昇一服のタイミングであるにせよ、2万8000円に片手が届く状態と、2万7000円台後半まで押し返されるのとでは、投資マインドにはかなりの差が生じる。そう考えた場合、きょうの大引け2万7800円近辺は微妙な位置ではある。
日本時間今晩に発表される7月の米消費者物価指数(CPI)に、マーケットの関心が高く、ここを通過するまでは売りも買いも慎重にならざるを得ないというのが市場筋の見方だが、東京市場はあすが「山の日」の祝日に伴う休場で、正直、固唾を呑んで見守るというほどの緊張感はない。仮に米国株市場がCPIの結果に反応して上下どちらかに大きく振れても、東京市場にその影響が及ぶのは明後日であるため、「今晩の米株市場の値動きを、明日の米株市場の値動きが希薄化させ、ともすればこの2日間で指数は往って来いとなるようなケースも考えられる。いずれにしても東京市場への影響は限定的となり、大したノイズとはならないだろう」(ネット証券ストラテジスト)という見方も示されている。
7月の米CPIは総合で前年比プラス8.7%前後が事前のコンセンサスであり、6月は同9.1%と約40年ぶりの高水準を記録したが、それよりは鈍化するとの見方が強い。何といっても6月と7月では原油価格の水準が大きく異なり、6月は一時1バレル=120ドル台で推移するような場面を含め、ほぼ110ドル以上で推移したが、7月は100ドル台を下回り90ドル台で推移する日が多かった。したがって、総合CPIの上昇率が鈍化することは株式市場もほぼ織り込んでいる。
もっとも、注意しなければならないのは、生鮮食品価格やエネルギー価格を除外したコアCPIの数値で、こちらは6月よりも上昇率が加速している公算が大きい。6月の米国のコアCPIはプラス5.9%だったが7月はコンセンサスの段階で6.1%と0.2ポイント伸びが加速する見通しだ。コアCPIの上昇率が想定以上に強ければ、そう簡単にインフレがピークアウトしたという論調にはつながらない。
ただし、「今回のCPIの結果もFRBの金融政策に大きな影響を与えるか否かという点では、メディアが言うほど重要ではない」(国内証券系エコノミスト)という指摘もある。というのは、今月5日に発表された7月の米雇用統計で非農業部門の就業者数が前月比52万8000人の増加と事前予想の25万人の2倍以上という大幅な上振れとなり、失業率も含め新型コロナウイルスの影響が出る前の水準を回復した。今回のCPIがどういう数値でも関係なく、既に9月のFOMCではFRBが0.75%の政策金利引き上げを行うとの見方が主流である。「懸念があるとすれば、今回と8月のCPIと合わせて数値が想定を大きく上回り、インフレがピークアウトせずに加速するといったようなケース。この場合は9月FOMCで1%利上げの選択肢も浮上し、全体相場の波乱要因となる」(同)という。しかし、今晩発表のCPIの結果でここまでは織り込みに行く可能性は低い。
もう少し長期的な視野で俯瞰してみる。米長期金利の動向を見る限り、米経済は来年失速してFRBは一転利下げに動くという未来図が想定されている。現実性に乏しいようにも思えるが、10年債利回りが3%を下回る水準が定着している今の状況は、そのシナリオ以外には考えにくい。とすれば、「逆金融相場」からの離脱が今後の米株高のメインテーマとなり得るが、忘れてならないのは経済失速・企業収益悪化という「逆業績相場」に同時進行で遭遇する可能性が高いことだ。過度に悲観する必要はないが、このまま巡航速度で長期上昇トレンドに再突入できるほど相場は甘くないと考えておいたほうがよいと思われる。
あすのスケジュールでは、東京市場は山の日の祝日で休場となる。海外では石油輸出国機構(OPEC)の月次報告のほか、7月の米卸売物価指数(PPI)、米新規失業保険申請件数の発表などが予定されている。(銀)