「石炭関連株」は燃え上がるか、脱炭素の葛藤抱えるも物色期待高まる <株探トップ特集>

特集
2022年8月13日 19時30分

―ウクライナ危機でドイツも再活用模索、冬場のエネルギー需要期に向け思惑も―

旧来型エネルギーの代表格である「石炭」がにわかに注目を集めている。キッカケとなったのは、今年2月に勃発したロシアによるウクライナへの軍事侵攻だ。日米や欧州連合(EU)などはロシアに対する経済制裁を強めるとともに、ロシア産天然ガスへの依存度を低下させることが求められた。とはいえ、急きょ大量の液化天然ガス(LNG)を調達することは難しく、環境先進国・ドイツは「石炭火力発電 」の再活用に踏み出した。石炭は大量の二酸化炭素(CO2)を排出させるものの、冬場のエネルギー需要期の電力確保に向けた対応は待ったなしだ。石炭火力発電を巡る動向を探った。

●脱石炭火力発電、欧州に潮流の変化

石炭は、他の燃料に比べて埋蔵地が分散しており価格の変動が少なく、安価で安定して調達することができる特長を持つ。ただ、CO2などの排出量が多いことから世界では脱石炭火力発電が模索されてきた。実際、昨年秋の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では、欧州などは石炭火力の段階的「廃止」を求めた。結局は新興国の抵抗で段階的「削減」が決まったが、欧米では石炭火力発電の全廃を求める声も強く、石炭火力への依存度の高い日本は欧米の環境団体から強い批判を浴びてきたのが実状だ。しかし、そんな石炭火力発電を巡る状況を一変させたのが、ロシアによるウクライナ軍事侵攻だ。

2月に勃発した「ウクライナ危機」により日本を含む先進国などはロシアに対する経済制裁を発動。ロシア産の石油や天然ガスへの依存度低下を進める動きを強めた。その一方、ロシアはエネルギー輸出を武器として使う姿勢を強め始め、特にロシア産天然ガスの依存度の高い欧州にガス供給量を削減する動きをみせている。春先以降、欧州のガス価格は急騰するなか、エネルギー不足に対する危機感が高まっている。

●日本の石炭火力発電技術に見直し期待も

こうしたなか、電力不足の解消に向け欧州を中心に原子力発電や石炭火力発電を見直す動きが浮上している。特に、環境規制問題での旗振り役だったドイツが、石炭火力発電の再活用に動き始めたことは象徴的な出来事と受け止められた。とりわけ、これから電力需要が高まる冬が近づくとともに、石炭火力発電の稼働を含むエネルギー危機対策に対する関心は一段と高まりそうだ。

日本に目を向ければ、最新鋭の石炭火力発電所に採用されているUSC(超々臨界圧微粉炭火力発電)の発電効率は約40%と世界トップクラスと言われている。今後は更に水素・アンモニアなどの活用による火力の脱炭素化を目指し、2050年には火力発電からのCO2排出を実質ゼロとする技術開発を進めている。足もとのエネルギー危機は、日本の技術を見直すきっかけとなる可能性もある。以下、石炭火力発電の関連株を挙げる。

●三井松島HD、住石HD、Jパワー、出光興産など注目

◎三菱重工業 <7011> [東証P]~超臨界圧及び超々臨界圧火力発電分野で豊富な実績を有している。同社を幹事に福島県いわき市で進めてきた石炭ガス化複合発電(IGCC)設備も21年4月に運転開始。同設備は同社が開発した空気吹き石炭ガス化技術を活用した初めての大型商用機で、世界最大規模のIGCCになる。

◎Jパワー <9513> [東証P]~中国電力 <9504> [東証P]と共同出資する大崎クールジェン(広島県大崎上島町)は4月、究極の高効率発電技術といわれる石炭ガス化燃料電池複合発電(IGFC)とCO2分離回収技術を組み合わせた低炭素石炭火力発電の実現を目指す「大崎クールジェンプロジェクト」の最終段階の実験を始めたと発表。同技術が確立すれば商用機では発電効率は55%に達する見通し。

◎三井松島ホールディングス <1518> [東証P]~石炭商社である同社は5日、23年3月期業績の上方修正を発表。営業利益は従来計画の143億円から232億円(前期比2.8倍)へ大幅に増額修正した。石炭市況の高騰を背景にエネルギー事業が絶好調に推移している。配当予想についても従来計画の160円から70円積み増し、年間配当は230円(前期80円)に見直した。配当利回りは6%台の高水準にある。

◎住石ホールディングス <1514> [東証S]~石炭大手でオーストラリアなどからの輸入が主力。石炭事業が売上高の9割を占める。第1四半期決算では、採石事業部門において、原子力関連工事向けの出荷量が大幅に減少したが、石炭事業部門は増収増益を確保した。23年3月期連結営業利益は前期比2.4%増の24億円の見込み。

◎出光興産 <5019> [東証P]~石油元売り大手だが、オーストラリアで石炭鉱山事業を展開し、石炭関連の側面も持つ。23年3月期連結純利益は従来予想の1650億円から2800億円(前期比0.2%増)とする増額修正を発表。豪州一般炭スポット価格の上昇などが寄与している。

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