【植木靖男の相場展望】 ─そろそろ主役が望まれる段階へ
「そろそろ主役が望まれる段階へ」
●米国株は底入れ、日本ではカネ余り相場が続く
日経平均株価は8月に入り、少しの間とはいえ米国株価に先行する格好で上昇し、投資家心理の節目とされる2万9000円台を回復した。
とはいえ、やはり米国株の日本株への影響は大きく、実際、海外投資家の日本株買いは7月以降の6週間で現物、先物の合計で2兆4700億円も買い越している。
米国株は明確に底入れしたとみてよさそうだ。このところ発表される米国消費者物価指数(CPI)は市場予想を下回り、インフレはピークアウト、米国の利上げペース鈍化への期待が高まっていることが背景にある。やはり、米国株が活発になると日本株への資金流入も増えてくる。加えて、本年度のGDP成長率は欧米を上回るとの見方も支援材料だ。
もっとも、警戒感もにじむ。今回の世界的な高インフレはなぜ起きたのか? ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇や、サプライチェーンの混乱などの原因はあるが、根本にあるのはおカネの刷り過ぎである。
通貨が膨張すれば、その価値は下がり、逆にモノの価値は上昇する。当然である。
つまり、インフレを収束させるのは金利の上昇というより、刷り過ぎた通貨を回収することだ。その意味で9月からの月950億ドルという本格的なQT(量的引き締め)は興味深い。とはいえ、効果が顕在化するのは先の話だ。逆にいえば、米国株価の上昇はしばらくは持続するはずである。
一方、わが国のインフレ率はまだ低いとして、日銀は引き続き金融緩和政策を維持している。カネ余り相場は続くとみてよい。
●最後の肝は2万9300円~2万9500円処
ところで、冒頭で述べたように市場は2万9000円大台を節目とみているが、実際は戻り相場の最後の肝は2万9300円~2万9500円処だ。日経平均株価は8月17日に2万9222円まで上昇したが、この最後の肝となる水準を目前にして一服の状況にある。この肝を突破すれば3万円も視野に入る。
だが、6月中旬の底入れから早くも2カ月が経過し、全般底上げ相場も定石からいえばほぼ限界に近づいている。その証に、米国で突如、小型仕手株のような面妖な銘柄が急騰。これを受けて日本株も、いわゆる“村上銘柄”群が息を吹き返している。
日本株がいよいよ最後の肝を突破し3万円を目指すとすれば、これまでの全般底上げではなく、新たな牽引役を模索する段階に入ってきたことを、仕手系株の活躍は暗示しているのではないか。
たとえ、それがここ一両年、大狂乱を演じたグロース株でもよいし、軍需株、エネルギー株でもよい。日経平均を3万円に引き上げるに足る新しい主役を、そろそろ市場は望んでいるようにみえる。日替わり相場からの早期の脱却が必要だろう。
さて、今回は2万9000円を巡る攻防戦が続くことを前提に銘柄をセレクトしてみたい。まず、富士石油 <5017> [東証P]だ。腕に自信のある投資家向けの銘柄だろう。
次いでキヤノン <7751> [東証P]。円安がさらに進むとみればおもしろい存在となろう。
大きく下げた鉄鋼株から大平洋金属 <5541> [東証P]もクセはあるがボラティリティが高く、人気がある。
最後に日本電波工業 <6779> [東証P]、日本ケミコン <6997> [東証P]なども妙味がありそうだ。
2022年8月19日 記
株探ニュース