【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─下値は堅く、グロース・バリューの混在相場に

市況
2022年8月28日 14時00分

「下値は堅く、グロース・バリューの混在相場に」

●企業業績は想定以上に堅調、FOMC利上げ幅が焦点に

9月中旬までの東京株式市場は、引き続き外部環境の動向を伺う展開が想定される。特に9月21日のFOMC(米連邦公開市場委員会)に向けて、神経質になる場面も予想される。国内企業の業績は想定よりも順調に推移しており、下値は堅い展開が予想される。日経平均株価の予想レンジは2万7500円~2万9500円。

9月の注目スケジュールは1日の米ISM製造業景気指数、2日の米雇用統計、6日のISM非製造業景気指数、8日のECB(欧州中央銀行)理事会、13日の米消費者物価指数(CPI)、15日の米小売売上高、21日のFOMCの結果発表、22日の日銀金融政策決定会合の結果発表など。特にFOMCでの利上げ幅が0.5%か0.75%になるかに市場の関心が高い。

23年3月期の第1四半期(4-6月)決算発表が一巡した。大手調査機関によれば、プライム上場企業の同期間の営業利益は前年同期比7%増だった。決算発表前には原材料高や物流費の高騰、供給網の停滞など懸念材料ばかりだったことを考えると、企業業績は想定以上に順調といえる。

日本経済新聞社によれば、23年3月期通期の純利益は前期比3%増になり、2期連続の最高益更新の見通し。新型コロナ禍で落ち込んでいた人の活動が再開し、鉄道 空運など非製造業の回復が鮮明に。一方、製造業は原材料コストの上昇や半導体不足などの供給網の停滞が響き、円安ではカバーしきれないもよう。ただ、製造業でも独自のビジネスモデルなどで好業績の企業も少なくない。第1四半期は4社に1社が最高益を更新した。第1四半期発表直前の日経平均株価の1株利益は約2100円程度だったが、直近では2224円まで上昇。8月中旬までの日経平均株価の上昇にもかかわらずPER(株価収益率)は13倍前後に抑えられている。

●安値期日到来や高利回り銘柄への注目高まる

物色面では、グロースとバリューの混在相場となりそう。決算が良好だったTDK <6762> [東証P]、KOA <6999> [東証P]、フェローテックホールディングス <6890> [東証S]、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス <7532> [東証P]、国際紙パルプ商事 <9274> [東証P]などが素直に買われている。一方、9月は3月期決算企業の上半期の配当権利付きで、高利回り銘柄への資金流入が期待される。

需給面では、安値からの信用売り方の期日到来銘柄にも関心が高い。日経平均株価の今年安値は3月9日の2万4717円(終値ベース)で、この期日が9月8日に到来する。買い戻し圧力がかかりやすい。個別で3月上旬安値銘柄は富士急行 <9010> [東証P]、ラウンドワン <4680> [東証P]、サンリオ <8136> [東証P]、日本航空 <9201> [東証P]、藤田観光 <9722> [東証P]などの経済再開関連が比較的に多い。このほか、ブリヂストン <5108> [東証P]、芝浦メカトロニクス <6590> [東証P]、三井ハイテック <6966> [東証P]なども該当する。

東京都では9月1日から都民割を再開すると表明、政府は訪日客への水際対策を緩和すると発表している。新型コロナ感染者がピークアウトすればホテル旅行、陸空運、外食などが注目される可能性もありそうだ。

配当の権利付き最終日は28日。主な高利回り銘柄は、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]、三井住友フィナンシャルグループ <8316> [東証P]のメガバンクのほか、商社では丸紅 <8002> [東証P]、三井物産 <8031> [東証P]、三菱商事 <8058> [東証P]、海運の日本郵船 <9101> [東証P]、商船三井 <9104> [東証P]などが主力。このほか日本郵政 <6178> [東証P]、武田薬品工業 <4502> [東証P]、三菱HCキャピタル <8593> [東証P]、SOMPOホールディングス <8630> [東証P]、ソフトバンク <9434> [東証P]などにも関心が高まりそうだ。

また、岸田首相が休止中の原子力発電所の再稼働や次世代原子炉の開発・建設を指示した。次世代で有望視される小型モジュール炉に前向きなのは三菱重工業 <7011> [東証P]、IHI <7013> [東証P]、日立製作所 <6501> [東証P]など。既存原発のメンテナンスでは東京エネシス <1945> [東証P]なども注目されそうだ。

(8月26日 記/次回は9月25日配信予定)

■和島英樹(Hideki Wajima)

株式ジャーナリスト

日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。

株探ニュース

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.