鈴木英之氏【2万8000円割れに急落、9月相場の見通しは】 <相場観特集>
―パウエルFRB議長のタカ派発言受け、市場に警戒感が台頭―
29日の日経平均株価は前週末に比べ762円安の2万7878円と急落した。先週末26日の米ジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長のタカ派発言が警戒され、同日のNYダウは1000ドル超の下落。これを受けた週明けの東京市場も大幅安となった。果たして、今回のパウエルFRB議長の発言と9月相場の行方をどう見ればいいのか。SBI証券投資情報部長の鈴木英之氏に聞いた。
●「楽観論の修正局面、東京市場は相対的な強さ発揮も」
鈴木英之氏(SBI証券 投資情報部長)
26日のNYダウの急落は、パウエルFRB議長のジャクソンホール会議での発言がタカ派的だったと受け止められたことが背景にある。ただ、パウエル議長の発言内容に対しての違和感はない。NYダウは6月安値から8月高値まで値を戻したが、この間の予想1株当たり利益(EPS)は横ばいでファンダメンタルズに変化はなかった。7月の消費者物価指数(CPI)の伸び率が低下したことを受け、市場は一気に先行きの金利低下を織り込む金融相場の様相も示し始めていた。しかし、この動きは楽観論が先行した感は強い。FRBにとって足もとの株価動向が、今後の金融政策の支障となることを危惧したのが、今回のパウエル議長の発言だったと思う。
一方、今後の東京市場の展開をみるうえでは、経済のファンダメンタルズは米国に比べて日本の方がましな状況にあることは見逃せない。新型コロナウイルスに対する規制緩和は欧米に比べて遅れたが、足もとでは進行しており、今後の景気回復に向けた伸びしろは大きい状態だ。また、業績も堅調で日経平均採用銘柄の予想EPSは過去最高水準にある。また、国内では政策も動き出している。岸田政権は資産所得倍増プランに絡み「少額投資非課税制度(NISA)」の拡充の動きをみせている。これは市場に新たな資金を流入させることにつながり、海外投資家も好感するだろう。
こうしたなか、9月相場の日経平均株価の下値は2万7500円、上値は3万円前後を見込んでいる。日経平均株価の2万8000円割れの水準は安値圏に近いと思う。個別銘柄では、旅行やリベンジ消費に絡み鉄道関連の阪急阪神ホールディングス <9042> [東証P]や東武鉄道 <9001> [東証P]、小田急電鉄 <9007> [東証P]、それにリゾートトラスト <4681> [東証P]など。また、エネルギー政策絡みで日揮ホールディングス <1963> [東証P]や三菱重工業 <7011> [東証P]など。更に、今期好業績が見込める三菱自動車工業 <7211> [東証P]などに投資妙味がありそうだ。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(すずき・ひでゆき)
早稲田大学卒。リテール営業、調査部、株式部等を経て、SBI証券投資情報部長に。モーニングスター株式会社(投資調査部ゼネラル・マネジャー)へ転籍を経て現職。ラジオ日経、ストックボイス等で相場解説を行っている。
株探ニュース