明日の株式相場に向けて=裏テーマは「コロナ・リターンズ」
きょう(26日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比181円高の2万7431円と続伸。株式市場は引き続き買い戻し優勢の地合いが続いている。日経平均の戻り足もマドを開けて大陽線を立てるような急上昇ではなく、押し目を形成しながらもジリジリと下値を切り上げる展開で、こうした水かさが徐々に増すような株高はトレンドとして長続きしやすい傾向がある。今晩の米国株市場は安そうだが、米中間選挙に向けての株高アノマリーも意識されるなか、もうしばらくの間は強気対処で報われる局面が続きそうだ。
現状は半信半疑の玉虫色の強気相場といってよい。この全体相場の縮図となっているのがソフトバンクグループ<9984>だ。自社株買い終了を発表した後に上げ足を強め、年初来高値を更新するという“売り方泣かせ”の展開である。実際、同社株の信用取組は信用買い残の整理が進む一方で売り残が増加し、日証金では大幅に売り長状態で逆日歩がついている。日経平均寄与度の高い銘柄として知られるが、需給構造も符合する部分がある。
東京市場は強気優勢の地合いながら難しい面もあり、例えば個別銘柄の物色の方向性はカメレオンのように変化している。ちょっと目を離すと資金の流れが今までとは異なる波紋を描いているケースも見受けられ、これに戸惑う投資家も少なくないのではないか。今は循環物色の時間帯で底上げ相場ではよく生じる現象ではあるが、テーマ買いという観点で銘柄を追うと、投資資金にそこまで粘着性がなく拍子抜けするケースも多い。
海外では、異例の3期目入りとなった習近平総書記が新指導部の人選に際し、あえて露骨に側近で固め、強権を誇示したことが世界的に耳目を集めた。東京市場でもゼロコロナ政策も当面は緩むことはないとの見方が広がり、早晩期待されていた“爆買い”の原動力である中国からの訪日客が見込みにくくなったことから、インバウンド関連の物色人気が一巡した。それと入れ替わりで米株市場に右に倣えで半導体関連への資金シフトが起こっている。
もっとも、東京市場における半導体 関連のツートップ銘柄、レーザーテック<6920>と東京エレクトロン<8035>は目先的にはやや買い疲れ感も垣間見られ、上値が重くなっている。半導体関連株は主力どころから中小型株へと投資マネーの視点が移りやすいタイミングだ。半導体は売りのターゲットとなっている期間が長かっただけに休養は十分であり、中小型株でワンクールを終えた後は、再び主力どころに資金が還流するという波状的な上昇相場が見込める。利益を細かく確定しながら、全体を俯瞰して個別株で株価の凹んだところに資金を振り向けるというのが、物色の裾野が広い半導体関連のテーマ買いにおけるコツでもある。
一方、全体底上げ局面における循環物色という切り口では半導体セクターに資金が偏ることも考えにくい。今はあくまで空売りの反動によって相場に浮揚力が働いており、過剰流動性が収縮に向かうなか、順張りで資金を中長期で寝かせておいて大きく刈り取るような手法は報われにくい。他のセクターにも目を向けておきたいところだが、ひとつの候補としてはインバウンドの影の部分。つまり、オリンピック開催後に新型コロナウイルス感染者数が急増した経緯を考えれば、今回も冬場に向け同じようにコロナ感染者数増加が喧(かまびす)しく報じられる可能性はそれなりに高い。この場合、中軸となる銘柄は川本産業<3604>で、チャート的には既に助走を始めている。このほか底値圏に位置する銘柄ではニイタカ<4465>に意外性がある。防衛関連と重複するが重松製作所<7980>も直近にきて物色人気化しており、こちらは押し目買いを前提にマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、国内では目立ったイベントはないが、3カ月物国庫短期証券の入札のほか、2年物国債の入札が行われる。また、東証スタンダード市場にFCE Holdings<9564>が新規上場する。海外では7~9月期韓国GDP、1~9月期中国工業利益、ECB理事会の結果発表とラガルドECB総裁の記者会見、7~9月期米GDP速報値、9月の米耐久財受注などにマーケットの関心が高い。なお、国内主要企業の決算発表では、信越化学工業<4063>、武田薬品工業<4502>、富士通<6702>、ファナック<6954>、アドバンテスト<6857>などが予定されている。海外ではアップル<AAPL>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、インテル<INTC>、キャタピラー<CAT>、マクドナルド<MCD>などの決算が注目される。(銀)
最終更新日:2022年10月26日 18時22分