「円安」が急成長を後押し、「越境EC」関連株に吹くフォローの風 <株探トップ特集>

特集
2022年11月12日 19時30分

―日本製品輸出の巨大販路として期待、海外市場開拓へ新規参入の動きも活発化―

今春以降の急激な円安を背景に、越境EC の市場が拡大している。越境ECとは、インターネットを通じて売買を行う国際的な電子商取引のこと。もともと、成長基調にあったが、円安により一段と割安となった日本製品を海外にいながらにして購買できることから、その人気に拍車がかかっている。日本製品の巨大販路として今後の成長への期待が高まる越境EC市場を探った。

●円安で大バーゲンセール状態の越境EC

足もとで越境ECによる商品販売が急増している。急激な円安を背景に、海外消費者にとっていま日本製品は大バーゲンセールの状態にある。この円安の恩恵を享受するためには、まず日本へ買い出し旅行に出かけることが考えられるが、いまは旅行に行かなくともインターネット通販による越境ECを通じて、海外で割安な日本製品を購入することが可能だ。

その追い風を受けているのが、越境ECの購入サポート事業「Buyee」と「転送コム」で国内企業支援数において圧倒的なポジションを築いているBEENOS <3328> [東証P]だ。同社の22年9月期のグローバルコマースの流通総額は前の期比25.0%増の542億円だった。円安に加え北米や台湾でのキャンペーンなどの施策展開が功を奏した。また「Buyee」の導入も進み支援するECサイト数は3000件を突破した。23年9月期の連結営業利益は前期比14倍の45億円とインキュベーション事業の減損損失で大幅減益となった前期から急回復し、3期ぶりに最高益を更新する見込みだ。

また、企業の越境EC支援の動きも広がっている。伊藤忠商事 <8001> [東証P]は台湾EC大手の網路家庭国際資訊(PCホーム・オンライン)のグループ会社などと組み、日本企業が展開するECサイトから直接、台湾の消費者が商品を購入できる仕組みを構築するなどのサービスを開始、自社サイトがない企業に対しては立ち上げも支援していく。

●中国向けの需要動向にも注目

経済産業省によると越境ECの主要相手国は中国と米国が2強で、2021年の中国消費者による購入額は前年比9.7%増の2兆1382億円、米国は同25.7%増の1兆2224億円とともに伸長した。両国をあわせた金額は、コロナ禍前19年の年間インバウンド消費額4兆8000億円の約7割に相当するまでに成長した。越境EC市場は国内EC市場以上の伸び率で成長するとみられており、22年は一段と拡大することが確実視されている。

こうしたなか、中国で「独身の日」と呼ばれる11日までに開催されるEコマース各社の毎年恒例ビッグセールイベントが注目されている。昨年は中国EC最大手アリババ集団<BABA>が行った「2021天猫ダブルイレブン・ショッピングフェスティバル」の流通総額(GMV)は、5403億元と過去最高を更新した。今年はアリババがGMVの非公表を決めたことが波紋を呼んでいる。中国はゼロコロナ政策のもと厳しい行動制限が続き、個人消費は停滞している。とはいえ、中国での日本製品に対する人気は依然として高く、アパレル大手の三陽商会 <8011> [東証P]や美容関連商品のヤーマン <6630> [東証P]、化粧品の資生堂 <4911> [東証P]、ファンケル <4921> [東証P]、生理用品や紙オムツなどを手掛けるユニ・チャーム <8113> [東証P]などへ越境EC絡みの需要が期待される。

●卸ECのラクーンHDなどに注目

個別銘柄では、まず前出の越境EC最大手のBEENOSが注目される。また、ラクーンホールディングス <3031> [東証P]はアパレル・雑貨などの中小メーカー・問屋と、小売店などをつなぐ、企業間EC「スーパーデリバリー」の運営が主な事業。8月31日に発表した23年4月期第1四半期(5-7月)のEC事業国内流通額は前年同期比14.1%増と伸長。海外流通額も中国ロックダウンの影響があったものの同12.2%増と2ケタ成長となった。卸売関連ではこのほか、越境EC事業者向けに日用雑貨・化粧品などを手掛けるあらた <2733> [東証P]などがある。

●マーケティング支援のDガレージ、アドウェイズなど

デジタルガレージ <4819> [東証P]は海外企業との提携による越境ECモール開発を通じて、国内サプライヤーが越境ECに参入する際に、海外消費者へのリーチ獲得、多言語翻訳対応、海外配送などの課題の解決を支援している。アドウェイズ <2489> [東証P]のグループ会社楽一番はDガレージが提供する越境ECプラットフォームにおいて、商品の海外配送・通関サポート業務と、購入からアフターフォローまでのカスタマーサポート全般を支援する。また、トランス・コスモス <9715> [東証P]は、新しい販売チャネルとして注目を集めているライブコマースのソリューション「Bambuser(バンブーザー)」を提供するほか、北米・中国・アセアン地域など対象市場の文化や特性に合わせたグローバルECのワンストップサービスも展開している。

更に、国内で安く仕入れた中古品やブランド品 の中国向け越境ECも好調だ。関係者によると「商品が入荷次第売れていく状態がしばらく続いている」といい、「日本からの商品であればホンモノに違いない」という信頼のもと、中古ブランド品も外国人に人気のようだ。この分野ではトレジャー・ファクトリー <3093> [東証P]や、シュッピン <3179> [東証P]、大黒屋ホールディングス <6993> [東証S]などの銘柄が挙げられる。

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