【杉村富生の短期相場観測】 ─物色の中核は半導体関連セクター!
「物色の中核は半導体関連セクター!」
●全般相場はやや高値波乱の様相だが……
10月以降、順調に上値を追ってきた世界の株式市場だが、ここにきてにわかに高値波乱の様相をみせている。急騰の反動に加え、FRB(米連邦準備制度理事会)高官の発言に振り回されているのは確かだろう。ちなみに、NYダウは10月13日の2万8660ドルを安値に、一気に2割弱の急騰劇を演じた。この調整は当然の動きと判断する。
それに、エネルギー関連セクターが「臨時増税」を背景に売り込まれているほか、米半導体大手のマイクロン・テクノロジー<MU>の減産発表をきっかけに、日米両市場ともに半導体株が利食い急ぎの展開となった。しかし、エヌビディア<NVDA>の値動きはしっかりだし、東京エレクトロン <8035> [東証P]は業績の下方修正後、急騰している。
マーケットは売りのタイミング、材料を探していたのではないか。FRB高官の発言は金利担当のウォラー理事が「利上げの道のりは長い、そして遠い」とタカ派だった半面、ブレイナード副議長は「間もなく利上げペース減速が適切」と言及するなど、混乱している。どちらを信用するのか。基本的には“上司”だろう。
アメリカの中間選挙は上院の過半数を与党(民主党)が確保したものの、下院は共和党が多数派を奪回し、ねじれ議会となった。これによって、2023年招集の新議会ではバイデン政権が課題として積み残している歳出拡大、増税はほぼ困難だろう。むしろ、予算審議、債務上限引き上げ問題がクローズアップされる可能性がある。
ちなみに、大統領(与党)、上下院(野党)のケース(分割政府)では政治の混乱は逆に少ない。与党は政策遂行の遅れ(停滞)を野党に押しつけることができる。しかし、上院(与党)、下院(野党)の場合、過去には「財政政策不確実性指数」が急騰している。したがって、新議会が始まる来年1~2月は“要警戒”となろう。
●ティアンドエス、テセックなどに妙味!
いずれにせよ、個別物色機運は極めて旺盛だ。この局面は月並みな表現だが、森を見ず、木を見よ、の投資戦術が求められる。すなわち、各論(銘柄)勝負である。テーマ的にはやはり、好業績の 半導体関連は外せない。SOX(半導体株)指数は底打ち、反騰態勢を鮮明にしている。先日、マイクロン・テクノロジーの広島工場の最先端ラインが稼働した。
半導体受託製造最大手の台湾積体電路製造(TSMC)<TSM>は1.2兆円を投じ、熊本工場を建設中だ。このプロジェクトにはソニーグループ <6758> [東証P]、デンソー <6902> [東証P]が参加している。さらに、政府の支援を受けたスーパーコンピューター、人工知能(AI)などに使う次世代半導体の国産化計画(日本企業8社が出資)が始動している。
この計画の中核企業はソニーG、デンソー、NEC <6701> [東証P]、キオクシアホールディングスなどだ。小物では、ティアンドエス <4055> [東証G]は生産現場(特に、半導体工場に強み)のシステム管理をメーンとする。主力ユーザーはキオクシアホールディングス、NECだ。今後、思惑を呼ぶことになろう。
アバールデータ <6918> [東証S]の2023年3月期の1株利益は663.8円(前期は243.2円)と激増し、配当は234円(同83円)とする。 半導体製造装置向けの制御機器、車載用の画像処理モジュールが好調という。大株主にレーザーテック <6920> [東証P]がいる。これも思惑を呼んでいる。
岡本工作機械製作所 <6125> [東証S]は本業の平面研削盤(国内トップ)のほか、ウェハー加工用のポリッシュ装置、ラップ盤が絶好調だ。現在、3年分の受注残を抱えているという。いまや、売上高3割の半導体事業が利益の7割近くを稼ぐ構図になっている。2023年3月期の1株利益は696円の予想だ。配当は20円増の160円とする。
さらに、テセック <6337> [東証S]は割安だ。IPOのソシオネクスト <6526> [東証P]、 パワー半導体製造装置の高田工業所 <1966> [東証S]も抜群に強い。パワー半導体は口径200ミリ→300ミリ、素材がSi(シリコン)→SiC(炭化ケイ素)に切り替わっている。高田工業所の業績はダブルの特需を享受できる状況にある。
2022年11月18日 記
株探ニュース