明日の株式相場に向けて=個別株の上昇エンジン再始動、攻めの勘所は
きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比385円安の2万6405円と急反落。東京市場は前日の後場に演じた急騰劇の余韻が残るなかで、きょうの値動きが注目されたが、NYダウが直近2営業日で1000ドル安という派手な下げをみせたこともあり、先物主導で反動安に見舞われた。個別株については、日銀の金融政策決定会合を通過してとりあえず戦略が立てやすくなったということはいえるが、全体指数のボラティリティが高い時はなかなか手を出しにくいのが人情だ。
ただ、きょうはそうしたなかもテーマ買いの動きが顕著だった。全体相場は荒れ模様だが、ビッグイベントの結果を見極めて、改めてエンジンを始動させている銘柄も少なくない。例えば、前日引け後に発表された12月の訪日外客数が11月と比較して1.5倍に急拡大したことが分かり、インバウンド 関連銘柄に動意が相次いだ。HANATOUR JAPAN<6561>やアドベンチャー<6030>といった中小型株から、オリエンタルランド<4661>や高島屋<8233>をはじめとする百貨店株に至るまで幅広く買いが広がった。また、JPホールディングス<2749>やテノ.ホールディングス<7037>をはじめ子育て関連株も国策の追い風が意識されるなかで、値を飛ばす銘柄が相次いでいる。目先インバウンド関連では昨年秋口にも取り上げた銘柄で、まんだらけ<2652>やツナググループ・ホールディングス<6551>をマーク。まんだらけはアニメ原画やフィギュアなどで海外特需が期待されるほか、他社と一線を画す商品鑑定力が武器となる。一方、ツナグGHDは人手不足が際立つなか、足もとでアルバイトの時給が高騰しているという話も聞かれ、追い風が強い。
もっとも2月に入ると企業の決算発表ラッシュとなり、毎度のことながらこれが誠に厄介なハードルとなる。マクロからミクロに視点が移り、日銀プレーの次は米国も含めて決算プレーの地合いが待っている。これに翻弄されないためには、長期保有を決め込んでいるものは別として決算跨(また)ぎの銘柄には触れないというのが転ばぬ先の杖となる。
そのなか、この時期は“3月期決算銘柄”をあえて外して、既に決算を発表したもので好内容だった銘柄に着目しておくのも一つの手である。四半期ごとの決算発表は株価にとってある意味ノイズなので、時間軸的にこの影響が薄まったタイミングで見直すと、良い銘柄を良いタイミングで拾いやすくなる。自動車向けが主力の樹脂製部品メーカーである三光合成<7888>は5月期決算企業だが、22年6~11月期は営業利益が前年同期比倍増の16億4400万円と急拡大した。発表翌日に株価は急騰したが、その後は目先筋の利食いで水準を切り下げ買いやすくなっている。400円台と値ごろ感があるうえPER、PBRともに超割安といってよく、25日移動平均線をメドに押し目買いで報われそうだ。
また、フラッシュメモリーのリーディングカンパニーであるキオクシア向けで大型案件を確保するティアンドエス<4055>は11月期決算。同社も業績面で好内容が光り、前期営業利益は5割増益を達成。23年11月期も2ケタ成長が見込まれている。台湾のTSMC<TSM>による日本での第2工場建設の動きは同社にとっても思惑材料となる。
更に、8月期決算のセラク<6199>はITインフラ構築・保守のほか、システムのカスタム開発やIT人材派遣事業を展開するが、第1四半期にあたる22年9~11月の営業利益は前年同期比約2.5倍と急拡大した。決算発表後はマドを開けストップ高に買われた後に上げ幅を縮小したが、通期増額修正期待を背景に断続的に買いが流入。その後も力強い足をみせており、大勢二段上げの可能性もあり得る。2月決算期企業ではペットフード大手のエコートレーディング<7427>が全体波乱相場をものともしない上げ足を披露、新高値圏で5連続陽線を形成中だ。23年2月期営業利益は従来予想から大幅増額し前期比7割増の7億9000万円と12年ぶりの高水準を見込む。増配にもかかわらず、PBRは会社解散価値の半分以下で一段の上値余地を暗示している。
あすのスケジュールでは、22年12月の全国消費者物価指数(CPI)が朝方取引開始前に発表される。午後取引時間中には12月の食品スーパー売上高、12月の主要コンビニエンスストア売上高などが開示される。このほか3カ月物国庫短期証券の入札も予定される。海外では、1月の中国最優遇貸出金利、12月の英小売売上高、12月の米中古住宅販売件数などにマーケットの関心が高い。なお、台湾市場とベトナム市場は休場となる。(銀)