「医療ビッグデータ」は宝の山、急成長する利活用ビジネスで羽ばたく銘柄群 <株探トップ特集>

特集
2023年4月13日 19時30分

―データの蓄積で新市場創出の可能性も、裾野広がり関連企業の商機も拡大―

健康診断や通院記録などに関する個人の医療情報を収集し、製薬会社の新薬開発などに役立てる「医療ビッグデータ 」ビジネスが広がっている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、MR(医薬情報担当者)の医療機関への訪問が制限されたことがきっかけとなり、データ活用の機運が高まったことが背景にある。

政府が昨年10月に新設した「医療DX推進本部」でも、「全国医療情報プラットフォームの創設」「 電子カルテ情報の標準化」「診療報酬改定DX」の取り組み強化が盛り込まれており、医療ビッグデータを集約したプラットフォームの構築が求められている。医療ビッグデータはその性質上、データが蓄積されればされるほど幅広くサービスを提案できるため、データの蓄積により新しい市場が創出される可能性も高い。それに伴い市場規模も拡大が見込まれ、関連銘柄のビジネスチャンスも拡大しよう。

●医療ビッグデータとは

医療ビッグデータとは、健康保険組合の保険者データをはじめ、電子カルテや調剤レセプトデータなどの健康・医療・介護領域に関するさまざまなデータのこと。日本の医療においては、高齢化や医療技術の進歩による医療費の増大や生活習慣病の増加、医療の地域格差、労働力不足などさまざまな課題があり、こうした課題を解決するために医療DXの導入が進められているが、その一環として医療ビッグデータの利活用が求められている。

医療ビッグデータの利活用は欧米がリードする形で世界中で進められており、米国の市場調査会社によると世界の市場規模は2022年に368億ドルに達し、当面2ケタペースで拡大すると予測している。

●国収集の医療データの利活用も

日本においては、医療ビッグデータの分析サービスは2000年代前半から国内での提供が開始されている。また、国が収集しているレセプト情報・特定健診等情報データベースの「ナショナルデータベース」(NDB)や、介護レセプトをベースにした「介護保険総合データベース」などについても、以前は国、自治体、大学、研究開発独立行政法人などの公的研究機関に限って利用が認められていたが、19年の健康保険法などの改正により、民間事業者などへの第三者提供に関する規制が整備され、20年10月から各データベースの連結解析が可能となった。

これにより、国が収集するこれらのDBについても、製薬会社が新薬開発などのために利用できるようになり、今後の市場拡大に一役買いそうだ。

●医療ビッグデータ分析サービスに注目

ただ、NDBなどのデータは標準化されていなかったり、電子カルテなどの医療データも、情報のフォーマットが統一されていなかったりといった問題がある。データを利活用するためには、データを整える必要があり、そこで存在感を増しているのが、医療ビッグデータ分析サービス企業だ。

医療ビッグデータ分析サービス企業は、データを収集し、データを切り売りするだけでなく、データに基づいた解析や分析、更にコンサルティングなどを行う企業。提供したデータは、製薬企業のマーケティングや、生損保企業の保険商品の企画立案などに主に利用されているほか、研究機関などでも活用されている。更に、医療機器企業やビューティケア企業などでの活用が進めば、市場規模は一気に拡大しそうだ。

JMDC <4483> [東証P]は、医療ビッグデータの利活用サービスが主な事業。創業当初から健康保険組合の保険者データに着目し、22年9月末時点で同分野では日本最大の1159万人の健保保険者データベース(DB)を構築している。これまでは匿名加工したDBの提供が中心だったが、最近ではDBを活用したソリューションやコンサルティングなどの提供に注力することで業績は好調に推移しており、23年3月期第3四半期累計連結営業利益は40億2800万円(前年同期比18.3%増)と2ケタ増益となった。昨年7月にはリアルワールドデータを子会社化したことで、電子カルテデータのDBでも大手となっており、ヘルスビッグデータ事業の更なる成長が期待されている。

メディカル・データ・ビジョン <3902> [東証P]は、大規模病院を中心に経営支援システムを提供することなどで信頼関係を構築し、23年3月末時点で4322万人の診療DBを構築している。昨年5月にはディー・エヌ・エー <2432> [東証P]と業務提携しており、ディーエヌエグループのデータホライゾン <3628> [東証G]やDeSCヘルスケアのDBと連携することでDB基盤を拡充し、データ利活用事業の更なる拡大を目指す。なお、23年12月期連結営業利益は18億円(前期比2.4%増)を見込む。

●ケアネットやエムスリーも本格参入

ケアネット <2150> [東証G]は、昨年1月に新会社ヘルスケアコンサルティングを設立し、医療ビッグデータ分析事業に本格的に参入した。さまざまな医療ビッグデータを分析し、戦略的なエビデンスを創出することを目的としており、ケアネットが有する約20万人の医師会員からの調査協力も得て、分析結果に対する定性的な評価を加味することができることなども特徴という。

エムスリー <2413> [東証P]は、医師向けの情報提供サービス最大手だが、医療ビッグデータビジネスへ本格的に取り組み始めた。同社はクラウド型電子カルテ「デジカル」やスマートフォンで診療予約や問診票の記入、決済までできる「デジスマ診療」を提供しているが、ここで把握した医療データを分析し、製薬企業などに提供する医療データ事業を展開している。23年3月期第3四半期累計決算では、同事業の売上高は前年同期比2.3倍に拡大しており、更なる事業拡大を狙い次の柱にする方針だ。

日本システム技術 <4323> [東証P]は、医療情報データの自動点検システム「JMICS」やデータ利活用サービス「REZULT」などを展開している。23年3月期第3四半期累計決算で、医療ビッグデータ事業の売上高は前年同期に収益性の高い分析サービスの売り上げ計上が集中した反動があり、11億8500万円(前年同期比4.2%増)にとどまったが、受注は堅調に推移しているという。

凸版印刷 <7911> [東証P]は、昨年4月、医療機関から収集した電子カルテデータを基にした診断患者数や処方患者の数・性別・年代などの情報を直感的な操作で分析できるツール「DATuM IDEA(デイタムイデア)」を開発したと発表した。同社は19年11月に医療ビッグデータ活用サービスを展開するICI(東京都文京区)と資本・業務提携(今年1月に子会社化)しており、これを医療データ収集などに生かす方針で、今期から本格的にサービスを開始する。

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