明日の株式相場に向けて=AI連動で甦る「半導体関連」の勘所
きょう(25日)の東京株式市場は日経平均株価が前営業日比118円高の3万801円と3日ぶりに反発。前日の欧米株全面安の流れを考えると、きょうの上げは異彩を放つ。同じ時間帯で行われたアジア株市場も台湾を除きほぼ全面安に近い状態だった。もっとも、値下がり銘柄数は、値上がり数を300近く上回ったほか、TOPIXは当然のようにマイナス圏で着地。タネを明かせばリスクオフ相場のなかで“半導体祭り”が行われた結果である。
日経平均は後半伸び悩んだが、半導体関連株の躍動ぶりに目を奪われる。前日の米国株市場では地合い悪のなか、半導体銘柄で構成されるフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)も1.7%安と下落。マドを開けて5日移動平均線を下放れた。この1.7%安というのは個別株では浅い押し目といえるが、全体指数でみた場合は結構な売りモードで、例えば前日のNYダウに引き直すと1.7%で562ドル安となる。このように欧米株の全面安に加え、SOX指数が大幅に下値を試す展開でバトンを渡された東京市場だったが、半導体関連は無類の強さを発揮し日経平均を支える格好となった。
なぜか。それは前日の米国株取引終了後に発表された画像処理半導体大手エヌビディア<NVDA>の23年2~4月期決算で、利益が市場予想を上回ったことが起点となった。同社はAI向け半導体で圧倒的競争力を有し、グローバルベースで80%前後のシェアを握るといわれている。今の半導体市況は総論として冬のさなかにあるが、AI爆需が局地的に常夏をもたらしており、その恩恵の象徴がエヌビディアだ。そして驚かされるのは、この好決算発表を受けて、同社株は高値警戒感が意識されるポジションにありながら、時間外取引で一時25%超に買われたことだ。GAFAMと同列で語られても違和感がない時価総額を考えると、25%高は凄まじい資産効果といえる。日本のトヨタ自動車<7203>が時価総額1兆5000億円を吹き飛ばしたとか、取り戻したとかいうレベルではない。
この熱量が海を渡って日本にも届いたのか、きょうはエヌビディア効果が東京市場を覆いつくした。主役を演じたのはメモリーテスター世界首位のアドバンテスト<6857>だ。マドを開けて一時2810円高と急騰し上場来高値を大幅に更新、日経平均を押し上げた。日経平均寄与度ではついにソフトバンクグループ<9984>を抜いた。アドテストは20日配信の株探トップ特集で選出された10銘柄の筆頭で紹介されている。エヌビディアと同様にアドテストは生成AI 関連の案件で追い風が強いとみられている。「生成AIではスマホやパソコンなどの端末にクラウド経由でテクノロジーを提供する。その際にデータセンターをはじめとした膨大なインフラ特需が生まれ、ハイスペックな半導体と合わせ最先端テスターのニーズ拡大に拍車がかかる」(ネット証券アナリスト)という見方だ。
アドテストの急騰劇は、当然ながら半導体セクターの他の銘柄にも燃え移った。同社株とツートップで上場来高値圏を走っているのが半導体切断・研磨装置世界トップのディスコ<6146>だ。引けは伸び悩んだものの一時は未踏の2万円台乗せを達成した。このほか、製造装置では業界最大手の東京エレクトロン<8035>やSCREENホールディングス<7735>も買われ、ICパッケージのイビデン<4062>、シリコンウエハーのSUMCO<3436>、車載マイコンのルネサスエレクトロニクス<6723>、SoCの開発・販売を手掛けるソシオネクスト<6526>といった銘柄に物色の矛先が向かった。半導体セクターは裾野が広いが、きょうは中小型株を合わせ8割方が“赤札銘柄”である。
半導体は総花的に買われてはいるが、まだ序の口といえる。特に週足チャートで見た場合、中小型株のリターンリバーサルの伸びしろに魅力を感じる。信越ポリマー<7970>、ジェイテックコーポレーション<3446>、QDレーザ<6613>、インスペック<6656>、AKIBAホールディングス<6840>といった銘柄に着目しておきたい。
あすのスケジュールでは、5月の東京都区部消費者物価指数(CPI)、4月の企業向けサービス価格指数がいずれも朝方取引開始前に開示されるほか、午後取引時間中には3月の景気動向指数改定値が発表される。また、3カ月物国庫短期証券の入札も行われる。海外では4月の豪小売売上高、4月の英小売売上高のほか、米国でも重要指標の発表が相次ぐ。4月の米個人所得・個人消費支出(PCEデフレータ)への関心が高く、4月の米耐久財受注額、5月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)なども注目となる。(銀)