明日の株式相場に向けて=熱狂なき「半導体・AI」バブル相場

市況
2023年6月13日 17時00分

きょう(13日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比584円高の3万3018円と大幅続伸。前日の欧米株市場が総じて堅調な値動きを示していたとはいえ、日経平均がきょうこのタイミングで3万3000円台に乗せてくるというのは驚くよりない。市場関係者も週明け時点では「今週は日米欧の中銀が相次いで政策金利を発表する中銀ウィークであると同時に、(日本時間今晩の)5月の米CPI発表を控え、大きく下げないまでも神経質な地合いで上値を積極的に買い進む展開とはなりにくい」(中堅証券ストラテジスト)という見方が示されていた。ところが、今はそういう常識的な地合いではないようだ。

相場は売りも買いも行き過ぎるのが常だが、どこかで反転して逆方向にベクトルが働く。株価形成はミクロ(個別株)もマクロ(全体指数)も同様で、長い目で見ればファンダメンタルズに見合う水準に落ち着いていくが、短期的には買い人気もしくは売り人気によって合理から離れ、それが一巡すると合理にサヤ寄せするという繰り返しである。今の日経平均はおそらく合理から離れていくプロセスにあるものの、果たして何合目まで来ているのかが皆目分からない。感覚的に買われ過ぎているからと見切り発車で空売りを載せていくと、根こそぎ担がれるような強力な上げ潮が発生している状態にある。

今の日経平均の水準で1000円高もしくは1000円安があっても、パーセンテージでは3%強に過ぎない。市場筋は「目から入ってきた情報で判断する人間の感覚と、AIなどの投資行動を司るデジタルなモノサシとは大分開きがある」(ネット証券アナリスト)と指摘するが、急騰や急落の線引きは元来曖昧なものであり、冒頭で記した“驚き”という感情の戸惑い自体がAIに優位性を与える人間の弱みとなっている。きょうの日経平均の買われ方は、典型的なヘッジファンド(CTAファンド)による先物を絡めたアルゴリズム売買による影響が大きいが、ここで相場観を働かせたつもりで売りに回ると、無機質なプログラム売買に凌駕されてしまう。これまでに何度も繰り返されてきた光景である。

とはいえ、ここで買いプログラムのスイッチが入ったということは、その大元(おおもと)で5月の米CPIもFOMCも大したことはないと高を括っていることを意味する。CPIは総合指数の事前コンセンサスが前年同月比4.0%上昇であり、多少のブレはあっても4月の4.9%上昇からは鈍化することはほぼ確実視される。原油価格の下落が顕著なためインフレに対する警戒感が和らぐ方向性に変化はない。また、エネルギーと食品を除くコア指数の方は5.3%上昇がコンセンサスで、4月が5.5%上昇であったからこれも鈍化が想定される。ただし、総合指数と比べて4月実績との差が小さく、売り方の立場で波乱を期待するなら、このコア指数の上振れに懸けるところだ。

米CPIコアに想定外の狂いが生じなければ、半ば自動的に14日のFOMCは利上げ見送りとなり、「仮にドットチャートで7月利上げ再開の可能性が意識されたとしても、打ち止めが近いという認識で相場にはマイナスに作用しない」(前出のアナリスト)という読みが働いている。なお、ECB理事会の0.25%利上げと日銀の現状維持は既定路線として相場にほぼ織り込まれているとみてよさそうだ。ほかの選択肢が採られる公算は小さいだけに、この2つのイベントについては波乱要素に乏しい。

きょうの東京市場は、売買代金1位のレーザーテック<6920>と売買代金2位のソフトバンクグループ<9984>、この2銘柄の上昇がそのまま今の相場テーマを象徴するものとなった。つまり、「半導体AI 」である。日経平均は600円近く上昇して取引を終えたが、プライム市場の値上がり銘柄数は1000あまりで全体の6割に満たなかった。かつてのITバブルとは若干色は異なるが、買われている銘柄は意外に限られており、局地的なバブル相場の様相を呈している。一つ言えることは、そこに個人投資家の熱狂はない。ネット証券の信用評価損益率でも、3市場全体でマイナス5.4%、グロース市場のみでマイナス15.6%が直近データであり、天井圏にはまだかなり距離があることを示唆している。

あすのスケジュールでは、前場取引時間中にトヨタ自動車<7203>の株主総会が行われる。またIPOが1社予定されており、東証グロース市場にGlobee<5575>が新規上場する。海外では4月のユーロ圏鉱工業生産指数、5月の米卸売物価指数(PPI)のほか、FOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見が予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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