明日の株式相場に向けて=株高の突風となるか解散総選挙

市況
2023年6月14日 17時00分

きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比483円高の3万3502円と大幅高で4連騰。日経平均は一時650円近い上昇で3万3600円台まで駆け上がる場面があった。取引終盤は上げ幅を縮小したものの、500円高近い上昇を維持して着地。絡みつくものすべてを弾き飛ばす勢いで、バブル崩壊後の最高値圏をひた走っている。きょうは半導体関連の値がさ株が総じて上げ一服となったことで、全体指数も小休止となりそうなところだが、今は規格外の相場である。グロース系の銘柄はソフトバンクグループ<9984>を除いて売りに押されたものの、今度は自動車や鉄鋼、非鉄、商社といったバリュー株が一斉高を演じ、日経平均を押し上げた。14日のFOMCでの利上げ見送りが確実視される状況になったとはいえ、その程度でこうはならない。この過激な上昇パフォーマンスは、解散風がリアリティーを伴って永田町を吹き抜けたことによる。

岸田文雄首相の記者会見が前日夕方に行われ、マーケット関係者の耳目を集めた。少子化対策に関する内容を主眼としていたが、この記者会見における最大の関心事は、21日の通常国会の会期末を控え、衆院解散があるのかどうかということだ。16日に内閣不信任案提出の可能性が取り沙汰されるなか、仮に提出されれば岸田首相は即日解散を表明するとの見方が強まっている。

少し時計の針を戻すと、広島サミットを成功裏に終わらせ解散風がにわかに強まったが、直近では首相秘書官だった長男の“忘年会問題”やマイナンバーに絡むドタバタ、LGBT法案に対するネガティブな反応などで、風向きは皮肉にも向かい風に変わった。内閣支持率は6月に入ってから低下傾向を強めており、早期解散で楽勝というムードではなくなっている。

もっとも、ではこのタイミングで 選挙はやりにくいかというと必ずしもそうではない。市場では「(内閣支持率が下がっても)野党全般が弱過ぎることで、選挙をやれば勝敗ラインはクリアできる。むしろ、後ろにずれ込めば維新の会の候補者が揃ってくる分だけ不利になる」(ネット証券マーケットアナリスト)と指摘する。自民党内にも野党にも、当然ながらここで選挙になっては困るという向きは少なくないはずで、目に見えないそうしたパワーバランスの調整は難しいが、岸田首相にしてみれば来週21日の通常国会会期末までに伝家の宝刀を抜きたいというのが本音であるかもしれない。

前日夕方の記者会見で岸田首相は解散を直接匂わすことはなかったが、「今国会の会期末にいろいろな動きがあり、情勢をよく見極めたい」と含みを残した。これを聞いた市場筋からは「コメント自体は“やる気満々”と捉えられ、鉄壁ともいえる総選挙の株高アノマリーを考えれば売り方は慌てて買い戻すよりない」(中堅証券ストラテジスト)という意見が聞かれた。きょうの日経平均の問答無用の上昇劇はバブル的な要素が強いことは否定し得ないが、文字通り「株は需給」を地で行く踏み上げ相場の典型となった。

ちなみに今週末16日に解散を表明した場合、総選挙(投票日)は7月9日の日曜日か7月15~17日の3連休中の可能性が高そうだ。維新の会などの準備不十分を狙うのであれば早い方がよいという見方もある。一方、7月の3連休を絡めるとレジャー需要にとられて投票率が下がるという観測があるが、投票率が下がった方が連立与党には有利に働くという見方もあり、これは選挙戦略上、何ともいえない。そして、前述した“総選挙の株高アノマリー”だが、解散日から投票日までの期間で見た場合、過去30年間をさかのぼって、総選挙は10回行われたが、勝率は100%。民主党から政権が移行し、アベノミクス相場のスタートとなった第2次安倍内閣発足時は、解散日から2012年12月16日の投票日まで1カ月間で株価は10%以上水準を切り上げている。

あすのスケジュールでは、4月の機械受注、5月の貿易統計、4月の第3次産業活動指数など。なお、16日までの日程で日銀の金融政策決定会合が開催される。海外では5月の豪雇用統計、5月の中国の新築住宅価格動向、5月の中国小売売上高・工業生産高・固定資産投資・不動産開発投資、4月のユーロ圏貿易収支などのほか、ECB理事会の結果発表とラガルドECB総裁の記者会見が注目される。また、5月の米小売売上高、5月の米輸出入物価指数、5月の米鉱工業生産指数・設備稼働率、6月のNY連銀製造業景況指数、6月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数、4月の米企業在庫などの発表が予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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