来週の相場で注目すべき3つのポイント:ソニーGなど国内決算、米CPI、米四半期入札

市況
2023年8月5日 18時00分

■株式相場見通し

予想レンジ:上限33000円-下限31000円

来週の東京株式市場は神経質な展開か。国内では企業決算の発表がピークを迎える。個別株物色が活発化することで、相場の下支えに期待したい。ただ、日米長期金利の動向が気がかりだ。4日に発表された米7月雇用統計は非農業部門雇用者数が下振れたとはいえ、ほぼ市場予想並みだった。一方、失業率は予想に反して低下し、平均時給は前月比および前年同月比でともに低下の予想に反して前月と同じ伸びにとどまった。3日に約9カ月ぶりの高水準にまで上昇した米10年債利回りは、米雇用統計の発表後は出尽くし感からいったん低下で反応したが、依然として4%を超えている。こうしたなか、来週は米国で10日に7月消費者物価指数(CPI)、11日に7月卸売物価指数(PPI)が発表される。

米7月CPIは総合および食品・エネルギーを除いたコア指数ともに前月比+0.2%と前回6月分と同じ伸びが予想されている。一方、前年同月比では総合が+3.3%と6月(+3.0%)から加速する見込みで、コア指数は前年同月比+4.8%と6月分と同じ伸びが予想されている。CPI総合の前年同月比は2022年6月の+9.1%をピークにその後は毎月鈍化が続いていた。ある程度は織り込み済みとはいえ、CPIコア指数が米連邦準備制度理事会(FRB)の目標値である2%を大幅に上回ったままであるなか、CPI総合の伸びが1年ぶりに加速に転じるとなると、インフレ高止まりが想起される。既に4%を超えている米10年債利回りの一段の上昇にもつながりかねない。

また、米7月PPIは総合および食品・エネルギーを除いたコア指数ともに前月比+0.2%と前回6月分(+0.1%)から加速する見込み。前年同月比ではコア指数は+2.4%と6月分と同じ伸びになる予想だが、総合は+0.7%と6月(+0.1%)から加速する見込みだ。

3日には、サウジアラビアが原油の自主減産を1カ月延長する方針を発表したほか、減産を一段と長期化あるいは規模を拡大させる可能性もあるとし、原油市況の高騰を招いた。足元は日米の長期金利の上昇が株式市場の警戒感を高めているタイミングでもある。コモディティ価格の上昇や予想を上回る米雇用関連指標、米財務省の中長期債の発行規模の引き上げなどを背景に金利の先高観が高まっているなか、CPIとPPIの発表後の金利動向には注意したい。

日本国内でも、長期金利の動向が警戒材料だ。今週は長期国債先物の下落傾向が続き、国内の新発10年物国債利回りは大きく上昇した。3日の午後には日本銀行が臨時の国債買い入れを実施したにもかかわらず、長期金利が低下したのは一時的ですぐに低下分を埋める動きとなっていた。海外投機筋から日銀を試すような国債売りが入っていると思われる。こうした中、米物価指標が上振れて米長期金利が一段と上昇した場合には、国内の長期金利の上昇が再開する可能性があろう。

国内では8日に6月毎月勤労統計調査が発表される。現金給与総額は前年同月比+3.0%と前回(+2.5%)から加速する見込み。一方、賃金の伸びは依然として物価上昇率に追いつかず、実質賃金総額は同-0.9%と15カ月連続でマイナスが予想されている。ただ、実質賃金総額は前回(-1.2%)から減少率がさらに縮小する見込みで、プラス転換に向けた改善トレンドが続いている。これら指標の上振れは本来、脱デフレ体質という構造的な変化を示唆するもので長期的にはポジティブな材料だが、短期的には日銀の追加政策修正への思惑を強めるきっかけとなり得る。

なお、7月東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI)は前年同月比+4.0%と41年3カ月ぶりの高水準を記録し、+3.7%への鈍化を想定していた市場予想に反して6月(+3.8%)から加速した。多くの市場参加者が7月の金融政策決定会合以降、日銀の年内の追加政策修正はないと予想しているなか、仮に政策修正観測が高まる場合には、国内長期金利の上昇ペースが速まる可能性がある。米国と合わせて日本の長期金利の動向に注意を払いたい。

■為替市場見通し

来週のドル・円は底堅い値動きか。直近で発表された米国の経済指標は強弱まちまちとなったが、景気後退入りの懸念は後退しており、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締め長期化への思惑からドル買いに振れやすい。日本銀行の金融政策をにらんだ円売りも見込まれる。

来週発表の経済指標では、7月の消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)の主要インフレ指標が注目される。コアCPIは6月実績を下回る可能性があるが、市場予想を上回った場合、FRBの金融引き締め方針を後押しし、金利高・ドル高の要因となりそうだ。

一方、日本銀行は先月開催の金融政策決定会合で長短金利操作(YCC)の柔軟化を決めたが、金融緩和策の一環としており、一部でリスク選好的なドル買い・円売りが観測されている。ただ、日本政府は円安けん制を強めるとみられ、為替介入への警戒感からドル買い・円売りは限定的とみられる。

■来週の注目スケジュール

8月7日(月):日・日銀金融政策決定会合における主な意見(7月27、28日分)、日・景気動向指数(6月)、日・決算発表:住友金属鉱山、レーザテク、東芝、JSR、東レ、大林組、東京海上H、大成建設、米・消費者信用残高(6月)、米・アトランタ連銀総裁が連邦準備制度理事会(FRB)のイベントで講演、米・ボウマンFRB理事がFRBイベントのパネルディスカッションに参加、など

8月8日(火):日・家計支出(6月)、日・毎月勤労統計(6月)、日・国際収支(経常収支)(6月)、日・景気ウォッチャー調査(7月)、日・決算発表:明治HD、大日本印刷、マツダ、ソフトバンクG、SUMCO、資生堂、キリンHD、ニコン、ヤマハ発、バンナムH、リコー、NTTデ、ニトリHD、シスメクス、ダイキン工、ダイフク、アシックス、MS&AD、中・貿易収支(7月)、米・フィラデルフィア連銀総裁が経済見通しについて講演、米・四半期入札(3年物)、米・決算発表:グレンコア、UPS、イーライリリー、リビアン・オートモーティブ、など

8月9日(水):日・工作機械受注(7月)、日・JRCが東証グロースに新規上場、日・決算発表:NTT、ブリヂストン、いすゞ自、サントリ食、ソニーG、ホンダ、アサヒGH、INPEX、SOMPO、GMOPG、浜松ホト、オリンパス、鹿島、富士フイルム、コーセー、テルモ、SMC、INPNEX、ロート製薬、中・消費者物価指数(7月)、米・四半期入札(10年物)、米・決算発表:ウォルト・ディズニー・カンパニー、など

8月10日(木):日・国内企業物価指数(7月)、日・決算発表:リクルトH、楽天G、三菱地所、住友不動産、日産化、東エレク、第一生命H、マツココ、T&DHD、日本ペイント、エネオス、コスモエネ、ホシザキ、米・消費者物価コア指数(7月)、米・財政収支(7月)、米・アトランタ連銀総裁が雇用を巡るイベントで歓迎のあいさつ、米・四半期入札(30年物) 、海外・決算発表:シーメンス、アリババグループ・ホールディング、など

8月11日(金):英・GDP速報値(4-6月)、米・生産者物価コア指数(7月)、米・ミシガン大学消費者信頼感指数速報(8月)、など

《YN》

提供:フィスコ

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

特集記事

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
米国株へ
株探プレミアムとは
PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.