明日の株式相場に向けて=ハイブリッド復権でEV関連にも新風
きょう(12日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比308円高の3万2776円と4日ぶりに反発。前日の米ハイテク株高と為替の円安方向への揺り戻しがリバウンドの足場となった。もっとも、買われたのは半導体関連などハイテク系グロースではない。バリュー株優位の地合いが続いているとはいえ、低PBRや高配当利回り銘柄であれば手当たり次第に買いということではなく、これはあくまで株価との兼ね合いである。例えば、9月末の配当取り狙いでインカムゲインの威力は株価上昇の原動力にもなっているが、既にそれを織り込んで高値圏に舞い上がっている銘柄については、権利落ち後の調整も厳しいものとなる。この場合つなぎ売りを活用して、株価変動リスクを追わず配当だけ獲得しようと考えても、配当調整金を払う側に回るためそうは問屋が卸さない。
中長期保有する魅力を感じている銘柄に対しては、権利落ち後の株価が下がったところ、理想を言えば下げ止まったところで買い戻すのがベスト。もちろん権利落ち後に下がらないこともあるが、それは事前に悪材料などで権利取り狙いの買いが入らなかった場合、もしくは追加の株主還元策が新たに発表されたようなケースであり比較的稀である。考え方としては、権利取りで得る配当利回りを明確に上回る値上がり益が見込める場合、権利を放棄して利益確定売りを優先する。
上昇トレンドを描いている銘柄には“慣性の法則”が働いて短期的には利ザヤを取りやすい。銘柄によってはこの時期に“配当権利取りプレー”と相まってその傾向がさらに強まる。しかし、一方で高値警戒感も常に潜在しており、ふとした拍子に大きく下値を試すような場面に遭遇する。直近の三菱重工業<7011>の急反落は米RTX<RTX>による航空機エンジン回収というネガティブ材料が絡んだが、これまでの上昇の反動による影響も当然ある。好悪材料が絡まない配当権利落ち後の銘柄も目を疑う下げをみせることがあるが、メカニズム的には三菱重と同じ売り仕掛けが入っているケースが多い。
高値圏を走る銘柄を対象とした鉄火場を避け、比較的値動きのおとなしい銘柄に目を向けるなら投資テーマとしては電気自動車(EV)周辺が引き続き面白い。自動車部品・部材関連に波状的に投資資金が流入しているが、それはEVオンリーではなく、自動車の盟主トヨタ自動車<7203>が圧倒的強みを持つハイブリッド車(HV)が世界的に復権ムードにあることも関係している。バイデン米政権が8月末に120億ドルのEV支援を発表したが、これにはHVも支援対象とした。また、欧州ではドイツのフォルクスワーゲンが、電池素材の調達難を想定してEV一辺倒ではなく、プラグインハイブリッド車(PHV)を見直す動きを鮮明に打ち出している。
EVシフトの流れに対応しながら、ガソリン車で培ったノウハウも武器となることで、自動車部品メーカーの成長に向けた伸びしろが大きくなった。しかも、低PBRが際立つ銘柄が多い。当欄では大豊工業<6470>、エフテック<7212>、ミクニ<7247>、愛三工業<7283>といった自動車部品株を継続的に追ってきたが、このなかで再び買い場を提供しているとみられるのが、一目均衡表の雲を上に抜くか否かのタイミングにある大豊工業とミクニだ。両社ともEV分野への布石は抜かりなく、ハイブリッドも含めた電動車対応で新たな商機を捉えそうだ。
また、EVの中核部品である車載電池も改めて物色テーマとして浮上しつつある。トヨタは全固体電池の量産化に向けて既にある程度メドをつけているもようで、2027年までに同電池搭載のEVを発売する計画を公にしている。EV用2次電池の開発は今後も自動車業界を挙げて漸次進められていくと思われるが、電池素材を手掛けるメーカーの活躍余地が再び浮き彫りとなりそうだ。経済産業省が蓄電池の安定確保に向け助成金を出す方針を示している。その対象に含まれる企業では、負極材を手掛ける東海カーボン<5301>、電解液添加物を製造する関東電化工業<4047>、湿式絶縁材の旭化成<3407>、高耐熱性封止剤のクレハ<4023>などがありマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、8月の企業物価指数、7~9月期法人企業景気予測調査など。海外では7月のユーロ圏鉱工業生産指数のほか、米国では8月の消費者物価指数(CPI)に関心が高い。また、8月の米財政収支も発表される。(銀)
最終更新日:2023年09月12日 18時20分