明日の株式相場に向けて=師走相場の戦略を考える
週明け27日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比177円安の3万3447円と3日ぶりに反落した。前週末の欧州株全面高を引き継いで米株市場でもNYダウは高かったのだが、踏み上げ相場の勢いは感じられなくなった。感謝祭翌日の短縮取引で買い気が盛り上がりにくい面はあったと思われるが、ナスダック総合株価指数は0.1%安。このわずかな下げでも何となく上値の重さが実感できる、そんな局面にある。東京市場も11月に入ってから前週末までの16営業日で日経平均が約2760円強の上昇(終値換算)をみせており、中長期スタンスはもちろんのこと、スイングトレードであってもここはいったん様子見が妥当なタイミングではある。
しかし、森より木を見る投資に徹するのであれば眼前に道は開ける。あすは11月の権利付き最終売買日で29日から実質師走相場入りとなる。来年になると日銀のマイナス金利解除の思惑がマーケットに圧迫感を与えそうでバリュー株復権もありそうだが、「掉尾の一振」を求めるのであれば、今はグロース株に焦点を合わせた方がよさそうだ。
個別株の物色意欲は失われていない。 半導体関連にやや買い疲れ感は見られるものの、ここまで来てしまえば、株価が思惑先行で“早合点の勇み足”というようなレッテルを貼られることはなく、小休止を入れながらも波状的に投資資金を引き寄せる公算が大きい。メモリー市況の本格回復が来年のいつ頃かという話ではなく、最悪期を通過した時点で既に号砲は鳴ったとみるのが株式市場だ。
半導体関連セクターでは、主力どころで物色人気に沸いている銘柄ではなく、物色の裾野(中小型株)の方に着目した方が、個人投資家の戦術としては有効性が高い。きょうはオキサイド<6521>が韓国の研究機関との光学デバイスにおける技術連携を発表したことを材料に一段と上げ足を強めたが、株価は動意後わずか2週間で56%の上昇をみせた。これが半導体周辺の中小型株特有のダイナミズムであり、バリュー株では滅多に見ることのできないパフォーマンス性を有している。PER80倍のオキサイドはやや特異な例にせよ、ひと頃の「バリュー一択」の地合いから変遷して、今はモメンタム重視の投資資金が東京市場に渦巻いていることを証明している。
半導体関連の中小型で新たにマークしておきたい銘柄としては、半導体商社で今月20日にマドを開けて急動意したものの大陰線で押し目を形成しているミタチ産業<3321>。5日移動平均線が追いついた1150円近辺は再び買い場となっている可能性がある。また、半導体製造装置向けバルブで高水準の受注を確保しているキッツ<6498>や、設備工事大手で半導体生産設備関連の商機を捉えている三機工業<1961>も面白い存在だ。更に中堅プラントメーカーで業務領域が広く、半導体関連分野では枚葉式ウエット処理装置や、次世代パワー半導体の切断工程で使われる超音波カッティング装置でハイスペック商品を提供する高田工業所<1966>。これらは半導体関連であっても、指標面で割安感が強いグロース・アット・バリューの範疇に入る。
また流行を追わず、半導体関連から敢えて目先を変えてみるのもひとつの考え方。例えば、この時期話題となりやすいのが来年1月からスタートする「新NISA」で、個人投資家のニューマネーを誘引するとの見方が強く、全体相場の流れを左右する可能性もある。アクティブETFなどが取り上げられるケースが多いが、もっと自主的に個別企業への投資を行いたい向きも少なくないはずだ。個別株であればやはり配当利回りの高い銘柄に視線が向かいやすい。配当利回りが5%を超える株でチャート妙味が感じられるプライム上場銘柄では、世紀東急工業<1898>、フージャースホールディングス<3284>、藤倉コンポジット<5121>、コスモエネルギーホールディングス<5021>などが有力。また、半導体関連の実力株で高配当利回りでも注目度の高い銘柄では伯東<7433>が挙げられる。
あすのスケジュールでは、40年物国債の入札が午前中に予定されているほか、日銀が午後取引時間中に「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」を開示する。また、この日は11月権利付き最終売買日となる。海外では10月の豪小売売上高が開示されるほか、米国では9月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、11月の消費者信頼感指数などにマーケットの関心が高い。(銀)
最終更新日:2023年11月27日 18時15分