明日の株式相場に向けて=半導体とAIが織りなす循環物色の輪

市況
2024年1月23日 17時00分

きょう(23日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比29円安の3万6517円と3日ぶり反落。日銀の金融政策決定会合後にやや荒れ模様の地合いとなった。タイミング的には押し目の欲しいところで、むしろ後場寄りに400円以上の上昇で3万7000円目前まで駆け上がった勢いが最後まで続けば、後々のクラッシュが警戒される。上昇一服とはいっても下げ幅はわずかで、後半値を消してなお強しという地合いだった。

注目された日銀の金融政策決定会合だが、昼ごろに大規模金融緩和の維持(マイナス金利解除見送り)が発表された。これについては99%織り込み済みだったといってよい。それでも開示直後は外国為替市場でドル・円相場がいったん円安方向に振れ、株式市場でも日経平均が後場寄りに上げ幅を広げ3万7000円大台に肉薄するリスクオン全開の場面もみられた。強い相場に理屈は無用と思いきや、結局は時間差で利益確定の売りが噴出しあれよという間に値を消したのだが、その後に売り急ぎの動きが顕在化することもなかった。

会合後に日銀が公表した展望リポートが思惑錯綜につながった面もある。リポートでは24年度の生鮮食品を除くコアCPIの見通しを前年度比プラス2.4%と前回予想から0.4%引き下げたが、「これがマイナス金利の解除時期を早めるようなインパクトはない」(生保系エコノミスト)という。一方、25年度のCPIについては1.8%と前回予想から0.1%引き上げた。展望リポートの内容をどう解釈するのか、マーケットにも気迷いムードが台頭し、日経平均は前日終値を挟んで右往左往する形となった。

ひとつ言えるのは、今回の会合に関係なく外国人投資家が日本株を実需で買い溜めようとしていることだ。「今はエンプティー状態(日本株を持っていない状態)で焦りもあるし、売りたいときには新NISAの買いが受け皿になるとみている」(中堅証券ストラテジスト)とする。きょうも日経平均が緩んだところで海外マネーが買い向かった形跡がある。「引け後の植田日銀総裁の会見内容を見極めるまではポジションは取りにくいが、最速で4月にマイナス金利解除の可能性が高まったとしても、その後も低金利環境が続く公算は大きい。日本株が世界で最も買いやすい環境に置かれていることに変わりはない」(同)という。

2012年末を起点とするアベノミクス相場の時代に外国人投資家は日本株を買い漁り、15年の年央には累計買い越し額が24兆円に達した。その後はピークアウトし、コロナ禍ではひたすら売り続け、今から1年前の昨年1月時点で9兆円の累計売り越しと様変わりしていた。この流れが変わったのが昨年春だ。ウォーレン・バフェット氏の来日が日本株見直しの号砲となり、東証の低PBR企業に対する経営改善要請と共鳴する形で外国人買いを呼び込んだ。今は累計売り越し額が数千億円程度まで縮小、いわば再びスタートラインに戻ってきたイメージである。だからこそ、スタートダッシュで買いポジションを急速に高める必要性を感じている可能性は高い。

個別株を見ると引き続き 半導体及び AI関連銘柄の循環物色が続いている。先駆した銘柄についてはいったん利益を確定しても、その回転が利いた資金が別の半導体・AI関連に流れ込む。同じテーマの中でぐるぐると資金が回っている印象だ。生成AI関連では最高値形成後、波乱含みの下げをみせたさくらインターネット<3778>が切り返し急。このさくらネットと連携するのがビッグデータ解析のユーザーローカル<3984>で、目先の押し目は拾い場となっている可能性がある。また、前週の当欄でも取り上げたエクサウィザーズ<4259>が動兆著しいが、同じくAI関連の低位株で買収効果が発現しつつあるユビキタスAI<3858>に着目。このほか、エッジAI関連で日本ラッド<4736>もマークしたい。量子コンピューターに絡む銘柄では量子デバイスの制御や信号検出で独自技術を持つエヌエフホールディングス<6864>の押し目や、昨年来高値奪回を視界に入れる堂々の本命株、フィックスターズ<3687>は引き続き注目となる。

あすのスケジュールでは、12月の貿易統計、12月の白物家電出荷額など。海外ではマレーシア中銀の政策金利発表、カナダ中銀の政策金利発表、1月の仏PMI、1月の独PMI、1月のユーロ圏PMI、1月の英PMI(いずれも速報値)、1月の米PMI(S&Pグローバル調査・速報値)など。なお、国内ではディスコ<6146>、ニデック<6594>の決算発表が予定され、海外ではテスラ<TSLA>の決算発表に市場の関心が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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