明日の株式相場に向けて=AI周辺株のヒーロー探し続く
週明け29日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比275円高の3万6026円と反発。前週末26日に日経平均は先物主導で一時500円を超える下落となり“プチ波乱”の様相を呈したが、これで慌てるようなムードはなく、したたかに下値を拾う動きがみられた。案の定というべきか、同日の欧州株がほぼ全面高で米国株市場にバトンを回し、米国ではNYダウが史上最高値を更新、“インテル・ショック”の影響もあってナスダック総合株価指数は7日ぶりに反落したものの、下落率はわずかにとどまった。こうなると東京市場も一段と下値を売り込むには材料不足。きょうはプライム市場で8割を超える銘柄が上昇するなど一転してリスク選好ムードが前面に押し出される地合いとなった。いわゆる空売りでは報われない相場が続いている。
年初から日経平均の「上昇ピッチ」があまりに速いため、かつてバブルが弾け株価崩落となった時の残像が脳裏にチラつくのは仕方のないところではある。ただ、現在の企業の収益実態を見れば日経平均の「水準(株価位置)」についての妥当性は裏付けられている。PERとPBRはバブルを否定する鉄壁の根拠となっている。もちろん、株価は企業の未来を映す鏡であるため、企業収益がこれから大きく落ち込む確度が高まれば売りの洗礼を浴びるわけだが、現状ではそのシナリオは見えていない。
中国景気の減速が取り沙汰されるが、中国の不動産バブル崩壊は局地的で政府当局が意図する範囲内でコントロールが利いている。既に距離感はつかめており、世界のマーケットは「チャイナリスク」のビーンボールにも目が慣れてきた。そうこうするうちにインドやベトナムなどの経済発展が世界に貢献する構図も描かれている。油断は禁物だが、市場関係者からは「視線を向けたことがない新たな場所からリスク要因が出現しない限り、(株式市場が)本当の狼に遭遇することはない」(中堅証券ストラテジスト)という声も聞かれる。
個別では足もとバリュー系の銘柄にリターンリバーサル狙いで投資資金流入が観測される。そのなか、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>の強調展開が目立っているが、日銀のマイナス金利解除に向けた思惑が醸成されるなか、銀行株は投資資金を誘引しやすい。市場では「次回3月の金融政策決定会合でいきなりの解除はないまでも、ここで4月解除に向けた地ならしをするのではないか」(ネット証券アナリスト)と見る向きが多い。
これを拠りどころに銀行株買いの潮流が発生するならば、メガバンクのほか、 地銀株にも幅広く物色の矛先が向かうはず。その際、地銀株は総花的な上昇となりやすいものの敢えて絞るのであれば、前週にも取り上げたが、TSMC<TSM>の半導体景気で沸く熊本関連の切り口もある九州フィナンシャルグループ<7180>や、ふくおかフィナンシャルグループ<8354>などが有力。また、値ごろ感で選ぶなら株価300円近辺の栃木銀行<8550>が面白い存在。堅実経営で知られるがPBRは何と0.2倍強に放置されている。
一方、グロース株も跛行色はあるとはいえ、生成AI・ 半導体周辺は依然として強い銘柄が多い。引き続きマーケットは次のヒーロー探しに躍起だ。そのなかインターアクション<7725>はCMOSやCCDなどイメージセンサーの検査用光源装置で世界首位を誇り、AI画像処理装置でも期待が大きい。また、AI関連の中で群を抜いて業績成長路線を走るユーザーローカル<3984>も中期的な上値余地が大きそうだ。株価低位では「ビズロボ」を手掛け、業績回復色が鮮明となりつつあるRPAホールディングス<6572>。値動きの重い株ながら大底圏にあり目を配っておきたい。
あすのスケジュールでは、12月の失業率、12月の有効求人倍率が朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に2年物国債の入札が予定されている。海外では12月の豪小売売上高、ハンガリー中銀の政策金利発表、10~12月期のユーロ圏GDP速報値、10~12月期の独GDP速報値、10~12月期の仏GDP速報値、11月の米S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、12月の米雇用動態調査(JOLTS)、1月の米消費者信頼感指数など。国内主要企業の決算発表ではオリエンタルランド<4661>、コマツ<6301>、ソシオネクスト<6526>、NEC<6701>、キヤノン<7751>などがある。また、海外ではアルファベット<GOOGL>、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>、マイクロソフト<MSFT>などの決算に注目度が高い。(銀)