窪田朋一郎氏【最高値圏を舞う日本株、更なる高みか調整か】 <相場観特集>
―4万1000円台は通過点? 夏相場の展望を予測―
週明け8日の東京市場は日経平均株価が方向感の定まらない展開となった。朝方はマイナス圏で推移する場面もあったが、前引け時点ではプラス圏に浮上。しかし後場に入ると再び値を消す展開。押し目買いニーズと利益確定売り圧力が錯綜したが、結局この日の安値で引けた。4万1000円手前で最高値圏にある日経平均だが、ここから更なる高みを目指すことができるのかどうか。相場の分析力に定評があり、個人投資家の動向にも詳しい松井証券の窪田氏に話を聞いた。
●「目先上値重いも秋口まで上昇波動続く」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
東京市場は前週の大幅高で目先高値警戒感はあるものの、下値では買い意欲が旺盛だ。前週末に発表された6月の米雇用統計は概ね想定の範囲内だった。また、今週後半の11日には6月の米消費者物価指数(CPI)発表を控えているが、減速傾向を示すことが予想されている。ただし、今週はETF分配金捻出に伴う売りなども想定され上値は重そうだ。
インフレ懸念はひと頃より沈静化しているようにも見えるものの、世界を見渡すと政治の動きが再び物価上昇を誘発する可能性を念頭に置きたい。フランス総選挙では躍進の可能性が取り沙汰されていた極右政党の国民連合が、決選投票で過半数に及ばなかった。また、与党連合にも後れをとる形となった。これは、一見すると政局不安の後退にも思えるが、左派を中心とした与党連合は政策的には欧州連合(EU)からの離脱や積極的な財政出動、あるいは賃金引き上げなどを標榜しており、インフレ圧力の再燃につながりそうだ。また、米国では11月に大統領選を控えるが、先のテレビ討論会を経てバイデン氏がかなり劣勢に陥っている。民主党では代わりの候補を立てる可能性はあるが、現状はトランプ氏が大統領に返り咲く公算が大きく、その場合は積極的な財政出動や厳しい移民政策を打ち出すことで、これもインフレを引き起こす要因となる。
だが、景気に対する期待感から株式市場に短期的にはポジティブに作用しやすい状況となっている。したがって、秋口まではゴルディ・ロックス状態のまま日米の株式市場はモメンタム相場で上値を指向する公算が大きい。スケジュール的には米大統領選を通過後、利下げ期待の後退などで株価が軟化するというシナリオを想定している。したがって、ここから8月中旬まで向こう1ヵ月の日経平均予想レンジとしては、4万~4万3000円のゾーンで強含みに推移すると予想する。
物色対象としては、半導体関連の主力銘柄は買いにくいものの、スマートフォン周辺の電子部品株は「エッジAI」のテーマで投資資金の新たなターゲットとして存在感を高めている。村田製作所 <6981> [東証P]やTDK <6762> [東証P]を引き続き注目。また、エッジAIで活躍が期待されるのが、英半導体設計のアーム・ホールディングス<ARM>であり、同社を傘下に持つソフトバンクグループ <9984> [東証P]も継続マークしておきたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「グロース市場信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」など、これまでにない独自の投資指標を開発。また、投資メディア部長としてYouTubeチャンネルやオウンドメディア「マネーサテライト」を運営。
株探ニュース