明日の株式相場に向けて=鮮烈リバウンドも半導体関連に暗雲漂う
週明け29日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比801円高の3万8468円と9日ぶりに大幅反発。今月11日に史上最高値4万2224円をつけた後は急転直下の下落相場へ移行、前週末までわずか2週間で約4600円下げていた。ようやく下げ止まり過度な不安心理は後退したとはいえ、800円高はささやかな自律反発に過ぎない。
全体相場が大きく下押した時の逆張りが個人投資家の十八番で、波乱相場に遭遇した際の勝ちパターンともなっていた。しかし、きょうの相場の売買主体をみて、市場関係者の中には警鐘を鳴らす向きもいる。いわく、「急落後に日経平均やTOPIXが大きく値上がりする相場では、個人投資家は売り越しとなっているのが常。しかし、きょうは店内をみると買い越しであり、むしろ慌て気味に参戦している状況」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。売り方に回っているのは海外投資家という構図が透けて見え、手口的にはヘッジファンド系の短期筋ということになるが、まだ先行き油断できない可能性がある。
前週末までの苛烈な下げ相場は、世界的な株安に日本も追随した部分はあったが、国内要因に左右されてリスクオフが増幅されたことも確かだ。いうまでもなく日銀の7月利上げに対する思惑である。一連の仕掛け的な売りは、利上げ実施を織り込む動きだったといってもよい。ただし、これまでの植田日銀総裁は緩和的姿勢を貫き、事前にコンセンサスとしてタカ派予測が出た際にも、いざフタを開ければ中からハトが飛び出すケースが繰り返されてきた。また、政策修正がある時は事前のリーク記事が出るようになって、マーケットに与える衝撃を出来る限り小さくするような算段がとられた。
したがって、今回の会合で既に決められている国債の買い入れ減額以外に政策金利に手をつける(利上げ実施)場合には、何かしらサジェストがあるはず。「タイミングとしては明日(30日)、国内大手メディア経由で出るかどうか」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。現状でマーケット関係者の見方は全体の25%程度が利上げありとみているようだが、その場合利上げ幅については0.25%ではなく0.15%という線が濃厚。現在の政策金利は0~0.1%なので、これを0.25%まで引き上げるというコンセプトだ。
前週末まで日経平均が高値から4600円も急落し、為替も足もとで1ドル=153円台前半まで円高が進行している中で、おそらく植田総裁は利上げのカードを切ることはできないであろうという見方が常識的かつ現実的である。しかし、もし9月利上げが行えない事情があれば前倒し説もそれなりに信憑性が伴う。「9月はFOMCが“利下げ”に動く可能性が高く、同じタイミングで日銀が逆モーションをかけるのは胆力がいる。そして、自民党総裁選という政治イベントとスケジュール的にモロ被りするとなれば、かなり動きにくい」(中堅証券ストラテジスト)という指摘がある。週央31日はいずれにしてもイベントドリブンで全体相場はハイボラティリティとなることが予想される。日銀が利上げ見送りなら、前述の理由で10月末の決定会合まで政策金利据え置きというパターンも想定されるだけに、株式市場は一段高に進む公算大。しかし、仮に0.15%でも引き上げられた場合は、ドラスチックな売り仕掛けを覚悟しておく必要がある。
個別株はリバウンド狙いであれば真っ先に半導体主力株に目が行くが、前週末に業績予想の上方修正を発表したSCREENホールディングス<7735>の一段安を見る限り、不穏なムードが漂う。事前コンセンサスのハードルが高すぎる半導体製造装置は押し目買いではなく、現状は戻り売りの対象で、逆張りが奏功しても短期で下りておく方が無難といえる。一方で、アパレルや外食など内需の消費関連は狙い目といえそうだ。アパレルではオンワードホールディングス<8016>、三陽商会<8011>のほか、低位のTOKYO BASE<3415>などに意外性がある。外食では1000円トビ台のクリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>が今期営業3割増益で過去最高更新予想と変化率が際立つ。
あすのスケジュールでは、6月の有効求人倍率、6月の失業率などが開示される。また、東証グロース市場にHeartseed<219A>が新規上場する。海外では7月の独消費者物価指数(CPI)、4~6月期ユーロ圏実質国内総生産(GDP)速報値が注目されるほか、米国では5月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、7月の消費者信頼感指数、6月の米雇用動態調査(JOLTS)などに市場の関心が高い。(銀)