夏場の米石油需要にピークアウトの兆候も、原油在庫には取り崩し圧力が根強い <コモディティ特集>
●夏場の増産ピークアクトで需給動向は手がかりにならず
米国は夏場の需要期にあるものの、需給動向はほとんど手がかりとなっていない。米国は日量2000万バレル規模を消費する世界最大の石油浪費国で、夏場にはガソリン消費が日量1000万バレル近くまで増加することもあるが、今年は盛り上がりに欠ける。
米エネルギー情報局(EIA)の週報で、ガソリン需要の4週間移動平均は日量899万4000バレルまで減少し、前年の水準を下回っている。ガソリン生産も4週間移動平均で日量967万9000バレルまで下振れしており、夏場の増産がピークアウトした印象が強い。ガソリン在庫が増加傾向にあるため、足元の在庫で需要期を乗り切ることができるのではないか。
米国のジェット燃料を含む留出油の需要は前年の水準を上回って推移しており、ガソリンと比較すると堅調だが、需要全体に占める割合は限定的である。石油製品全体の需要は4週間移動平均で日量2026万2000バレルまで減少し、夏場にかけての増加は頭打ちとなった。戦略石油備蓄(SPR)を除く原油と石油製品の在庫の合計水準は、12億5583万7000バレルまで増加し、今年の最高水準を更新するなど、3月以降の積み増し傾向が続いている。
●米国はSPR積み増しでタイトな需給
一方、米国の原油在庫は過去5年間のレンジ下限付近で推移しており、製品在庫のような需給のゆるさは見られない。4週間移動平均で原油の輸入量は日量631万4000バレルまで増加しているうえ、輸出量は日量321万3000バレルまで急減し、米国内に原油在庫を確保しようとする動きが現れていることは、需給がタイトであることを示唆する。米原油生産量は過去最高水準で推移している一方、米原油輸出量はピークアウトが鮮明となっており、2022年以来の低水準を塗り替えている。
世界最大の産油国である米国では増産が続き、輸出の減少や輸入の増加が国内在庫を支えているとしても、上述したように原油在庫は潤沢ではない。米国内の原油在庫にはどちらかといえば取り崩し圧力が強い。この背景は、SPRの増加である。バイデン前政権が実施した過去最大の放出が終わった後、SPRは5000万バレルほど積み増されて4億270万3000万バレルまで増えた。ウクライナ戦争を背景としたSPRの大放出を埋め合わせようとするならば、あと1億5000万バレルほど市場から吸収する必要があり、最近のペースでSPR積み増しが続くなら、さらに数年間にわたって米国内の民間原油在庫を圧迫するだろう。
石油輸出国機構(OPEC)プラスが4月から開始した自主減産の縮小について、SPRの積み増しが考慮されたのか不明である。ただ、米国の輸出入や、民間原油在庫の推移は需給がややタイトであることを示しており、OPECプラスの増産は妥当である。米国はOPECプラスに助けられており、原油価格が多少上振れしようとも、トランプ米大統領や米議会は主要産油国を批判しづらいのではないか。第1期のトランプ米大統領は口うるさく原油相場に言及したものの、第2期はとても静かである。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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