ウクライナ停戦に向けて米ロ首脳会談を再び実施か?和平はロシア産原油のプラス要因 <コモディティ特集>
今月、急転直下でガザ停戦合意が実現したことを受けて、ウクライナ停戦期待が再び高まっている。きっかけは先週の米ロ首脳の電話協議や、トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談である。トランプ米大統領は長距離巡航ミサイルのトマホークについて、「非常に危険な兵器」で「事態を激化させる可能性がある」とウクライナへの供与に慎重な姿勢を示したうえ、報道によるとトランプ米大統領はウクライナ東部のドンバス地方割譲を前提としてロシアとの停戦を模索しており、ロシアの勝利を認めたうえで丸く収めようとしているようだ。トランプ米大統領によると、今月中にもハンガリーの首都ブダペストで米ロ首脳会談が再び開催される見通しである。ただ、匿名の米ホワイトハウス当局者が「近い将来に(両首脳が)会う予定はない」と述べたと報道されている。
8月に米アラスカ州で行われた米ロ首脳会談でも、ウクライナ和平が主要議題の一つとみられていたが、その具体的な対話内容はほとんど明らかにされていない。その後、米国によるウクライナへのトマホーク・ミサイル供与が話題となり、米ロの直接的な軍事衝突が警戒された。ただ、先週末にウクライナのゼレンスキー大統領と会談したトランプ米大統領の発言は明らかにロシア寄りだった。
8月以降、トランプ米大統領のロシアに対する態度は一貫性を欠いているが、トマホーク供与を見送ることからすれば、米国が軍事的な対立激化を望んでいないことは確かである。なお、トマホークは技術的に核弾頭の搭載が可能な兵器であり、発射や標的設定には高度な軍事専門性が求められる。トランプ大統領は「越えてはならない一線」を越えなかったとも言える。
●ウクライナ・EUは停戦に否定的
米CNNによると、トランプ大統領は先週末の会談で、ゼレンスキー大統領が和平よりも事態の激化を望んでいる印象を受けたという。欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)は、東部地域を割譲して停戦することを受け入れておらず、ゼレンスキー大統領もその立場を代弁している。欧州はロシアとの本格的な対立に備えて軍備拡張を進めており、短期的な和平を目指す米国の動きはむしろ邪魔だろう。ただ、ロシアのラブロフ外相も、「即時停戦はウクライナのほとんどの地域がナチスの支配下に残ることを意味する」、「ウクライナ紛争の根本原因に対処せず即時停戦を求めることは、米ロ首脳がアラスカで合意した内容に反する」とけん制しており、ウクライナ東部の割譲だけが停戦条件ではない。
トランプ米大統領が本当に和平を目指すなら、ロシアとの直接的な軍事衝突に備えるEUやNATOの首脳を説き伏せる必要があるが、それは容易ではない。スペインのエル・パイス紙によると、EUはブダペストでの米ロ首脳会談を「侮辱的」と受け止めているという。EU域内で米ロ首脳会談が開催されるにも関わらず、EU首脳の参加は予定されていない。8月の米ロ首脳会談と同様に、ウクライナ和平を巡りEUは蚊帳の外に置かれている。また、ハンガリーはEU加盟国であるものの、ロシアとのつながりが比較的強い国で、EUの異端であるハンガリーのオルバン首相にとっては再選に向けた追い風にもなる。次回の米ロ首脳会談が停戦につながるなら有益だが、政治的な悪夢であると懸念するEU当局者もいるようだ。
●和平成立なら相場の上値は軽くなるか
ウクライナ和平が成立するならば、ロシアの石油供給が回復し、 相場を圧迫する可能性がある。ただ、原油生産量については石油輸出国機構(OPEC)プラスの生産枠で制限されることから、どちらかといえばロシア産原油の価格に目を向けるべきだろう。ロシア産原油は西側から様々な制裁を科されているため、取引する消費国はインドや中国などBRICS諸国のごく一部に限られ、割安で取引されている。日量900万バレル超生産され、制裁により取引が忌避されている原油は相場全体を圧迫している可能性が高く、ウクライナ和平期待から制裁解除が視野に入ると、相場の上値は軽くなりそうだ。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
株探ニュース