明日の株式相場に向けて=加速するAI・半導体相場の正体
大型連休明けとなった7日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比3320円高の6万2833円と過去最大の上げ幅で史上最高値を大幅更新した。全体株価が5万円を超えてきたあたりから、1日1000円を超える値動きがあっても全く驚かなくなったが、それにしても11兆円近い売買代金をこなし、一時3500円を超える値幅は何か夢を見ているような気分にすらさせられる。相変わらずAI・半導体関連の主力どころを中心に怒涛の買いが止まらない。商い水準も含め今の全体相場の動きを断片的に捉えれば、AIバブル相場の様相が強いことは確かだが、さりとて売りから入って報われる相場ではないことも肌感覚で分かる。千尋の谷底に向けて蹴り転がした丸太のごとし、回転速度は早まる一方で絡みつくものすべてを弾き飛ばし、これは売り方だけでなく買い方の立場でも容易に参戦できないような異空間と化している。
あすはオプションSQ算出日で、仕掛け的な買いが踏み上げ相場を加速させた面もあろう。一方で海外投資家とみられる大口買いも観測され、「海外投機筋はトレンドフォロー型で俗に言われるモメンタムチンパンジーが目立つ。正直、個人投資家は指をくわえて傍観するしかない向きも多いのではないか」(中堅証券マーケットアナリスト)という声が聞かれる。今の相場を牽引している半導体関連株は日経平均構成比トップのアドバンテスト<6857>や同3位の東京エレクトロン<8035>などをはじめ値がさ株のオンパレードであり、個人投資家は最低売買単位でも金額的にそうたやすく買いの手は振れない。
また、長いデフレのトンネルをくぐってきた投資家であれば、歯車が逆回転した時の怖さを知っている。眼前で見せつけられている上昇パフォーマンスが明日も保証されているわけではないのだ。しかし、反転する恐怖を人間であれば感じるが、今は買いでプログラム化されたAIが無機質に突き進む。そこに恐怖心や感情は存在せず、躊躇する余地はない。片や人間的な感性で(下げを期待して)空売りしていた向きは、期待がそのまま恐怖へと変わり、パニック的なショートスクイーズを誘う。
今は世界的なAI・半導体株人気であり、これは東京市場の局地的な現象ではないことは明らかだ。きょうは日経平均が歴史的な上昇劇を演じたが、4月以降、直近まで約1カ月の上昇率をみれば、韓国KOSPIは5000から7500へ何と50%上昇しており、日経平均とは比べ物にならないパフォーマンスといってもよい。では、この1カ月間で何があったのか。イラン情勢だけに目を奪われがちだが、こちらは米国・イスラエルとイランの戦闘終結がゴールである。そこが好材料としての最大値で伸びしろがない。言うまでもなくKOSPIの時価総額が1.5倍化する背景は見当たらず、だからこそバブルと形容するしかないのだが、問答無用のAIトレードの恐ろしさで、積み上げたショートポジションは全て押し流されてしまう。
きょうの東京市場では青空圏を先駆して舞い上がる韓国市場の後を追いかけ、日経平均がアクセルを急激に踏み込んだ格好だ。一番のトピックは、4月相場で1兆円を超える売買代金を恒常的にこなしていたキオクシアホールディングス<285A>が、ストップ高カイ気配のまま最後までザラ場に商いが成立しなかったという事実だ。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が最高値圏を舞い上がろうが、韓国サムスン電子がどれだけ買いを集めようが、足もとのキオクシアのファンダメンタルズには何も上積みがない話である。個別に大型材料が発現したわけではないのに、東京市場で断トツの出来高流動性を持つ銘柄が寄り付かない。この正体こそ“持たざるリスク”という名のバブルである。
そして今は、AI・半導体関連もしくはその周辺でなければ株にあらずという雰囲気はあるが、プライム市場の大型株でなければ株にあらず、ということではない。半導体関連の中小型株で値を飛ばす銘柄が相次いでおり、この流れは決算イベント通過後も続きそうだ。当欄で継続注目してきた銘柄では、AKIBAホールディングス<6840>、ミナトホールディングス<6862>がストップ高に買われ、北川精機<6327>も一時値幅制限いっぱいまで上値を伸ばした。日本電子材料<6855>、インスペック<6656>もストップ高で切り返している。このほか、TOWA<6315>、野村マイクロ・サイエンス<6254>といった銘柄もハイパフォーマンスを演じた。中小型株への流れを冷静に見極める算段も必要だ。
あすは株価指数オプション5月物の特別清算指数(オプションSQ)算出日にあたる。このほかのスケジュールでは、3月の毎月勤労統計、5月の日銀当座預金増減見込みがいずれも朝方取引開始前に開示されるほか、前場取引時間中に3カ月物国庫短期証券の入札が行われる。国内主要企業の決算ではソニーグループ<6758>、IHI<7013>、トヨタ自動車<7203>、任天堂<7974>、NTT<9432>、JT<2914>、コナミグループ<9766>などが予定されている。海外では4月の米雇用統計に対するマーケットの関心が高い。このほか、3月の米企業在庫・売上高、5月の米消費者信頼感指数(ミシガン大学調査・速報値)などにも耳目が集まる。(銀)