森田潤(ちばぎんアセットマネジメント)が斬る ―どうなる?半年後の株価と為替―
日米の株式相場は高水準ながらも安定感を欠く展開となっている。米国とイスラエルが2月末に始めたイラン攻撃で高まった投資家の動揺はひとまずおさまったものの、株式相場は不安定な状況が続いている。原油高を背景にインフレ率が高まり、長期金利が上昇したことが株安を招く場面もあった。トランプ氏が「就任から24時間以内に終わらせる」と豪語したロシアによるウクライナ侵攻も依然として収束のメドはつかない。台湾有事を巡る高市早苗首相の発言を受けた日本と中国の対立や米国のインフレ懸念も根強い。世界の政治経済が混迷を深める中、アナリストやエコノミストなどの専門家は、「半年後の株価」や「半年後の為替」をどう見ているのか。インタビューを通じて、著名アナリストに予測してもらい、その背景を詳報する。第49回は、ちばぎんアセットマネジメントの森田潤調査部長に話を聞いた。
●森田潤(もりたじゅん)

ちばぎんアセットマネジメント株式会社 調査部長。1971年生まれ。1993年慶応義塾大学法学部卒業、株式会社千葉銀行入行。ちばぎんアセットマネジメントで日本株ファンドマネージャーとして12年超運用業務を行ったほか、銀行本体のポートフォリオ運用やトレーディング業務も担当。また、銀行・証券で投資信託商品の企画・選定・推進を行うなど、多様な角度からマーケット関連業務に携わる。2020年より現職。
| 森田潤氏の予測 4つのポイント |
| (1)半年後の日経平均株価は6万7000~6万8000円程度 |
| (2)半年後のS&P500株価指数は8000ポイント程度 |
| (3)長期金利上昇も、ハイテク企業の設備投資増と堅調な個人消費で株高が続く |
| (4)注目するセクターはAI(人工知能)、FA(ファクトリーオートメーション)、宇宙関連など |
―― 米国とイスラエルによるイランへの攻撃で高まった投資家の動揺はひとまず落ち着きました。ただ、イラン戦争は原油高や長期金利の上昇を招き、株式相場に悪影響を与えています。半年後(2026年12月末)の日米の株価水準をどう予測しますか。
森田:私は半年後の日経平均株価の水準を6万7000~6万8000円、TOPIX(東証株価指数)を4200ポイント程度、米S&P500種株価指数を8000ポイント程度だと予測しています。
図1 S&P500株価指数(週足)

―― 地政学的リスクが高まる中でも株価は堅調に推移するということかと思います。予測の理由を教えて下さい。
森田:企業の設備投資を中心に高い経済成長が続き、2027年度の企業業績も堅調であるとみているのが大きな理由です。国内外でデータセンターやフィジカルAIなどハイテク関連が投資をけん引するでしょう。人手不足の中で設備の自動化や生産性向上は企業にとって必須項目となっています。業績面でも、日本企業の27年度の純利益は10%程度増加する見通しです。日銀が今後利上げすれば銀行収益も大きく伸びるでしょう。
もう1つの理由は、堅調な個人消費です。日米ともに消費は底堅い動きを示しており、GDP(国内総生産)の伸びを下支えしています。日本ではインバウンド(訪日外国人)の増加を受けた旅行者の消費も旺盛です。
―― 足元で上場企業の決算発表ラッシュが一巡しました。イラン戦争の株式相場への悪影響がやや薄らいだことから、業績相場の様相も出てきています。
森田:これまで森を見て木を見ていなかった投資家が、木も見るようになってきました。良い決算を出せば買われる、あるセクターがダメなら別のセクターを買うというセクターローテーションの動きも出始めています。
―― ただ、日米ともに長期金利が上昇し、株式相場が大幅に下落する場面がありました。
森田:長期金利はいったん急上昇しましたが、足元で落ち着きを取り戻しつつあります。中東情勢を受けて原油価格は上昇していますが、極端に投機的な動きは少なく、米原油価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近物で1バレル=200ドルといった過度の上昇はありません。トランプ米大統領のイラン戦争に関するコメントに振り回される場面も減ってきました。イラン情勢の急速な悪化がなく、原油価格が1バレル=100ドル程度であれば、企業業績や株価への影響は限られるでしょう。仮に原油価格が従来より1バレル当たり30ドル上昇しても、価格転嫁が進めば、そのまま減益要因にはならないためです。
―― とはいえ、イラン戦争が長引けば、悪影響は大きくなります。今後の展開をどう見ていますか。
森田:イラン戦争は合意が近いとされていますが、最終的な合意には時間がかかる可能性もあります。核問題やホルムズ海峡を巡る双方の主張に隔たりがあるためです。核問題についてトランプ大統領は、オバマ元政権が主導した2015年の核合意よりも有利な条件でなければ合意しづらいでしょう。しかし、イラン側の反発は強いようです。また、ホルムズ海峡についてはイラン側の最大の交渉カードであり、仮に合意があっても、すぐに自由な航行が可能になるとは限りません。ただ、現状でも一部の船舶はホルムズ海峡の航行に成功し、原油調達の分散も進みつつあります。こうしたこともあり、最近のマーケットは落ち着きを取り戻しつつあるといえるでしょう。
―― 物価高や円安・ドル高などを受けて、日銀は利上げを検討しています。銀行には貸出金利の上昇を通じて収益増加の要因となりますが、借り入れの多い企業にとっては金利負担が増します。株式相場への影響をどう見ていますか。
森田:私は、日銀が年央に0.25%利上げすると予測していますが、悪影響は小さいと考えています。銀行、保険を中心に金融機関には恩恵があるでしょう。一方で利上げ幅は小さく、製造業などに設備投資を控えさせるほどのインパクトはありません。現在の日本企業は需要に対して供給能力の不足が深刻となっており、設備投資を通じて生産性を高める必要もあります。
―― 今後のマーケットのリスクをどう見ますか。
森田:イラン戦争の終結後の円高が日本株のリスクになると考えています。地政学的リスクの高まりで有事のドル買いが起こり、現状では日米金利差が縮小しているにもかかわらず、円安が続いているからです。財務省が発表した25年度の国際収支統計でも日本の貿易収支が5年ぶりに黒字に転じました。
イラン戦争が終われば米国は利下げできるようになりますから、円相場が反転上昇しても不思議ではありません。日本企業の収益構造が変わったため、多少の円高は従来ほどの業績悪化要因にはなりませんが、その行方は注視する必要があります。
―― 株式市場の注目セクターを教えて下さい。
森田:防衛も含めたFA関連です。ロボットをAIで制御するフィジカルAIはもちろんですが、電機など広い分野でのFA関連銘柄に注目しています。
―― 米国市場では6月にも宇宙会社のスペースXが上場し、時価総額で史上最大規模のIPOになるとも言われています。
森田:スペースXの上場は多くの宇宙関連銘柄に影響を及ぼすでしょう。宇宙関連銘柄は裾野が広く、ロケットを打ち上げる企業、電子機器、FA関連など多くの企業に恩恵があると考えています。
(※聞き手は日高広太郎)

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