【決算総括記者座談会①】26年3月期決算が映すAI相場の希望と“病巣”
─ベテラン証券記者たちが読み解く、上昇相場の真実─
想定以上だった日本企業決算、だが資金の流入には偏りが
──2026年に入って相場は大きく動きました。高市トレードで始まり、米国とイスラエルによるイラン攻撃、そして4月以降の上昇相場と続く中で、日本企業の26年3月期決算シーズンを迎えたわけですが、今回の決算シーズンをひと言で総括すると、どのようなことが言えるのでしょうか。
(銀)
総じて振り返ると、今回の決算は想定以上の結果となり、株価も上昇基調を続けています。ただし、各社の決算と発表後の株価をよく見てみると、買われているのは半導体やデータセンター周辺のAIインフラ企業、そして金利上昇の恩恵を受けるメガバンクをはじめとした金融機関が中心でした。一方、日本企業全体を見るとそれほど好調とは言えず、特に内需系の企業は厳しい環境に置かれるところも目立った。
決算を受け、AI関連や大手金融企業の比重が高い日経平均株価は上昇しましたが、それが今後、日本企業全体に波及していくのかは、いささか疑問に感じています。原油価格上昇によりインフレ圧力が強まり、企業の経営コストが上がっていくことが確実視される中で、はたしてAIや半導体だけで日本の株式市場をけん引できるのか。全体としての強さの半面、ある種の弱点というものも見えてきたのではないかと感じます。
(碧)
確かに銀さんの指摘どおり、全てが良かったわけではない。今回の決算シーズンでは、NT倍率(日経平均をTOPIXで割った数値)の拡大が話題を呼びましたが、これを見て感じたのは、ある意味、TOPIXの"価格発見機能"が生きているのかな、ということです。TOPIXが日経平均ほど上昇していないのは、AIブームが過熱する中で、中東情勢やインフレへの懸念などの現実的な問題を織り込んだ結果ではないかと感じるのです。
各社の決算に関しては、やはり総じて堅調な決算だったとは思いますが、同時になんとなくモヤモヤした感じも残っています。決算シーズン中の株価の推移を振り返ると、日経平均は5月の連休明けに急騰して6万3799円の高値をつけましたが、その後、大きく調整し、今は再び持ち直していますが、完全に視界が晴れたとは言えない状況です。
モヤモヤ感の背景にあるのはやはり金利の動向です。5月12日(米国時間)のCPI(米消費者物価指数)発表以降、スルスルっと米国の長期金利が上昇しましたが、これはここにきて中東情勢の実体経済への影響が顕在化し始めたということです。加えてスターマー首相が退陣要求を受けている英国や、高市政権が積極財政を進める日本など、いまは世界中で財政拡張の動きが活発になっていて、世界的な金利の上昇基調は今後も続いていく見込みです。
したがってバリュエーションの高い企業には、必然的に修正圧力が高まらざるを得ない。今回の決算でも、AI関連企業がすべて良かったわけではなく、企業によって株価は明暗が分かれましたが、その背後には、市場が金利上昇の圧力を感じていることがあるのではないかと考えています。
(鵙)
株探では決算動向を集計していますが、企業の四半期ごとの業績は確実に上向いています。全上場企業では、25年第1四半期に最終増益となった企業は39.8%でしたが、26年第1四半期には44.8%まで増加しています。東証プライム上場企業はもっと良くて、46.1%から54.5%に上昇しています。過去最高益を達成した企業の数も、この20年来で最高水準にあります。
つまり上場企業の業績は、AIや半導体関連だけが好調というわけではなく、全体的に見ても好調ということです。ただし、買われているのは、銀さんの言うとおり、一部の銘柄だけ。だから半導体関連企業が占める割合が高い日経平均の上昇がTOPIXの上昇を上回り、NT倍率の拡大となって表れている。AI関連以外の企業も業績は伸びているのですが、資金はAI関連に集中している状態です。
AIや半導体を中心とした相場は当面、続くでしょう。一方、好業績でありながら放置されている銘柄にも、どこかの段階で日が当たるときは来るでしょう。短期売買の投資家には、当面は株価が動かないかもしれないこうした銘柄では妙味がないかもしれません。ですが、長期スタンスの投資家なら、AI銘柄に過熱感が出ている中で、こうした評価が追いついていない好業績銘柄を、ヒストリカルPER(株価収益率)などでバリュエーションの変化を見ながら仕込んでいくというのも有効な戦略だと思いますね。
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