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AI相場の調整局面~ディフェンシブ銘柄に注目【フィリップ証券】

市況
2026年6月12日 16時17分

6/5の米国株市場における主要株価指数のうち、ナスダック総合指数の終値が前日比4.76%安、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が同10.25%安と、大きな売りに見舞われた。特にSOXは新型コロナパンデミックの時の2020年3月以来の下落率となった。5月の米雇用統計における非農業雇用者増加数の市場予想からの上振れのほか、6/12にナスダック市場に新規上場する宇宙開発企業のスペースX<SPCX>のIPO公開価格が6/3に1株当たり135USDと決まり、想定時価総額が1兆7500億USDとなったことも、購入資金を確保するため、含み益の拡大したAI関連銘柄の利益確定売りが膨らんだことも、その要因の一つになったと推察される。さらに、新興AI開発企業のアンソロピックが6/4、AIの暴走リスクを抑えるには開発の一時停止や減速が有効だと提言したことも、AI関連銘柄への売りに拍車をかける要因となった。

また、6/10発表の5月の米CPI(消費者物価指数)も市場予想から上振れれば株式市場は売りに傾きやすいだろう。また、6/16-17開催の米FOMC(連邦公開市場委員会)はウォーシュ新議長の下での初会合となる。雇用統計による非農業部門雇用者数が上振れして年内利上げ観測が台頭する中、FRB(連邦準備理事会)改革に積極的な姿勢を示している同氏の金融政策運営の方向性に対する不透明感も市場の様子見姿勢を強める要因になると考えられる。

大荒れとなった6/5の米国株市場においても、イーライリリー<LLY>、メルク<MRK>、ジョンソン・エンド・ジョンソン<JNJ>など医薬品株、および手術ロボットの「ダ・ビンチ」で知られるインテュイティブ・サージカル<ISRG>をはじめとするヘルスケア関連銘柄の多くは終値が前日比でプラスとなった。ダウ工業株30種平均株価(ダウ平均)の終値も前日比1.35%安と相対的に小幅な下げにとどまった。主要株価指数について、年初来安値を付けた3/30終値から年初来高値までの上昇率は、SOXが6/3高値まで96%、ナスダック総合指数が31%に対し、ダウ平均が14%と小幅にとどまっている。上昇幅が大きかった銘柄ほど利益確定売りが出やすい展開が想定され、当面はヘルスケア関連銘柄のウェートが高くディフェンシブ性が強いダウ平均が相対的に優位となる展開が考えられる。

また、SOXなどの調整局面に対し、よりディフェンシブ性を高めた運用を心掛ける場合には、S&P500指数構成銘柄のうち25年以上連続して増配している銘柄を対象とした均等加重指数で、時価総額30億USD以上かつ一定額以上の平均売買代金の条件を満たす優良大型株から構成される「S&P500配当貴族指数」に着目することも検討の余地がある。CBOE上場の「プロシェアーズS&P500配当貴族ETF(NOBL)」は同指数に連動した投資成果を目指すETFである。

■量子コンピューティング新時代~米政府が関連企業へ20億ドルの出資計画

米商務省は5/21、「CHIPSおよび科学法」に基づき、量子コンピュータなどを手がけるIBM<IBM>など米国内9企業に計20億ドルを出資すると発表。IBMはそのうち半分を受け取り、米国初の量子チップ専用の製造工場となる新会社「アンデロン」を設立する予定だ。

同社は量子コンピューティング分野に5年間で100億ドル以上を投資する計画を発表。超伝導回路やシリコンスピンなどを高精度に形成する基板となる量子コンピューティング向けウエハは既存の半導体製造技術を応用できるものであり、コスト削減や量産化が容易になると見込まれている。IBMのクリシュナCEOは、量子コンピュータが従来のスーパーコンピュータの性能を明確に上回る「量子超越性」が年内に達成されると予測している。

【タイトル】

参考銘柄

ハネウェル・インターナショナル<HON> 市場:NYSE・・・2026/7/24に2026/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

・1885年創業の世界的コングロマリット。航空宇宙事業(AERO)、産業オートメーション事業(IA)、ビルオートメーション事業(BA)、プロセス・オートメーション・テクノロジー事業(PAT)を展開。

・4/23発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比2.4%増の91.4億USD、非GAAPの調整後EPS(年金関連を除く)が同10.9%増の2.45USD。事業別セグメント利益は、AERO(売上比率47%)が4%増、BA(同21%)が13%増、PAT(同17%)が15%増、IA(同15%)が5%増だった。

・通期会社計画は、既存事業の増収率が前期比3-6%、調整後EPSが同6-9%増の10.35-10.65USDと従来計画を据え置いた。アクティビスト(物言う株主)のエリオットの提案を受けて、先端材料、オートメーション、航空宇宙の3事業に分割する方針でスピンオフを進めている。同社の量子コンピューティング部門と英ケンブリッジ・クォンタムが統合したクオンティニュアム<QNT>が6/4にナスダック新規上場。

クローガー<KR> 市場:NYSE・・・2026/6/18に2027/1期1Q(2-4月)の決算発表を予定

・1883年開業の全米最大の生鮮食品スーパーマーケットチェーン。傘下に、ラルフス、フード4レス、ハリス・ティーター、フレッド・マイヤーがある。プライベートブランドのシンプル・トゥルースを展開。

・3/5発表の2026/1期4Q(11-1月)は燃料費・例外的項目を除く調整後売上高が前年同期比2.4%増の311億USD、非GAAPの調整後EPSが同12.3%増の1.28USD。仕入れコスト最適化などが奏功し、値下げプロモーションや低利益率の薬局販売比率上昇を吸収して調整後FIFOの粗利益率が横ばい。

・2027/1通期会社計画は、調整後売上高成長率が前期比1.0-2.0%、調整後EPSが同5-9%増の5.10-5.30USD。同社は2/9、大型合併失敗とマクマレン前CEO辞任を受けて新たな道を模索する中、2010年代半ば以降にウォルマート米国事業のCEOとして同事業を立て直した功績で知られるグレッグ・フォラン氏を新CEOに指名。同氏の特徴である現場第一主義とAI(人工知能)活用の融合が注目される。

レナー・クラスA<LEN> 市場:NYSE・・・2026/6/11に2026/11期2Q(3-5月)の決算発表を予定

・1954年設立の米国最大の住宅建設会社。一世帯向け戸建て住宅のほか、集合住宅や商業用不動産、不動産金融サービス、子会社を通じた資産運用も行う。最近は「土地軽量化戦略」を推進。

・3/12発表の2026/11期1Q(12-2月)は、売上高が前年同期比13.3%減の66.1億USD、EPSが同52.6%減の0.93USD。住宅販売は、引渡件数が5%減の1.68万件(会社計画1.7-1.8万件)、平均販売価格が8%下落の37.4万USD(同36.5万-37.5万USD)、粗利益率が3.5ポイント悪化し15.2%(同15-16%)。

・2026/11期2Q(3-5月)会社計画は、新規受注件数が前年同期比3-7%減の2.1-2.2万件、引渡件数が同1%減-4%増の2.0-2.1万件、平均販売価格が同4-5%低下の37.0-37.5万USD、住宅販売粗利益率が同1.8-2.3ポイント悪化の15.5-16.0%。割安株投資で知られる投資会社バークシャー・ハサウェイ<BRK.B>が3月末時保有状況報告で1-3月に同社株式を304万株追加購入し合計保有株数を1009万株へ拡大。

シェニエール・エナジー<LNG> 市場:NYSE・・・2026/8/7に2026/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

・1983年設立の液化天然ガス(LNG)事業者。生産規模は米国首位級・世界有数。世界最大規模のLNG生産施設サビン・パス・ターミナルを所有・運営。パイプライン輸送のほかタンカー輸出も行う。

・5/7発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比7.8%増の58.6億USD、非GAAPの調整後EBITDAが同24.6%増の23.3億USD。LNG輸出量が13%増に加え、天然ガスとLNGの国際相場が上昇。生産と輸出の記録的増加を背景に、分配可能キャッシュフローが28%増の16.7億USD。

・通期会社計画を上方修正。調整後EBITDAを前期比4-12%増の72.5-77.5億USD(従来計画67.5-72.5億USD)、分配可能キャッシュフローを同1-10%減の47.5-52.5億USD(同43.5-48.5億USD)とした。欧州の米国からのLNG輸入量が1-3月で前年同期比27%増と米国産LNGのグローバル需要が拡大。ホルムズ海峡の事実上閉鎖により世界LNG貿易の約20%が影響を受けている点も同社へ追い風だろう。

パランティア・テクノロジーズ<PLTR> 市場:NASDAQ・・・2026/8/4に2026/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

・ペイパルの共同創業者で起業家のピーター・ティール氏らが2003年に設立。ビッグデータ解析プラットフォームを開発・提供。米諜報機関が対テロ分析で活用するほか、ヘッジファンドも利用する。

・5/4発表の2026/12期1Q(1-3月)は、売上高が前年同期比84.7%増の16.32億USD(会社予想15.32-15.36億USD)、非GAAPの調整後営業利益が同152%増の9.83億USD(同8.70-8.74億USD)。米民間商業向け売上高が133%増の5.95億USD、米政府機関向け売上高が84%増の6.87億USDへ拡大。

・通期会社計画は、売上高が前期比70-71%増の76.50-76.62億USD(従来計画71.82-71.98億USD)、調整後営業利益が同98.0%増の44.50-44.52億USD(同41.26-41.42億USD)。同社は長年にわたる米政府機関向けサービス提供のほか、世界各国政府とも防衛関連契約を締結。生成AI普及で競合他社も類似サービスを開発しやすくなる一方、先行者利益を維持しやすいプラス面もある。

ソーファイ・テクノロジーズ<SOFI> 市場:NASDAQ・・・2026/7/29に2026/12期2Q(4-6月)の決算発表を予定

・2011年にスタンフォード大ビジネススクールの学生が設立。貸付事業(学生ローン、個人ローン、住宅ローン)、金融サービス事業(SoFi Bankを通じた銀行業務など)のデジタル金融サービスを提供。

・4/29発表の2026/12期1Q(1-3月)は、非GAAPの調整後売上高が前年同期比41.1%増の10.87億USD、調整後EBITDAが同61.6%増の3.39億USD。主な事業別貢献利益は、金融サービス事業(売上比率39%)が32%増の1.95億USD、貸付事業(同59%)が60%増の3.82億USDと堅調に推移した。

・通期会社計画は、調整後売上高が前期比30%増の46.55億USD、調整後EBITDAが同52%増の16.00億USDと従来計画を据え置いた。同社は「高学歴・富裕層予備軍」を顧客ターゲットとし、金融サービスの包括的ソリューション提供を目指している。1QはB2Bプラットフォーム事業の売上高が大口クライアント離脱の一時的影響で27%減収も、会社側は当事業の通期での回復を見込んでいる。

執筆日:2026年6月8日

フィリップ証券
フィリップ証券 リサーチ部 笹木和弘
(公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト)

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