混迷相場で底力、来年に節目迎える老舗「JTC」銘柄の変化対応力に刮目 <株探トップ特集>
―今もなお成長途上の企業が多数存在、強力な無形資産保有し市場の評価余地大―
わが国は 老舗企業の宝庫である。世界の長寿企業に占める日本企業の割合は高い。旧態依然とした制度文化を持つというイメージから、SNS上で時に「JTC(Japanese Traditional Company、日本の伝統企業の英語の略)」として揶揄される日本の老舗企業だが、時代の変化への対応力を発揮し続けてきたからこそ存続できたと考えるべきである。強固な事業基盤を持つ企業であれば、AIブームの終息懸念が高まるなかで、投資家の資金の受け皿となる素地を兼ね備えていると言えるだろう。来年に周年を迎える老舗企業のなかから、持続的な成長が期待できる有望銘柄を探ってみたい。
●昭和2年創業企業が来年100周年に
「昭和100年」である2026年も残すところあと2カ月弱となった。27年に創業100周年を迎える企業は1927年、すなわち昭和2年に創業をしたことになる。その2年後には世界大恐慌が発生した。戦乱やプラザ合意後の円高不況、バブル崩壊など幾多の難局を乗り越え、業容を拡大させてきたのが100年企業だ。老舗企業は顧客や仕入先などとの間に築き上げられたネットワークや信用そのものが、強力な無形資産となっている。保有する不動産や有価証券などの資産価値が上昇し、含み益を保有しているケースも少なくない。
いわゆる「JTC」の多くは長期的な観点での人材育成に力を入れており、新卒者の就職戦線においても根強い人気を誇っている。20代のうちに、その後何十年にわたって会社人生をくぐり抜けるための社会スキルを獲得することができ、入社に際しては知名度ゆえ周囲の理解も得やすいためだ。人手不足にあえぐ日本経済のなかでも、スタートアップ企業や中小企業が人的リソースの獲得に苦しむ一方、ブランド力を持つ老舗企業は、安定志向の強い日本国内で、比較的有能な人材を集めやすい状況にある。
AIブームの昨今、市場で人気化した銘柄のなかにも、老舗企業は数多く存在する。例えば、シリコンウエハーで世界有数のシェアを誇る信越化学工業 <4063> [東証P]は1926年設立で、今年9月に創業100周年を迎えた。信濃の水と越後の石灰石を活用し、化学肥料・石灰窒素を生産したのが源流だ。高機能ICパッケージ基板を手掛け、エヌビディア<NVDA>もその技術力を頼みとするイビデン <4062> [東証P]は、1912年に揖斐川での電源開発を目的に岐阜県で設立された企業だ。電力部門は戦時統制で分離したものの、水力発電を生かした工業部門が残り、電子部品・自動車部品メーカーとして成長し今に至っている。
創業100周年、あるいは120周年といった形で節目を迎える企業には、自社の歴史を紹介する特設サイトを設けたり、メディアでの露出を積極化したりするところも散見される。株式市場としては記念配当の実施の有無も注目されるところだ。数々の苦境を乗り越え、今もなお事業拡大の途上にある老舗企業をいくつかピックアップしていく。
●UBEは創業130年の節目到来
UBE <4208> [東証P]はナイロン原料大手で、会社設立は1942年だが、かつて山口県宇部市に存在した沖ノ山炭鉱で1897年に設立された組合を前身とし、来年が創業130周年となる。硫酸アンモニウムの製造を手始めに、化学製品各分野に進出。2022年に宇部興産から現社名となった。31年3月期に向けた中期経営計画ではM&Aなどによって新規事業の開拓を進め、現在のほぼ倍増となる最終利益450億円の達成を目指している。配当利回りは5%近く。PBR(株価純資産倍率)は0.7倍台にとどまる。
日清紡ホールディングス <3105> [東証P]は1907年創業。来年2月で120周年を迎える。高級綿糸の生産で日本の紡績業界の発展に大きな役割を果たし、戦後は自動車部品やメカトロニクス、化学品など多角化を推進。航海機器や防災情報関連、衛星通信システムなどを手掛ける日本無線を2017年に完全子会社化したほか、国際電気(旧日立国際電気)を23年に傘下に収めた。現状では事業構造改革の途上にあるが、無線・通信事業では防衛装備庁向けの受注が拡大。新造船関連の需要も事業の追い風となっている。
中国塗料 <4617> [東証P]は船舶用塗料国内最大手で、1917年に設立。来年が設立110周年だ。高市早苗政権の戦略17分野の一つに挙げられる「造船」の関連株として位置付けられている。近年の世界的な建造ラッシュに加えて、各国で義務付けられている既存船の塗り替え需要の拡大もあり、足もとの業績は好調に推移。このほど中間決算にあわせ、27年3月期の利益予想を上方修正した。今年5月に発表した中期経営計画では、温室効果ガス削減に資する船底防汚塗料の供給などで世界トップの地位を不動のものとする目標を立てている。
カナデン <8081> [東証P]は1907年に設立されたエレクトロニクス専門商社で、来年に120周年を迎える。三菱電機 <6503> [東証P]が約21%を保有。FAシステム、ビル設備、半導体・デバイス、社会インフラの4事業セグメントで、ソリューション提案とコーディネートによる顧客対応を進めている。今期からスタートした新中期経営計画では、既存分野の拡充に加え、防衛、医療・介護など成長領域への展開を図る方針だ。29年3月期の財務目標はROE10%以上。DOE(株主資本配当率)4.5%を基準指標とし、機動的な自己株取得も含めて株主還元を強化する計画だ。旺盛なAI関連需要を受けて、半導体製造装置や受配電盤、電源設備などが伸びており、業績は堅調に推移している。
河合楽器製作所 <7952> [東証P]はピアノの世界的なメーカーで、1927年に創業。来年8月に100周年となり、特設サイトを公開している。ショパン国際ピアノコンクールなど数多くの国際コンクールにおいて「KAWAI」ブランドのピアノは公式ピアノとして採用。カワイ音楽教室は世界に広がる。世界で人口4位のインドネシアでは電子ピアノの生産能力増強に動いたほか、主要市場の北米でも販売体制の強化に取り組む。累進配当と総還元性向50%以上を継続する姿勢を示し、足もと0.5倍台にとどまるPBRの向上も目指している。
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