明日の株式相場に向けて=テスラ・エフェクトで自動運転に追い風吹く
きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比92円安の3万9364円と3日続落。下げ幅こそ100円未満だが安値引けとなった。朝方は米ハイテク株高と為替の円安進行を好感する形で高く始まったが買いは続かなかった。日米の金融政策決定会合を前に様子見ムードといえばその通りだが、特にそのビッグイベントの通過を、息を殺して待っているというふうでもない。
半導体関連セクターは総じて底堅い動きながら、アドバンテスト<6857>の急落がかなりのインパクトで市場関係者の視線を集めた。明らかな悪材料は見えていないが、一部では「海外機関投資家など法人筋の大口売りが出ている可能性が高い」(中堅証券ストラテジスト)とする。キオクシアホールディングス<285A>の新規上場をあすに控えた換金売りという見方が一つの理由に挙げられそうだが、半導体製造装置大手の中で同社株だけが一極集中的に売りの洗礼を浴びることに妥当性はない。半導体関連の最後の牙城だったアドテストへの売り浴びせは、積み上がった信用買い残の投げを誘発しやすい。信用取組に目を向ければ、レーザーテック<6920>や東京エレクトロン<8035>の方が信用倍率はアドテストよりはるかに高く、つまり需給関係は悪い。きょうは両銘柄ともプラス圏を維持したが、今後は改めて上値の重さが嫌気される可能性があり、その点は注意が必要となる。
鳴り物入りの上場となるキオクシアについても公募価格が1390~1520円の仮条件の上限ではなく、1455円で決まったということに同社株に対する需要の鈍さが反映されている。安く決まったことでセカンダリーでは人気化することも考えられるが、少なくとも半導体関連、特に主力銘柄については既に満腹状態まで買い漁ってしまったという現実があり、鮭の川登りのようにキオクシアが遡上することができるのか否か、先行きは極めて不透明である。
一つの救いは設計開発大手のソシオネクスト<6526>が突如覚醒したかのように戻り相場に突入していることだ。同業態の米ブロードコム<AVGO>が急騰したことに連動した形だが、多品種少量生産のカスタム半導体分野は成長性ありというマーケットの判断が新たな潮流を生んでいる。しかし、「半導体」というワードが看板にあるだけで十把一絡げに投資マネーがそこを目指す、という相場は終わったといえそうだ。
米国ではAI用半導体のシンボルストックとなっていたエヌビディア<NVDA>の株価が変調である。AIという大きなテーマは依然として健在としても、ハード系からソフト系に投資マネーがローテーションを始めている気配がある。「AIとの相性が良いIP(知的財産権)関連株の上昇波動はその流れを示唆する」(ネット証券マーケットアナリスト)という指摘も聞かれる。東京市場では任天堂<7974>が上場来高値を更新し、ソニーグループ<6758>も最高値圏で頑強な値動きを示しているのはそれを裏付ける。
このほか、米国発の流れを引き継ぐとすれば、量子コンピューター関連と 自動運転関連で当面マークが必要となる。米国株市場で自動運転関連ではテスラ<TSLA>の上げ足が強烈だ。トランプ次期米大統領を味方につけたイーロン・マスクCEOの戦略が奏功しそうである。日本国内に目を向けると、米アルファベット<GOOGL>傘下のウェイモが、ディー・エヌ・エー<2432>が出資する配車アプリ大手のGO(東京都港区)や日本交通と連携し、来年にも自動運転技術の実証を都内で開始すると発表した。自動運転の社会実装に向けた黎明期で、関連銘柄を物色する動きに発展する可能性は高い。付加価値化した地理情報システムで先駆するドーン<2303>が上値指向にあるほか、地図情報で群を抜くゼンリン<9474>も目先は底値もみ合いながら、早晩日の目を見るタイミングが訪れそうだ。このほか、自動運転開発用ソフトを手掛けるヴィッツ<4440>の押し目や、低位株ではモバイル端末のソフト開発から次世代モビリティ分野に重心を移すシステナ<2317>に注目。
あすのスケジュールでは、7~9月期の資金循環統計、11月の貿易統計のほか、午前中に1年物国庫短期証券の入札が予定されている。大引け後に11月の訪日外国人客数が開示される。海外ではタイ中銀、インドネシア中銀の政策金利発表、11月の英消費者物価指数(CPI)、11月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)、11月の米住宅着工件数のほか、FOMCの結果発表及びパウエルFRB議長の記者会見に市場の関心が高い。(銀)
株探ニュース