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ハウスコム Research Memo(5):DXや、収益源の多様化・継続化を軸に「アフターデジタル」の不動産会社へ

特集
2021年6月17日 15時35分

■中長期の成長戦略

1. 新成長戦略

ハウスコム<3275>は2021年5月に新成長戦略について発表した。同社はこれまで、既存事業の自然成長をベースとした中期経営計画を推進してきた。しかし、コロナ禍を通じて需要変動時のショック吸収力の乏しさが明らかとなった。そこで、新成長戦略として、新しい事業ポートフォリオへの転換と成長の加速に向けて、「事業領域拡大による収益構造の転換」「既存事業分野の競争力強化等」「店舗数増加による規模の拡大」「グループ経営を前進させるための内部体制の強化」の4施策を推し進める。なお、新成長戦略に関する数値計画については、アフターコロナの状況・回復ペース、宅都のPMIの進捗、新規事業の具体像などを反映させ、2021年中に公表する予定である。

コロナ禍をきっかけに事業運営の方針を変える企業は多いものの、事業ポートフォリオの見直しや収益構造の変化といった抜本的なメスをスピーディに入れられる企業は少ない。従前、柔軟かつ機動的な経営方針を貫いてきた同社だが、今回のコロナ禍を背景とした事業環境の変化に対しても効果的な方針変更が見て取れた。過去からのコアな強みが発揮されていると同時に、より強い収益基盤への期待を高める状況となっている。

2. アフターデジタルを見据えた賃貸不動産DXの未来像

同社は世の中のDXが加速し、デジタル・ディスラプター(デジタルテクノロジーを活用することで、既存の業界の秩序やビジネスモデルを破壊するプレイヤー)の影響による消費者行動の変化など、5年後を見据えた想定をしている。具体的には、「業界の壁が崩壊」「体験が軸になる」「データを制する者が未来を制す」といった風潮である。

これらを踏まえ、テクノロジーを活用して社内効率を向上させながら、バリューチェーンを拡大していく。その一環として、同社は基幹系システムの刷新を進めている。将来的には基幹系データベースについて、各データベースを活用の目的に応じてAPI連携したサーバの設計、構築、運用を計画している。

そのほか、多様な取り組みも実施している。2021年3月期には下記の取り組みを進めた。

(1) 来店しなくても部屋探しできる「オンライン部屋探し」の提供

(2) IT重説(ITを活用した賃貸借契約における重要事項説明)の利用促進、次世代型IT重説の社会実験への参加

(3) 賃貸更新契約の電子化浸透(2021年3月導入、実績7,000件以上)

(4) 賃貸新規契約の電子申込・電子契約手続きの導入

(5) 業務効率化RPAの導入

(6) アフターデジタルに向けたノウハウの蓄積(オンラインとリアルの垣根ない利用スタイル)

これらの取り組みにより、サービスの利便性、営業面での生産性、事務面での効率性、オンラインとリアル間の効率連携といった多方面で改善が進んだ。

同社は上記のようにグループ内でのIT活用が盛んなほか、社外では業界内でのDX普及を主導するなど、アフターデジタルを見据えた長期目線での活動に積極的である。同業他社に先んじてあらゆる取り組みを進めることは、リスクをはらむ活動ではあるものの、先行者としてノウハウを蓄積できるほか、成果に結びついた時のリターンも大きく、長期的には同社の独自性、競争優位性をさらに高めるものと弊社は予想する。

3. 「住まいのサービス業」を核とした収益源の多様化

同社はアフターデジタルを見据え、「最高の顧客体験」の提供を目指している。それに向け、現状の「場」の仲介業(=マッチング)を手掛ける企業から、「ライフスタイルをまるごとデザインする企業」へ、フィールドワーカー(=その場に特化した仲介業者)から、エッセンシャルワーカー(=日常生活を送るために欠かせない仕事を担う人)へ、といった構想を掲げている。より具体的にいえば、これまでは転居者の入口と出口の時点でのみ接点を持っていたが、今後は生活のあらゆるポイントでサービスを提供することで、「売り切り収入モデル」から「リテンション収入モデル」への拡張を図る。これは顧客目線でいえば、生活のあらゆるポイントで同社サービスの価値を体験すること(バリュージャーニー)につながり、同社との関係性はより強まる。

直近では、2020年7月に家主・入居者の双方を一括でサポートする新サービス「ハウスコムスマートシステム」を上市し、スマート内見システム、夜間医療サービスなども導入した。さらに、家主向けにはオンライン調停サービス、入居者向けには緊急駆け付け、生活トラブル解決「MAMORAS」をリリースした。

また、2020年10月には同社として初の不動産売買の拠点として川崎センターを設立した。それまでは不動産の売却・取得の要望を受けた際には提携他業者に送客していたが、今後は内製対応を進めることができる。加えて、2021年2月には外国籍の顧客をメインターゲットにした新スタイル店舗「OUCHI.com新宿」をオープンした。このように、収益機会の多様化は着実に進んでおり、トップダウンの戦略がボトムの方で続々と具体化されている。

同社は5年後をめどに新規事業の構成比で15%以上を収益モデルの目標として設定している。自社開発の新サービスのほか、既述の通り異業種企業との連携やM&Aを通じて新サービスを拡充する。こうした取り組みを通じて、同社の収益に安定性が備わってくるとみられ、投資家目線でも低リスクで魅力的なリターンを計上していくと弊社は予想する。

4. ESG推進を通じた多様な働き方・多様な人材の受容、人材「総力戦」による組織力の向上

同社はESGを軸に、「多様な働き方が可能で多様な人材が力を発揮できる企業でなければ未来はない」との考えのもと、多様な働き方・多様な人材の活用を通じ、脱「男性中心・長時間労働」への取り組みを進めている。具体的には、育児・介護を支援する様々な制度の導入や、障がい者雇用の促進、その他様々な取り組みを実践している。

同社の成長戦略を推し進めるうえで、社員一人ひとりのヒューマンスキルの向上と人的資本の強化は重要である。上記のような働き方と人材の多様性を受容する施策は、従業員満足度を高めてモチベーション・モラールの向上につながるとともに、様々な人材が集まり活躍することを可能にする。男性社員の長時間労働に依拠することなく、いわば多様な人材が集った総力戦として、組織力を高め、成長の加速を支えるようになる道筋を同社が描いていることが伺える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 石津大希)

《YM》

提供:フィスコ

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