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ナノキャリア Research Memo(2):創薬バイオベンチャーとして着実に進化・成長(1)

特集
2021年7月13日 15時12分

■会社概要

1. 会社沿革

ナノキャリア<4571>は、東京大学 片岡一則(かたおかかずのり)名誉教授、東京女子医科大学 岡野光夫(おかのてるお)名誉教授らにより発明された「ミセル化ナノ粒子技術」をDDS製剤に応用し事業化する目的で、1996年に設立されたベンチャー企業である。片岡氏および岡野氏が研究活動をしていたアメリカのユタ州ではDDSが盛んに研究されており、発明したミセル化ナノ粒子技術を世界に向けて日本から発信するために新会社が設立された。2000年に研究所を設置し、本格的に実用化に向けた研究活動が開始された。

同社は東大TLOからミセル化ナノ粒子の基本特許のライセンス契約を基に、日油<4403>とのポリマー供給契約、日本化薬とのパクリタキセルミセルの共同開発及びライセンス契約を締結してきた。また、自社での臨床開発も進め、パイプラインの創出を行ってきた。同社は2008年3月東京証券取引所マザーズ市場への株式上場を果たしたが、同年9月のリーマンショックにより、同社の株価も低迷する期間が続いた。リーマンショック前後は、日本では投資が著しく冷え込んだ時期でもあり、いずれのベンチャー企業もそうであったように、研究開発に必要な資金調達が困難であった。同社も上場時の調達資金が約6億円と非常に低い水準となり、それまで行っていた欧州でのNC-6004の開発を次ステージへ展開することが困難となり、開発戦略の変更を余儀なくされる。同社は、すぐにアジア展開に目を向け、台湾の製薬会社であるOrient Europharma Co., Ltd.(以下、OEP)とアジア地域におけるNC-6004ライセンス契約(共同開発および投資による資金調達など)を締結することにより、開発を着実に進めることにした。

バイオベンチャーは資金不足による開発延滞や中止などが懸念されるが、同社は2012年にウィズ・パートナーズ(株)からの資金調達及び信越化学工業<4063>から第3者割当増資と材料製造技術に関する共同研究契約を締結し、2013年にはグローバルファインダー(主幹会社JPモルガン<JPM>)がアレンジャーとなり、欧米・アジアの機関投資家から約90億円の資金調達を行い、パイプラインの開発を飛躍的に自社で推進することに成功している。当時、米国型の自社プラットフォーム技術で創薬を行う数少ない日本企業として、パイプラインの開発戦略や創薬の裾野の広がり方が海外の機関投資家に訴求しやすかったと言える。また、2012年にiPS細胞の研究により京都大学の山中伸弥教授がノーベル賞を受賞したことでバイオベンチャーブームが再燃したこともフォローの風が吹いた。

このころから、がん治療薬の研究や臨床開発経験者など幅広い人材を中途採用できるようになり、自社開発として欧米での臨床開発もスタートした。また、2015年に松山社長が当時CFOとして同社に参加したころから、併行してM&Aや提携を進める方針を強化し、グローバルで最先端と言われるパイプラインの導入なども進められた。2017年11月にイスラエルのVascular Biogenics Ltd.(以下、VBL)からライセンスインした遺伝子治療薬は、国際第III相臨床試験段階(プラチナ抵抗性卵巣がん)にある。既に75%の患者登録が米国などの海外で完了している試験に日本が途中から参画できることになり、開発期間の大幅な短縮(通常10年以上が数年程度にまで短縮)とともに、開発コスト(通常数百億が十数億程度)が削減できるなど、早期収益化に貢献する製品として導入している。また、不妊治療や耳鼻科領域における製品の導入も進め、ミセル化ナノ粒子の実用化を中心としながらも、早期に経営基盤を安定化する画期的な製品導入も推進している。

2. 事業概要

抗がん剤の開発を中心にパイプラインの拡充などを進めていたが、同社とアキュルナとが経営統合し、技術、パイプラインなどを相互に補完・融合することにより、格段に製品開発力が強化され、事業領域も次世代医薬品の中核となる核酸医薬領域へと広がりを見せている。

(1) 製品の承認取得とライセンスアウトの加速による早期収益化

同社は、後期臨床ステージにあるパイプライン3製品(VB-111/卵巣がん、ENT103/中耳炎、NC-6004/頭頸部がん)に重点特化している。海外で開発が進む遺伝子治療製品VB-111は、プラチナ抵抗性卵巣がん対象で、有効な治療法がない患者に対し新たな治療法を提供するものであり社会的な意義が高い治療薬である。中耳炎対象のENT103は耳鼻科領域では四半世紀ぶりの本格的な国内治験による新しい治療薬として期待されている。NC-6004は、がん治療の中心となった免疫チェックポイント阻害剤(ICI)とのコンビネーションで開発を進めており、ICIとの併用薬は製薬企業が高い関心をもつ領域であることから、結果が出次第、ライセンスアウトを進める。VB-111、ENT103の承認取得/販売及びNC-6004のライセンスという形で、2024年3月期までに収益化を目指す考えである。

(2) 新しいモダリティ技術でパイプラインを拡充

中長期には、自社技術を核とし、核酸医薬のような次世代モダリティ(治療手段)などグローバルで見ても最先端となる治療薬を創製し、新たな収益の柱に成長させていく。その一環として、2020年にメッセンジャーRNA(mRNA)医薬などの核酸医薬を手掛けるアキュルナを吸収合併した。mRNA医薬は新型コロナワクチンとして世界的に大きな注目を集めた新しい創薬技術である。アキュルナの核酸医薬の創薬力やRNA専門の優秀な人材と同社の臨床開発力を融合し、相互の強みをもとに核酸医薬を第2の柱に育てる。

(3) M&Aや提携を積極的に推進し、収益化に向けて新しい発想で医薬品市場を切り開く

M&Aや提携は、今後もパイプラインと技術基盤の拡充を目的に積極的に進める方針である。VB-111のように後期ステージにあり、市場規模的に大手製薬会社が手をつけにくい最先端技術製品を発掘し、パイプラインとして組み入れる。また、組織再生を促進する医療の開発パートナーであるアクセリード(株)の傘下にある革新的な技術をもつ企業などとの協業やその幅広いネットワークの活用、大手製薬会社との共同研究開発など、オープンイノベーションにより多様な革新的技術を取り込むことで、創薬事業の推進と拡大を進めていく。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水啓司)

《YM》

提供:フィスコ

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