AI産業革命に適応し進化へ、持続的成長の「老舗企業」銘柄を追う <株探トップ特集>
―世界の「100年企業」の4割が日本に、激動の時代に「匠」の技術が真価発揮―
わが国は「老舗企業」大国である。老舗企業が今日まで存続しているのは、時代とともに、常に革新してきたからだ。「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き残るのでもない。唯一生き残るのは、変化に最もよく適応した者である」という名言と共通する真理だろう。現在、AI(人工知能)革命を始め、社会は大きな変革期を迎えている。こんな時こそ、老舗企業が劇的に変化を遂げる時だ。そこで今回は、社会の変化に対応し、新たな成長路線をひた走る“超老舗企業”にスポットを当てる。
●伝統技術を継承! 建設業界は老舗企業の宝庫
東京商工リサーチの2025年公表の調査によると、4万9000社超の企業が26年に創業100年を超える「100年企業」だという。別の調査によると、これは世界の「100年企業」のうち約4割を占め、200年以上続く企業も欧州各国をはるかに凌ぐ数だという。日本に老舗企業が多い理由は、過去に植民地化されたことがないという地理・歴史的条件に加えて、所有と経営を一体化した「家業」制度、短期的利益ではなく事業の永続を重視する日本的経営風土などが挙げられる。
世界最古の企業は、飛鳥時代の578年創業の金剛組とされている。聖徳太子が招聘した四天王寺の宮大工が大阪で創業、長らく家業として存続してきた。木造建築需要減少や競合激化、平成不況によって経営危機に陥ったが、2006年に高松建設(現・高松コンストラクショングループ <1762> [東証P])の傘下に入り、木造社寺建築の専業として再出発した。高松グループは、M&A(合併・買収)によって事業規模を拡大してきたが、07年には同じく社寺建築で歴史のある中村社寺(創業970年)も傘下に収めている。老舗企業が持つ「匠」の技術を、木造を含む建築工事、海洋を含む土木工事、管理・流通を含めた不動産など多様なグループ各社の事業に生かし、シナジー効果が発揮できれば、PBR(株価純資産倍率)1倍割れからの脱却も可能かもしれない。
同じく建設会社だが、国内証券取引所上場企業の中で業歴が最も古いとされるのは、松井建設 <1810> [東証S]だ。安土桃山時代の1586年に加賀前田家御用として城郭普請に従事したのが始まりとされる。以後、長らく北陸を地盤としてきたが、1923年の関東大震災後に東京に進出、社寺建築だけではなく一般建築へと業容を広げた。創業450年の2036年に向けて「規模の拡大ではなく、質的成長」を掲げ、事業基盤拡充と利益率向上を打ち出した。ROE(自己資本利益率)6%回復、その後8%以上、配当性向50%程度、PBR1倍以上を中期的な目標としている。足もとの業績を見ると成果も上がりつつあるようだ。
住友金属鉱山 <5713> [東証P]は、安土桃山時代の1590年に京都で銅製錬を開始(屋号は泉屋)、1690年に愛媛・別子銅山を開坑、以後は住友財閥の財政的基盤を形成する事業となった。現在は、銅、ニッケル、金の資源事業、それぞれの製錬事業、電池や機能性部品などの材料事業を展開するが、資源事業が収益・利益の柱となっている。銅や金などの非鉄金属市況は高値圏で推移しており、為替も円安基調であることから、足もとの業績は良好だ。これまで苦戦してきた電池材料の立て直しは引き続き課題だが、AIデータセンター向けに機能性材料が伸びており、材料事業全体ではカバーできている。また、資源事業では鉱山の操業に伴って埋蔵量が減少していくという特徴から、新たな権益確保も中期的な課題だが、同社は菱刈鉱山という高品位の金山を100%保有していることが強みになっている。
●グローバル企業となった食品・薬品業界の老舗企業
食品の老舗企業で真っ先に挙げられるのが、醤油最大手のキッコーマン <2801> [東証P]だろう。同社のルーツは1661年に千葉・野田で始まった醤油醸造業。現在では海外にも積極的に事業展開、26年3月期連結売上収益の78%、同事業利益の90%を海外事業が占めるに至っている。1957年に進出した米国では、現地生産にも力を入れ、多くの米国人にとってキッコーマンという社名は醤油(ソイ・ソース)の代名詞と言われるほど身近な存在だ。また、過去に買収した米国企業を母体として、日本食材を中心とする東洋食品の卸売事業にも進出。国内事業の規模は、海外醤油、海外卸売に続く3番目の位置づけでしかない。今後の成長ドライバーも海外であり、豪州や米国から、欧州、アジア、中国、南米、インド、アフリカなどへの事業展開を強化している。社歴360年を超えて、なお成長が続く見通しだ。
小野薬品工業 <4528> [東証P]は、江戸中期の1717年創業、薬品業の上場企業としては最古の歴史を誇る。和漢薬の販売から医薬品の製造に事業展開、現在は、医療用医薬品の専業だ。27年3月期の売上収益構成は、製品商品59%、ロイヤルティ・その他41%の見込みで、製品商品の海外売上とロイヤルティを足した海外売上高比率は47%に達する。足もとの四半期業績は減収・増益、一部薬品の共同販売契約終了によって売上収益は減少したが、関連費用の減少とロイヤルティの増加が寄与した。中期的な課題は、主力製品であるがん免疫療法薬オプジーボの特許が2031年に切れる、いわゆる「パテント・クリフ」への対応だが、がん、神経、免疫・炎症の3領域に特化した研究開発体制によってパイプラインは充実しつつある。300年の歴史の中で、あと5年ほど待つことができれば、更なる成長が見えてくるかもしれない。
●ラピダス効果も期待される長瀬産
長瀬産業 <8012> [東証P]は、江戸末期の1832年に京都で創業した。紅花などの天然染料や布海苔、澱粉などが主体だったが、明治に入って人造・化学染料に商材を広げ、戦前の段階でフランス、イギリス、アメリカ、中国に出張所を構えた。戦後は海外大手化学メーカーの代理店として、生産拠点の合弁相手として、製造と研究の機能を持つ専門商社となった。現在の事業セグメントは、機能化学品や樹脂などを扱うマテリアル、半導体・電子材料などを扱うエレクトロニクス、食品・医薬・ヘルスケアなどを扱うライフサイエンスの3つに分かれている。足もと業績は好調、化学品の市況上昇やAI半導体関連の伸長などが寄与した。現行中期経営計画では、半導体、フード、ライフサイエンスの3分野に重点投資、ROE9%以上を目指している。なお、半導体関連では、2027年に量産開始を計画している国策半導体メーカー、ラピダスの材料輸送に関する取りまとめ業社の1社に指定されており、本格稼働後には収益寄与も期待できよう。
YUASA <8074> [東証P]は、江戸初期の1666年に京都で炭屋として創業、間もなく打刃物商に転じた。近代に入り、洋金物の初国産化、創業家による蓄電池製造会社の設立などを経て、機械や建材などへと事業領域を拡大。現在は、「機械と住宅の専門商社」として、産業・工業機械や住設・建築資材を主力に建設機械やエネルギー関連にも業容を広げている。足もと業績は堅調、ほぼすべてのセグメントで増収・増益となった。創業360年を迎えた今春にはユアサ商事から社名を変更し、次の10年に向けた長期ビジョンを策定、資本コストを意識した収益性・成長性・効率性の追求、既存市場深耕と新市場開拓、海外事業強化などを目標に掲げている。
●Jフロントは経営基盤強化を継続
J.フロント リテイリング <3086> [東証P]は、2007年の設立だが、母体となった松坂屋は1611年に名古屋で創業、同じく大丸は1717年に京都で創業、ともに呉服店としての長い歴史を持つ。主力の百貨店事業では屋号はそのまま営業、パルコ買収によるショッピングセンター事業、銀座シックスなどを擁するデベロッパー事業などに展開する。足もとでは百貨店での外商やインバウンド、渋谷パルコなどが伸びている。銀座、渋谷に続き、名古屋栄、大阪心斎橋、神戸元町、福岡天神など重点エリア内の開発計画を進め、継続的に投資を行う方針だ。更に、グループ経営基盤の強化に続き、「価値共創リテーラー」を標榜、ROE10%以上を見据えた新中期経営計画が早ければ今秋には発表される見通しだ。新たな事業展開に注目したい。
綿半ホールディングス <3199> [東証P]は、安土桃山時代の1598年に長野・飯田で綿屋として創業した。近代に入って金物店、金属加工・工事、総合小売へと事業領域を拡大。26年3月期の売上構成は、小売57%、建設37%だが、セグメント利益構成は、小売34%、建設48%で、他に貿易事業も手掛けている。小売事業では、長野県内を中心にスーパーセンター、ホームセンター、ドラッグ、インターネット通販にも展開する。建設事業では、鉄骨加工工場を自社で保有、金属屋根工事や自走式立体駐車場工事などに強みを持っている。貿易事業も含めて、小売の第6次産業化を推進、地産地消に加えて直営農場を運営、エネルギーや観光など地方創生にも注力している。14年の上場以来、M&Aによって業容を拡大しており、今期業績は3期連続の増収、5期連続の営業増益を目指している。
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