明日の株式相場に向けて=「道路大陥没」対策が喫緊の国策テーマに
きょう(19日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比105円安の3万9164円と3日ぶり反落。前日の欧州株市場はリスクオンの流れがしぶとく続いており、独DAXは最高値を更新したほか、代表的な欧州株指数であるストックス600も最高値街道を走っている。米国株市場も機関投資家が重視するS&P500指数が史上最高値を更新した。相対的に出遅れが顕著な日本株もキャッチアップを狙いたいが、今は日銀の追加利上げの前倒しを織り込みに行くタイミングにあり、やみくもに上値を買い進むのは蛮勇に等しい。日銀の高田審議委員の宮城県金融経済懇談会でのタカ派寄り発言は、おおむね想定されていたとはいえ、上昇が止まらない新発10年債利回りを横にらみに、足もとではボックス圏半ばで売り物をこなすのが精一杯という印象であった。
個別では、レナサイエンス<4889>からサンバイオ<4592>とバトンを引き継いだ流れの延長でバイオ関連の一角などに動意が相次ぎ、きょうは継続注目の免疫生物研究所<4570>が値を飛ばしたほか、キャンバス<4575>なども決算通過で目先アク抜け感から強さを発揮した。現在は、バイオに限らずちょうど決算プレーによる丁半相場が終了したところであり、テーマ買いの動きが再燃する時間帯だ。ただ、これまでの半導体関連や防衛関連といった王道テーマに戻るには、何か政治的もしくは経済的な切り口で新たな手掛かり材料が必要となる。相場は常に新しいインパクトに敏感である。それを念頭に改めて俯瞰すると、目先最も社会的に注目度の高いテーマという点では、やはり国民生活の安全を脅かすような事象となった埼玉県八潮市の道路陥没事故が挙げられる。
今回の陥没事故によって気付かされたのは、大規模な下水道の老朽化問題が、単なる日常生活における利用面で支障をきたすという「不便」さにスポットが当たるのではなく、陥没事故にリアルタイムで遭遇することへの恐怖が半端ではないということがある。まさに偶発的ではあっても、これが本当に極めて稀なことなのかどうかは現状では分からない。なぜなら、下水道の劣化は八潮市の県道における一交差点の問題にとどまるはずもないからだ。
時計の針を戻すと1月28日に陥没事故が起こり、翌29日には橘官房副長官が記者会見で、国土交通省が全国の下水道管理者に緊急点検を要請したことが報じられている。起こってからでは遅い。全国レベルで水道インフラの早急な点検や補修など「予防保全」の動きが、国家プロジェクトレベルで必要といっても大げさではなく、この記者会見はその第一歩を踏み込む号令となったと考えてもよい。放置すればドライバーや歩行者にとって、日常的に道を行く際に欄干のない橋を目隠しで進むような怖さがある。先延ばしする猶予もない。既に耐用年数を超過している管路は380キロメートルに及ぶとされ、しかもその規模は今後20年間で12倍に膨らむという試算がなされている。それこそ米国に1兆ドルの資金を投下する前に、政府主導で資金を投じて対処すべき国内案件である。
株式市場でも関連銘柄への投資資金流入が波状的に続いており、次第にその資金の流れが太くなってきた感じも受ける。直近では日本ヒューム<5262>がマドを開けて買われ、上場来高値を更新。また土木管理総合試験所<6171>は、きょうは長い上ヒゲを形成したものの、一時ストップ高まで買われる場面があった。NJS<2325>やオリジナル設計<4642>、日水コン<261A>なども値を飛ばしている。
今後、関連株物色の裾野が広がるとして目を向けたい銘柄としては、まずベルテクスコーポレーション<5290>だ。マンホールやヒューム管などのコンクリート製品を手掛けるが、下水道整備向け高付加価値製品を手掛けていることがポイント。また、電線地中化関連で大相場を出した実績があるイトーヨーギョー<5287>や、水処理機器の製造販売を手掛け、上下水道関連が売り上げの9割超を占める水道機工<6403>なども要マークとなる。
あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約、1月の主要コンビニエンスストア売上高など。また、東証グロース市場にフライヤー<323A>が新規上場する。海外では2月の中国最優遇貸出金利が開示され、米国では2月のフィラデルフィア連銀製造業景気指数が発表される。このほか、週間の米新規失業保険申請件数、1月の米景気先行指標総合指数などにマーケットの注目度が高い。FRB高官の発言機会も相次ぎ、バーFRB副議長、クグラーFRB理事の講演が行われる予定。(銀)
株探ニュース