明日の株式相場に向けて=「国策×半導体」で導き出される銘柄群
週明け26日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比82円安の3万2698円と3日続落。週末までの直近2営業日で日経平均は800円近い下落をみせていたこともあり、きょうは値ごろ感からの押し目買いが入り、朝方390円ほど下値に突っ込んだ後は急速に下げ渋った。その後は強弱観が錯綜するなかプラス圏とマイナス圏を行ったり来たりの千鳥足となったが、前週末終値近辺ではヤレヤレ売りもどきのポジション解消で上値は重かった。結局売り圧力が勝り、日経平均は下落して取引を終えている。
前週から相場全体の流れが変わったようにも見える。ここ最近は世界的なリスクオフモードであり、欧州株市場では独DAX、仏CAC40、英FTSE100がいずれも前週末まで5日続落、米国株市場でもNYダウがこれに歩調を合わせるように同じく5日続落となっていた。海外投資家のリスク許容度も当然ながら低下する理屈で、いかに政治的な背景から日本株の見直し買いが急展開したとはいえ、いったん足を止めて周りを確認する作業は必要となる。
週間ベースで前週の日経平均は実に11週ぶり下落となったのだが、約2カ月半にわたり上げ続けた相場であり、売り方はお手上げである。しかし、こういう順風満帆の状態で上値を追っている時の方がバランスを崩しやすい。強弱観が対立していれば、下値でショートポジションの買い戻しが入るが、売り方退散の後ではそれが見込めない。これまで我慢していた利食い急ぎの動きが顕在化すると、仕掛け的な動きがなくても売りに拍車がかかる。
足もとロシアの地政学リスク(ワグネル社の反乱)が取り沙汰されたが、これは相場の買い手控え材料としては目新しいが、今のところ火種がくすぶる程度。欧米株が目先調整色を強めている理由は、これまでとあまり変わり映えのしない2つの経済要因によるものだ。つまり、1つは各国中銀による金融引き締めが長期化することへの警戒感。これはインフレの粘着性が改めて意識されている。そして、もう一つは最近の欧米や中国の景気減速を示唆する指標が投資マインドに影を落としている。この2つのベクトルが逆方向に引っ張り合った状態になればなるほど、スタグフレーションという株式市場にとって最も厄介なステージが意識されやすくなる。
そうしたなか、きょうは半導体関連株にこれまでは見られなかった鮮烈なコントラストが生じた。ソシオネクスト<6526>は急速な調整で一時2万円大台を割り込むと同時に25日移動平均線も下回った。また、生成AI関連の半導体製造装置ツートップ銘柄であるアドバンテスト<6857>とディスコ<6146>の2銘柄も、ソシオネクスほど下げ圧力は強くはないものの売りには抗えず下値を試す展開を強いられ、25日線近辺の攻防となった。こうなると、半導体関連は全面安を思わせるが、今度は入れ替わりで出遅れていた半導体材料 を手掛ける銘柄群に怒涛のごとく資金が流れ込む形となった。
JSR<4185>を政府系ファンドの産業革新投資機構が約1兆円で買収するとの報道が、電撃的なインパクトを与えた。もはや、日本の半導体産業は防衛関連と同じく、国策で徹底フォローせよ、という打倒中国を念頭に置いた米国の意向に沿ったレールが引かれているようにも思える。きょうは大阪有機化学工業<4187>、東京応化工業<4186>、トリケミカル研究所<4369>の半導体材料メーカーが値を飛ばした。国策×半導体という構図を考えた場合、九州のTSMC熊本工場や北海道のラピダス千歳工場の連想が働く銘柄は要注目となる。例えば、継続マークしてきたティアンドエス<4055>はその一角。熊本工場だけでなく最先端半導体の千歳工場でも活躍期待が大きい。また、ラピダス関連という切り口では、北海道地盤の建材会社クワザワホールディングス<8104>も穴株妙味を内包している。
あすのスケジュールでは、1~3月期の資金循環統計が朝方取引開始前に開示されるほか、午前中に20年物国債の入札が行われる。また、IPOが3社予定されており、東証スタンダード市場にエリッツホールディングス<5533>、東証グロース市場にクオリプス<4894>、札証にGSI<5579>が新規上場する。海外では米国で重要指標が相次ぎ、5月の米耐久財受注額、5月の米新築住宅販売件数、4月のS&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、6月の米消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)などにマーケットの注目度が高い。(銀)
最終更新日:2023年06月26日 17時52分
株探ニュース