明日の株式相場に向けて=全体相場一服でも個別株物色の宴は続く
週明け8日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比131円安の4万780円と続落。前週末時点のヒアリングでは、今週は日経平均の上値追いが止まると予想する市場関係者は少なくなかった。名実ともに7月相場入りとなった前週は、週末こそ1円安と足を止めたが反落と呼べる類いのものではなく、週間ベースでは1300円以上も上昇した。ショートポジションを取っていた海外ヘッジファンドの買い戻しが利いた形だが、そのアンワインドの動きも一巡した気配がある。
そのなか、今週はきょうと明後日(10日)に7月の恒例イベントともいえるETF分配金捻出に伴う売りが合計1兆3000億円規模で顕在化する。となれば、ここはとりあえず嵐が過ぎるまで雨宿りしようかという気分になるのが投資家心理だ。前週末の米国株市場は相変わらずナスダック総合株価指数とS&P500指数の両指数が強く、揃って史上最高値を更新したが、この最高値街道を併走する姿にも目が慣れてしまった。日本株の上げ足はナスダックやS&P500よりも更に勾配が急である。米株高に引っ張られて云々という状況ではなさそうだ。個別株戦略にも知恵が求められる場面である。
個別株では日経平均やTOPIXの上昇に連動しやすい主力大型株が注目されているが、本来ならば相場の花形である半導体セクターに視点を合わせるのが正攻法。ただ、半導体製造装置大手では、固有の思惑とはいえレーザーテック<6920>が崩れ足となっていることが大きく、他の銘柄についてもやや疑心暗鬼に苛まれるケースが出てきそうだ。6月18日以降、目を見張る陽線の連打で存在を輝かせたアドバンテスト<6857>だったが、モメンタム相場で快走したものの、ふと立ち止まるとPERが70倍を超えており、上昇一服となる可能性も否めない。しばらく株価が冴えなかったソシオネクスト<6526>は目先調整一巡感が出ているものの、手掛かり材料に事欠くなか、ここが買い場かどうかは判然としない。
半導体主力銘柄からいったん離れて大型株を俯瞰してみる。例えば炭素繊維世界トップの東レ<3402>は25年3月期に業績急回復が見込まれていることで、再び実需買いが入り始めた感触。また、データセンター向けばかりに視線が向いていた半導体関連にも変化が出ている。最近の電子部品株人気は、スマートフォンのエッジAI搭載に伴い買い替え需要を喚起するというシナリオが原動力となっている。スマホ生産プロセスで必須となるロボドリルで圧倒的なファナック<6954>などもマークしておいて面白そうだ。
一方、中小型ではサイバーセキュリティー関連に元気な銘柄が多い。銘柄によって跛行色はあるものの、政策的な後押しを拠りどころに総じて投資資金の流れ込むルートが確立されているように見える。6月19日に紹介したFFRIセキュリティ<3692>やサイバートラスト<4498>はその後順調に上値追いを続けているが、依然として上値余地は十分残されていると思われる。目先の押し目を狙っていきたい。このほか、5月上旬のマド開け急伸後、異色の右肩上がりチャートを継続しているイー・ガーディアン<6050>などにも目を配っておきたい。ただし、参戦する際にはロスカットルールを自らに課しておく。強い銘柄につくのは黄金セオリーだが、流れが変わったと感じた時に間髪を入れず降りる勇気は必要。これはすべての「強い株」に共通する。
小型株の一本釣りでは、まずノムラシステムコーポレーション<3940>。DX導入・運用支援という時流に乗る銘柄だが、何と株価は100円台。これは株式分割を繰り返したことによるものだが、週足チャートでは綺麗な三角もち合いを形成している。また、大規模病院向けを主力とする医療用汎用ファイルシステムの最大手であるファインデックス<3649>も医療DX関連の有望株で面白い。
あすのスケジュールでは、6月のマネーストックが朝方取引開始前に日銀から発表される。また、午前中に6カ月物国庫短期証券の入札と5年物国債の入札が行われる。午後取引時間中には5月の特定サービス産業動態統計が開示。また、引け後に発表される6月の工作機械受注額(速報値)にも関心が高い。このほか、債券市場参加者会合が10日までの日程で開催される。海外では特に目立ったイベントはないが、FRB高官の発言機会が相次ぐことで、関係者の注目を集めている。この日の日本時間夜にFRBのバー副議長が講演を行うほか、日本時間10日未明にFRBのボウマン理事が講演を行う予定となっている。(銀)
株探ニュース