【杉村富生の短期相場観測】 ─何だこれは? 9600兆円対400兆円!
「何だこれは? 9600兆円対400兆円!」
●企業は変わった、次は国民の意識改革を!
改めて述べるまでもないが、日本人は極端にリスクを嫌う。明治以来の“伝統”である。すなわち、「お金に働いてもらう」との意識が欠けている。なにしろ、個人金融資産(2121兆円)のうち、53%がほとんど利息を生まない現金・預金となっている。株式・投信の比率は19%にすぎない。これでは相対的に貧乏になるのは当然だろう。
半面、アメリカの個人金融資産は114.3兆ドル(約1京7145兆円)だ。うち、株式・投信のウェートが56%もある。金額ベースでは9600兆円、日本(約402兆円)の24倍に達する。この差は大きい。修復が不可能な状況になっている。しかし、心配はしていない。1000兆円の現金・預金が動き始めている。
企業は変わった。増配、自社株買い、株式分割、M&A、賃上げラッシュがそうだが、政策投資(持ち合い)解消、親子上場の廃止が急ピッチで進みつつある。トヨタ自動車 <7203> [東証P]はグループ企業の売却を急いでいる。日立製作所 <6501> [東証P]は“日立”社名の子会社を激減させた。これが外国人の評価につながっていると思う。
損害保険大手4社は政策保有株式(計6.5兆円)を数年かけて、すべて売却する。これは保険金の支払い能力を示すソルベンシー・マージン比率の改善につながる。もちろん、事業投資、株主還元の原資になるとともに、利益水準を上昇させる。一方、需給は悪化するが、これは持ち合い企業双方が自社株買いを絡め対応可能と考えている。
三菱商事 <8058> [東証P]は日本KFCホールディングス <9873> [東証S]の全保有株式を売却する方針を明らかにした。京成電鉄 <9009> [東証P]はオリエンタルランド <4661> [東証P]の株式売却の準備を計画しているらしい。やはり、資本効率の改善を狙ったものとの見方ができる。
●1株利益は4倍になったが、PERが4分の1に!
全般相場については急騰の反動があろうが、半導体関連セクターを中心に、物色意欲は旺盛だし、外国人が猛烈に買っている。それに、再三指摘しているように、日経平均株価が1989年末の水準にやっと並んだばかりだ。当時に比べ1株利益は4倍になったが、PERとPBRは4分の1に低迷している。
言うまでもない。PERとPBRは需給、人気の影響を受ける。その需給が改善し、人気が復活してきた。PERとPBRは間違いなく上昇する。現在の日経平均株価の1株利益は2365円(今期予想)だ。来期ベースでは2552円と試算されている。来期ベースの1株利益を世界平均(MSCIワールド)並みに買うと、4万4000円絡みの水準になる。
いずれにせよ、日本市場のラリーは始まったばかりである。それと、物色範囲の広がりは個人投資家にはありがたい。アメリカ市場では肥満症治療薬開発のヴァイキング・セラピューティクス<VKTX>が急騰、ビットコイン(暗号資産)が約2年3カ月ぶりに6万ドルを突破した。日本市場ではペプチドリーム <4587> [東証P]が久々に好人気である。
ジャパン・ティッシュエンジニアリング <7774> [東証G]、DNAチップ研究所 <2397> [東証S]が急動兆だ。日米ともに、バイオベンチャーが出直りの気配だ。このほか、アマゾン・ドット・コム<AMZN>と協業のアドバンスト・メディア <3773> [東証G]、出直り態勢のドリーム・アーツ <4811> [東証G]などに妙味があろう。
テーマ的にはやはり、AI(人工知能)がメーンだろう。エヌビディア<NVDA>が中核企業だが、アップル<AAPL>はEV(電気自動車)の開発を断念、生成AIに経営資源を集中するという。サービスナウ<NOW>はエヌビディアと提携している。日本企業ではジーデップ <5885> [東証S]が面白い、と判断する。
2024年2月29日 記
株探ニュース