「コーポレート・アクション」の季節到来、穴株妙味満載の6銘柄選抜 <株探トップ特集>
―東証市場改革で自社株買いは増加の一途、物色機運高まる銘柄に共通する条件とは?―
企業のコーポレート・アクションが活発化する時期が近づいてきた。毎年、3月期決算企業の本決算発表が本格化する4月中旬から6月末の株主総会までの間は、企業によるコーポレート・アクションが活発になる時期である。企業に対し資本効率向上を求める市場の圧力が高まるなか、PBR(株価純資産倍率)や、ROE(自己資本利益率)といった指標が経営陣にとって重要なハードルとなっており、基準に満たない企業は株主還元や事業ポートフォリオの見直しを迫られる状況にある。このような環境を受け、株価の向上を目的としたコーポレート・アクションを実施する企業は今後も増加すると考えられる。投資家としては、どの企業が次に動くのかを見極めることが、戦略を練るうえでカギとなるだろう。
●経営トップが直面するハードル
コーポレート・アクションとは、企業が発行する株式などの価格に影響を与える意思決定を指す。具体的には自社株の買い戻しや売り出し、配当の増減、株式の分割や併合、更には合併やスピンオフ(特定事業部門の独立)といった事業ポートフォリオの見直しなどが含まれる。2014年に日本版スチュワードシップ・コード(運用資産を受託した者の行動規範)が策定され、翌年にコーポレートガバナンス・コード(企業統治の行動規範)の適用が始まったことで、企業における株主への意識が高まった。23年には、東京証券取引所がプライム、スタンダード市場に上場する企業に対し「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」を求めたこともあり、株価の向上を意識したコーポレート・アクションを実施する企業が増加している。
東証は、資本収益性や成長性の観点から「ROE8%未満、PBR1倍割れ」を課題とする水準としており、特にPBR1倍割れについては「資本コストを上回る資本収益性を達成できていない、あるいは成長性が投資者から十分に評価されていないことが示唆される1つの目安」としている。このため、PBR1倍という水準は、上場企業の経営トップが越えなければならない重要なハードルの一つとなってきた。
経営トップの再任議案は株主総会で決議されるが、近年では米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)や同業のグラスルイスが、過去5期の平均ROEが5%を下回る企業の経営トップの取締役再任議案に反対を推奨するようになった。まずはROE5%という基準が、経営者にとって乗り越えるべきハードルとなりつつあり、こうした基準を満たしていない企業の経営トップは、株主総会に向けて対応を迫られる状況にある。
●アクティビストが躍動する日本株市場
アクティビストは株価の上昇を目論み、PBRやROEが低迷している企業の株式の取得に動いている。企業との対話(エンゲージメント)を通じて、積極的な株主還元を求めるだけでなく、持ち合い株式や遊休不動産の売却、不採算子会社や事業部門の再編といったさまざまなコーポレート・アクションを提案している。企業の経営陣がアクティビストの声を無視し続けた場合、株主総会で新たな取締役の選任や経営トップの交代の提案を受けることとなる。
これらを背景に、純資産を減少させることでPBRやROEを引き上げようと、自社株買いや増配といった積極的な株主還元が活発化している。実際に24年の上場企業による自社株買い総額は18兆円超と過去最高を記録し、25年3月期の予想配当総額も約18兆円と、過去最高となる見通しだ。
経営陣が外部からの圧力で動くのは本来あるべき姿ではないが、どの企業がコーポレート・アクションを起こしやすいのかを見極められるようになることは投資家にとって重要だ。銘柄選別をするうえで、次の5つの条件に合致しているか否かを調べることは、有益であるに違いない。すなわち、(1)PBRが1倍を下回っていること、(2)前期までの過去5期の平均ROEが5%を下回っていること、(3)アクティビストが株式を保有していること、(4)23年以降に自社株買いを実施した実績があること、(5)24年の1年間に株価が下落していること、である。
これら5つの条件に全て合致する銘柄は、昨年1年間に日本株が大きく上昇したこともあって、稀ではある。ただし(4)に該当する企業は、PBRやROEの改善に向けた意識があり、改善への取り組みを引き続き実施する可能性がある、と考えることができる。また、(5)の株価の下落は、投資家が企業の経営トップに対して低評価を下しているサインとも取れるため、この状況を打開するためにコーポレート・アクションを起こす公算が大きい、とみなすことができる。
●ウシオ電やPALTACなどをマーク
こうした観点から穴株妙味満載の銘柄をピックアップしていく。まず、産業用ランプで世界首位のウシオ電機 <6925> [東証P]は、(1)のPBRは0.8倍台、(2)の過去5期平均ROEは4.0%、(3)はアクティビストとして活動したことがあるM&Gインベストメント・マネジメントが、保有目的は「純投資」ではあるものの、直近では24年8月30日を報告義務発生日として保有割合を増加させている。(4)の自社株買いは同年5月から今年4月末にかけて上限300億円の枠を設けて実施中。(5)の24年の株価は5.2%の上昇となっている。業績面では25年3月期第3四半期累計の連結経常利益が前年同期比17.1%減の104億6100万円と芳しくないものの、通期計画の95億円を超過している。自己資本比率も68.2%と低くはなく、利益剰余金は1407億円と多い。自社株買いは23年5月~24年3月にも約300億円実施している。
化粧品・日用品・一般医薬品卸で最大手のPALTAC <8283> [東証P]は、過去5期平均ROEが8.9%と(2)の条件からは外れるものの、(1)のPBRは0.8倍台、(3)はアクティビストとして活動したことがあるサード・アベニュー・マネージメントの保有がファンド側の報告書で明らかとなっている。(4)の自社株買い実績は24年7月から25年2月にかけて約50億円実施した。(5)の24年の株価は2.3%の下落となっている。業績面では25年3月期第3四半期累計の経常利益は前年同期比3.1%増の254億1700万円に伸び、通期計画の317億円に対する進捗率は80%とほぼ巡航速度であった。自己資本比率は54.5%で、利益剰余金は2358億円と多い。
●アキレスは増配に期待
アクティビストとして知られるファンドの保有が明らかになっていない銘柄をみると、運動靴大手のアキレス <5142> [東証P]は、(1)のPBRが0.5倍前後、(2)の過去5期平均ROEはマイナス1.3%。前期と前々期が最終赤字だったことが響いている。(4)の自社株買い実績は24年3月から25年2月にかけて上限16億円の枠で実施中。(5)の24年の株価は6.2%の下落であった。業績面では25年3月期第3四半期累計の連結経常利益が前年同期比19倍の5億3200万円に急拡大し、通期計画をすでに上回っている。自己資本比率は48.5%、利益剰余金は158億円となっている。好業績からの増配も期待される。
独立系電子部品メーカーであるアオイ電子 <6832> [東証S]は(1)のPBRが0.5倍台。(2)の過去5期平均ROEは0.1%と、24年3月期の大幅な最終赤字が響いている。(4)の自社株買いは24年3月に約19億6000万円を実施したが、(5)の24年の株価は28.7%の下落であった。25年3月期第3四半期累計の連結経常損益は8億6500万円の黒字(前年同期は7億9700万円の赤字)に浮上し、通期計画に対する進捗率は82%に達した。自己資本比率は85.6%と高く、利益剰余金は340億円ある。
老舗百貨店天満屋グループで岡山地盤のスーパーである天満屋ストア <9846> [東証S]は、(1)のPBRが0.4倍台、(2)の過去5期平均ROEは4.9%とわずかながら5%に届いていない。(4)の自社株買いは23年10月に行ったが、取得総額は約3200万円にとどまった。(5)の24年の株価は10.4%の下落である。25年2月期第3四半期累計の連結経常利益は前年同期比8.0%増の17億7000万円、通期計画の25億円に対する進捗率は71%にとどまった。自己資本比率は60.0%で利益剰余金は168億円。主要株主としてイトーヨーカ堂が20%保有している。イトーヨーカ堂の親会社であるセブン&アイ・ホールディングス <3382> [東証P]が、スーパーなど非中核事業を束ねる中間持ち株会社の株式売却手続きを進めており、更なる事業ポートフォリオの見直しにおいて天満屋スも対象として含まれる可能性が考えられる。
九州地盤の電鉄大手である西日本鉄道 <9031> [東証P]は(1)のPBRが0.7倍台、(2)の過去5期平均ROEは4.8%。(4)の自社株買い実績は24年5月から同年10月までに約30億円を実施したが、(5)の24年の株価は5.1%の下落である。25年3月期第3四半期累計の連結経常利益は前年同期比20.3%増の224億1200万円と大幅増益。決算発表時に、通期の同利益を従来予想の258億円から283億円(前期比15.3%増)に上方修正した。同利益は2期ぶりに過去最高益を更新する見通しとなっている。鉄道という業態から自己資本比率は31.2%と低いが、利益剰余金は1779億円ある。好業績を背景に増配が期待されるほか、自社株買いの可能性もありそうだ。
株探ニュース