すご腕さんも納得、プロが伝授するIPO投資の勝ち技
IPO投資のツボ-第3回 ~IPO分析のプロ西堀敬さんに聞きました(上)
~株探プレミアム・リポート~
金融機関出身のフリーライター。株式、投資信託、不動産投資などを中心とした資産形成に関連する記事執筆を主に担当。相続、税金、ライフプラン関連も数多く執筆。
IPO関連情報サイト「IPOジャパン」編集長。証券会社の国際部と海外現地法人に10年勤務。その後、気象情報会社ウェザーニューズの財務部長等を経て、2011年から日本ビジネスイノベーションの代表取締役を務める。02年から15年まで「東京IPO」編集長、16年からはIPO情報関連サイトの「IPOジャパン」編集長。日本経済新聞、日経CNBC、週刊東洋経済などの各経済媒体にも登場し、かつ、年間数十回を超えるIR説明会、セミナー等も行い、IPO市場の啓蒙・発展に尽力している。著書は『IPO投資の基本と儲け方スバリ!』(すばる舎)など多数。
2020年のIPO(新規公開株式)銘柄に投資するにあたって、どのような心構えをしておけばよいのか。IPO投資シリーズの後半は、IPO投資の専門家である西堀敬さんに解説してもらった。聞き手は、シリーズ前半で登場したIPO投資のすご腕投資家、JACK(ハンドルネーム)さん。
株式投資は奥深い。IPO投資で実績を上げているJACKさんでも、まだ知りたい情報がある。それをプロの西堀さんにぶつけた。今回はおいしいIPO銘柄を見極める上で注目すべき情報や、上場後のセカンダリー投資で短期勝負する上でのポイントを解説してもらった。
そしてシリーズ締めくくりの次回では、JACKさんも目からウロコの情報となった「IPO後の1年限りで勝負できる決算プレー」について紹介する。まずはおいしいIPO銘柄選びやゲットする上でのポイントについて西堀さんの解説を聞いていこう。
IPOプライマリーは、大手証券やJR山手線の店舗は超・超・超激戦
JACKさん(以下、JACK): セミナーや個人投資家の集まりなどでは、「IPO投資をする際、まず何をしたらいいのかわからない」とよく質問されます。特に初心者など、初動はどうしたらいいのでしょう?
西堀敬さん(以下、西堀): まずは証券会社が、そのIPO株を欲しい人がどれだけいるかを把握する需要調査、つまりブックビルディングのスケジュールを押さえることですね。
第1回目の記事でも触れられているように、日本取引所グループのウェブサイトの中にある「新規上場会社情報」ではIPOの承認については確認できます。また、承認後のブックビルディング期間や決定された公開価格といった鍵となる情報は、私が編集長を務める「IPOジャパン」や、また「東京IPO」のウェブサイトなどで一覧できるように整理されています。こうした情報を適宜チェックすると便利でしょう。
特に、公募の段階でIPO株を獲得したいというプライマリー投資狙いの人は、これを知らないことには応募ができません。また、上場後のセカンダリー投資も、短期狙いであれば当然ながら、上場日はいつかを知らないことには始まりませんね。
JACK: 確かにそうですね。自分を含めて、「公募段階でIPO株を取得するにはどうすればいいか」ということは多くの投資家の関心事です。獲得の確率を高めるために、いい方法はないでしょうか?
西堀: その点はJACKさんの方が詳しいのでは…(笑)。1回目記事の関連になりますが、野村証券や大和証券など、かつて4大証券と呼ばれた対面主体の大手証券から取得するのは非常に難しいでしょうね。
JACK: 現在は野村と大和に、三井住友フィナンシャルグループのSMBC日興証券の3大証券になっていますね。
西堀: その3大証券の大型店舗、例えば虎の門や銀座などにある支店でも、IPO株の割り当ては5人分くらい。しかも1人当たり最低単元の100株がせいぜいです。
編集部: 虎の門や銀座となると、富裕層の上顧客も多く抱えていると思います。普通のサラリーマン投資家にとっては分が悪そうですね。
西堀: こうした大手証券だと、単に口座開設しているくらいのレベルでは、IPO株を分けてもらった話は聞かないですね。例えば、支店で開催するセミナーなどで様子を見ていると、支店長や幹部社員が丁寧に接している顧客がいることがあります。
確かなことはわかりませんが、支店長などから手厚く接してもらっている人を差し置いて、割当を受けるのは厳しいと考えておく方が無難でしょう。ただし、2018年にIPOしたソフトバンク<9434>のような、いきなり東証1部に上場する大型銘柄の場合、話は別です。
同社のIPOの時は、証券会社から積極的に営業の電話がかかってきて「買ってください」と勧誘される顧客が多かったと聞きます。こうした大型IPO銘柄は公開株数が多く、簡単に手に入る分、大きな株価上昇は期待しにくくなります。
JACK: 反対に発行株式数が少ないマザーズ上場銘柄などは、人気が殺到して手に入れるのが難しくなりますね。
編集部: 大手証券の場合、ソフトバンクのような東証1部でIPOする大型株に限らず、中小型のマザーズ銘柄でも主幹事になっています。主幹事の大手証券に口座を持っていても、割当は受けにくいのでしょうか。
西堀: 新興市場に上場する中小型銘柄は流通する株が少ないので、たとえ主幹事証券に口座があっても、競争率が高いことに変わりありません。一方で、IPOでは主幹事証券が公開株の80%を持っていきます。
ということは、公開株数が少ない中小型のマザーズ銘柄などを、主幹事でないネット証券からもらうのは、ハードルが高いと考えるべきです。個人の方はネット証券をメーンにしているケースも多いと思いますが、人気のIPO株を獲得する場合はものすごい競争率になってしまいがちです。
IPO株の当選確率を高めたい場合は、主幹事か準主幹事となる大手証券や、ネットではない対面主体の証券会社からでないと取得するのは難しいでしょう。
編集部: ただ先ほどのお話だと大手証券の大型店は、一般のサラリーマンでは相手にされない可能性があるのですよね。
西堀: 大手証券で申し込む場合は、やや郊外にある支店で口座を開くのがベターです。東京ならJR山手線の内側やその近隣にあるような支店は避けて、郊外にある支店を狙うと確率は若干高まるかもしれません。
その他には、大手証券ではなく、中堅クラスの証券会社、そしてさらに郊外の支店であれば、営業担当といい関係を築いていれば、少々の期待は持てると思います。
JACK: 東海東京フィナンシャル・ホールディングスの傘下のエース証券とか、いちよし証券などが候補でしょうか?
西堀: 3大証券よりは確率は高まる可能性はあります。とはいえ、こうした証券会社でも、東証マザーズ上場など公開株数が少ない銘柄の場合、一度に配分してもらえる株数は最低単位の100株がせいぜいでしょう。
プライマリー投資で上場初日に売り抜ける戦略ですと、公開価格や上昇率でケースバイケースですが10万~20万円のリターンが期待できるかもしれません。サラリーマンには決して小さくない金額ですから、対面営業をしている証券会社の営業担当者と小まめに連絡を取り合うなどして、関係づくりの手間を厭わないことが大事でしょうね。
サラリーマンでありながら、兼業で投資を始めて30年。IPO投資などを中心に株式投資で運用資産を約2億円に拡大させる。2010年の第一生命HDのIPO時には、一気に約1200万円も稼ぎ出すことに成功。かつてはバーテンダーの経験もあり、多彩な経験、多方面の人脈を生かして、株主優待の利回り下支え投資など、様々な投資アイディアを駆使して幅広い投資を行うのが得意。不動産投資、FX(外国為替証拠金)取引なども手掛け、現在は飲食店経営にも出資する。著書は『株カンニング投資術』『月5万円をコツコツ稼ぐらくらく株式投資術』(ダイヤモンド社)、『10万円からはじめる株』(総合科学出版)、『百人百色の投資法』(パンローリング)など15冊以上と多数ある。
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