夜と翻訳―春節1ヵ月前「インバウンド関連株」最前線 <株探トップ特集>

特集
2018年1月11日 19時15分

―回復傾向・訪日客消費額、コト消費誘致策の現在地―

2018年の春節(旧暦の1月1日)が2月16日からスタートするのを控えて、インバウンド関連への関心が改めて高まりつつある。もっとも、訪日外国人客の消費動向が「爆買い」に代表される「モノ消費」から観光地での体験を楽しむ「コト消費」にシフトしているのは周知の通り。今後はいかに「コト消費」を“誘致”するかが注目となりそうだ。

●「誘致策」がポイントに

観光庁によると、訪日外国人1人当たりの旅行消費額は、「爆買い」が流行語になった15年には17万6167円だったが、16年には15万5896円へ11.5%も縮小した。17年に入っても縮小傾向が続き1~3月は14万8066円となったが、4~6月は14万9248円、7~9月は16万5412円へ回復傾向にある。

この間、中国当局が海外から持ち帰る購入品に対する課税を強化しており、16年の減少はその影響があるとみられるが、一方でモノ消費の増加には限りがあることが判明した。政府は、20年に訪日外国人旅行者数を4000万人(16年2404万人)へ引き上げ、消費額を16年の3兆7476億円から8兆円へ増やす目標を掲げているが、今後はいかにして外国人客を呼び込み消費につなげるか、またコト消費を増やすかなどの「誘致策」が重要となる。

●満足度向上につながるウエアラブル翻訳機

まず注目されるのは、消費を増やすために必要な受け入れ態勢の整備だ。なかでも、「言葉の差」からくるコミュニケーション不足は機会損失につながることから、この解消は急務となっている。

日本ユニシス <8056> は、飲食店向けに訪日外国人接客ナビゲーションシステム「WaviSaviNavi」を提供しており、多言語でメニューや食べ方・作法などの情報を配信。また、翻訳機能で店と外国人旅行者のコミュニケーションをサポートし、従業員の接客負荷の低減を目指している。

一方、ここにきて注目が高まっているのがウエアラブル翻訳機 で、ソースネクスト <4344> は、昨年12月14日に双方向通訳デバイスの「POCKETALK(ポケトーク)」を発売。世界50言語以上に対応し、話しかけるだけで指定した言語へ翻訳する。高い精度で複雑な翻訳ができるのが特徴だ。

また、フュートレック <2468> [東証2]がログバー(東京都渋谷区)と共同開発した「ili(イリー)」は、ポケトークに比べて対応言語は少ないものの、オフラインで音声翻訳が可能な点が特徴。これらウエアラブル翻訳機は訪日外国人にとって利便性が高く、空港やホテル、訪日外国人客の多い店などに置けば、利用者の満足度向上につながりそうだ。

●ナイトタイムエコノミーに注目

コト消費で最近注目されているのが、ナイトタイムエコノミー(夜の経済活動)だ。諸外国と比較して日本には夕食を食べ終えた8時から24時ごろまでのエンターテインメントが少ないのが現状。深夜営業の多いロンドンのナイトタイムエコノミーは、英国全体に約4兆円の効果をもたらしているといわれており、日本でもこの取り組みに向けた動きが求められていた。

観光庁が昨年秋に発足した検討会議でも、スポーツ観戦を観光ツアーに組み込むことや女性に人気が高いネイルサロンなど美容施設を体験させる「ビューティーツーリズム」などと並んで、夜間の経済活性が議論されている。昨年12月には、自民党の「時間市場創出(ナイトタイムエコノミー)推進議員連盟」が、夜の経済活動活発化に向けた中間報告をまとめ、深夜のデジタルダーツやシミュレーションゴルフの解禁、月曜日の出社時間を遅らせる「ラグジュアリーマンデー(仮称)」などを提案しており、今後、ナイトタイムエコノミーに関連した銘柄が関心を集めそうだ。

注目は、体験型の飲食店やダーツ・ビリヤードバーなどを展開するDDホールディングス <3073> や、ライブやスポーツイベントなどが行われる東京ドーム <9681> 、ナイター競馬を開催する東京都競馬 <9672> など。また、美容体験に関連してヘアサロン「モッズ・ヘア」の運営を行うエム・エイチ・グループ <9439> [JQ]にも注目したい。

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