万博・カジノ・インバウンド…、材料満載で炎立つ「関西銘柄」 <株探トップ特集>

特集
2018年2月7日 19時30分

―大型材料続々のいま、商機獲得の有力企業を探る―

米国発の同時株安に揺れる東京市場、急落の後遺症は投資家心理をそうたやすく温めてはくれなかった。前場はリスクオフの巻き返しに転じたかに見えたが、後場終盤に入ると値を消す展開に。どうにかプラス圏で引けたものの、上値の重さが印象付けられた。ここからは、好調業績を背景にした銘柄の押し目を狙うのはもちろんセオリー通りだが、有力テーマで今後浮上しそうな銘柄群を狙うのも一法だ。人工知能自動運転車など有望テーマは多いが、今回は折に触れ思惑を絡め物色の矛先が向いやすい「万博」「カジノ 」に「インバウンド 」と三方良しの関西銘柄に注目した。

●万博、パリ辞退で大阪有利!?

いま関西が熱い。2025年の万博誘致において、大阪最大のライバルと言われていたパリが立候補を取りやめると伝わり、2度目となる“大阪万博 ”が現実味を帯びてきたとの見方も出ている。また、大阪府は万博会場となる予定の夢洲(ゆめしま)において統合型リゾート(IR)の開業を積極推進しておりカジノ誘致でも目を離せない。加えて、訪日観光客が順調に増加するなか、とりわけ関西地区はその中核的存在として一層輝きを増している。“誘致が実現すれば”という前提はつくものの、話題満載であることは言うまでもない。

1月21日、25年開催の万博でフランス・パリが立候補を辞退する方針であることが報道され、誘致を目指していた大阪が一気に有利になったとの見方が浮上。最大のライバルの辞退で、にわかに色めき立つことになった。

日本政府は昨年9月、25年に大阪での開催を目指す国際博覧会(万博)について、パリの博覧会国際事務局(BIE)に正式な立候補申請文書を提出、今年11月のBIE総会で開催国が決定する予定だ。今後誘致合戦が熱を帯びるなか、株式市場においては関連銘柄の株価を折に触れて刺激する可能性がある。また、20年に開催される東京五輪後の日本経済の行方が懸念されており、新たな経済の牽引役として25年の大阪万博が期待されており、そういった視点からも熱いまなざしが注がれている。

カジノ誘致でも有力候補地として注目される大阪だが、日本総研が昨年11月に発表した「夢洲における万博・IR(カジノを含む統合型リゾート)の概要と課題」によると、政府・大阪市の試算をベースに、25年は万博・IRで2.6兆円におよぶ経済効果があるとしている。加えて、開催期間前後の影響を考えると、その経済効果はさらに拡大することになりそうだ。万博にカジノ、両者ともにあくまで誘致が決定すればという条件がつくが、この巨大な経済効果が、自治体と経済界が強力なスクラムを組む大きな理由といえる。

●実績豊富で三精テクに思惑も

パリの立候補辞退の報道を受けて、週明けの1月22日、株式市場では三精テクノロジーズ <6357> [東証2]が“万博感応度”の高さを見せつけ、株価は108円高の1424円まで買われた。同社は、1970年の大阪万博において、エレベーターやエスカレーター、オートロード(動く歩道)をはじめ、舞台機構や各種遊戯機械を提供していることに加え、地元大阪企業という点での期待感と思惑が先行する。さらに、モントリオール万博や、つくば博、愛・地球博における実績の豊富さも、今年11月の開催地決定に向けて誘致合戦がクローズアップされる過程で“思惑買い”を誘う可能性がありそうだ。

●山九、上組は夢洲の土地持ち企業

そのほかでは「用地なくして、会場なし」といったところで、まずは会場と用地関連に注目が集まるのは必然といえる。万博、カジノで共通の候補地といえば夢洲地区で、まさにドリームアイランドへと変貌する可能性が大きい。夢洲は、大阪中心部や関西国際空港、さらに京都や神戸など関西一円への交通アクセスが充実、今後の開発で一層利便性が高まることも予想され、ここでの土地持ち企業が注目されている。

株式市場においては、夢洲に物流用地として取得している上組 <9364> 、そして関西地盤ではないが山九 <9065> などに注目が集まる。山九は、1月31日に18年3月期の第3四半期累計を発表、連結営業利益は前年同期比10%増の234億9300万円と堅調。機構・物流ともに伸びており、18年3月期の連結営業利益は前期比3%増の280億円が見込まれている。通期計画の280億円に対する進捗率は83.9%に達しており、市場には増額期待がある。山九が13年に用地取得の際に発表したリリースでは「大阪港の中心に位置し、今後大阪港の物流の中心となることが期待されている。大阪中心部にも近く、要員の確保もしやすいなど」のメリットを挙げている。

これら2銘柄以外でも、夢洲の用地を巡っては様々な思惑から株価が乱高下するものもあり、ここからは投資家の厳しい選別眼が求められることになりそうだ。

●“好立地“で常連株の京阪HD

万博もカジノも「全てはインバウンドへの道に通ずる」わけで、やはり観光関連企業にとっては期待が大きい。大阪観光局によると、17年の来阪外客数が約1111万人となり過去最多になったと発表。歴史・文化をはぐくむ関西圏は、まさに日本観光の中心といえる。ただ、宿泊施設の供給過剰など五輪後に不安の声も囁かれ、「万博、そしてカジノ誘致が頼みの綱」という声も少なくはない。ある関西大手の観光関連企業では、「仮に万博ともなれば、事業機会につながるものとして注目している」と言うが、先行する報道に対して「こればかりは神頼み」と語る。

ホテルの供給過剰懸念が高まるなか、“好立地”を背景に異彩の存在感を見せているのが、やはり京阪ホールディングス <9045> だろう。同社は京阪エリア地盤の私鉄で、運輸、不動産、流通、レジャー・サービスを展開。傘下のホテル京阪が夢洲に近いJR桜島線のユニバーサルシティ駅前に、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のパートナーホテルを2つ運営している。前述の大阪観光局の資料では「大阪の観光地で訪れた場所」として道頓堀、心斎橋に続きUSJが挙がっているだけに、ホテル運営においては好立地この上なしといえる。株式市場においては、万博・カジノで浮上するまさに“常連株”だが、株価は昨年から上下に蛇行を続け、いまひとつ煮え切らない状況が続く。ただ、万博・カジノ感応度は高く思惑高を招く可能性もある。

宿泊関連では、関西の名門ホテルといえるロイヤルホテル <9713> [東証2]はもちろんだが、面白い所ではバルニバービ <3418> [東証M]にも目を配りたい。同社はカフェ・レストランを展開するが、京都から9分の滋賀県JR大津駅に「憩・食・楽」がワンストップでできるワンランク上のカプセルホテル「カレンダーホテル」を開設。カプセルホテルが訪日客の間で注目を集めるなか、今後の展開が気になるところだ。

●くらコーポ、スシローに地元の強み

訪日客の目的と言えば当然のことながら観光だが、もちろん「食」も大きな要素を占める。日本食の目玉と言えば、やはり「すし」といえる。その視点からは、関西地盤のくらコーポレーション <2695> 、スシローグローバルホールディングス <3563> が挙げられる。現在は、両社ともに全国展開を進めているが、例えばくらは関西エリアで約130店舗を運営しており、万博・カジノの誘致が決定すれば、そこは“地元での強み”を発揮し恩恵を享受することになる。同社は12月13日に発表した17年10月期連結決算で純利益48億8400万円(同10.3%増)と業績も好調だ。株価は両銘柄ともに高値圏で推移するが、万博・カジノ関連としての切り口でも妙味がありそうだ。

そのほかでは、カジノ絡みで紙幣識別機の日本金銭機械 <6418> 、来阪観光客の人気観光地で上位に入る「あべのハルカス」に本店を置く近鉄百貨店 <8244> などにも注目したい。

安倍首相は1月22日の施政方針演説で、観光立国の一環として、IR実施法案の国会提出を表明した。直近では、米カジノ大手が大阪への進出を強く考えていると伝わっており、これも前向きなニュース。また、パリ辞退で思惑が働く万博開催地は11月に決定する予定で、大阪を中心とする関西銘柄は、誘致合戦が過熱するなか物色の矛先が向かう可能性が高い。いま、関西復権の足音が聞こえるなか、関連銘柄は満開の春を待っている。

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