レシート革命が始まった―「電子化」で生まれる“価値”と“商機”と <株探トップ特集>

特集
2018年2月10日 19時30分

―標準規格策定へ実証実験開始、購買履歴データ流通市場の形成へ―

経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は13~28日にかけて、民間企業と協力して電子レシートの標準仕様を検証する実証実験を東京都町田市で実施する。これは薬局やコンビニなどさまざまな業態に共通する標準規格を策定し、事業者や消費者が購買履歴データを活用できる環境整備を進めることが主な目的。これまで捨てられることが多かった買い物レシートが、電子化によって新たな価値を生み出すことになり、関連企業のビジネス拡大が期待される。

●データを活用した製品開発やサービス提供が可能に

電子レシートとは、会計の際に紙で渡されるレシート(購買履歴データ)が、スマートフォンのアプリに電子化されて届く仕組み。レシートが電子化されると、消費者はレシート情報を家計簿ソフトや健康管理ソフトなど、さまざまなアプリで簡単に活用することができるほか、企業にとってもPOSレジデータでは困難だった消費者行動の詳細な分析をもとにした販売促進活動に生かせるメリットがあり、既にビックカメラ <3048> やドンキホーテホールディングス <7532> などで導入されている。

ただ、多くの場合、データフォーマットは各事業者で異なるため、消費者が複数の店舗で買い物をしたデータを統合することが難しく、企業にとっても消費者にとっても使い勝手に難があった。この課題に対し、経産省は電子レシートの標準規格を策定し、購買履歴データの活用基盤を整える考え。標準規格を各事業者が導入することで、消費者は購買履歴をひとつのアプリで管理できるようになり、企業はパーソナルデータの流通市場を通じた正確な消費者理解に基づく製品開発やサービス提供が可能になる。

●東芝テックが委託事業者でジャストプラなども参加

13日から始まる実証実験は、経産省およびNEDOの「IoTを活用した新産業モデル創出基盤整備事業」の一環として実施されるもので、町田市内にあるココカラファイン <3098> やウエルシアホールディングス <3141> 、ミニストップ <9946> 、銀座コージーコーナー(東京都新宿区)、東急ハンズ(東京都新宿区)、スーパーマーケットを展開する三徳(東京都新宿区)の店舗で行われる。

この実験では、委託事業者となっている東芝テック <6588> が運営している電子レシートシステム「スマートレシート」をベースに、標準データフォーマットやAPI(アプリケーションと連携するインターフェース)を実装した電子レシートプラットフォームを使用。システムではヴィンクス <3784> 、ジャストプランニング <4287> [JQ]、インテージホールディングス <4326> 、富士通 <6702> 、NTTデータ <9613> 子会社などが協力する。

また、クラウドIoT分野は東京エレクトロン デバイス <2760> 、日本ユニシス <8056> 、日本マイクロソフト(東京都港区)が担当し、スマホアプリではLINE <3938> 、マネーフォワード <3994> [東証M]、大日本印刷 <7912> などが参加する。

●エイジア、アドウェイズ、スター精密にも注目

電子レシートを導入する店舗の拡大が見込まれるなか、自社製プリンターを利用する店舗に電子レシートサービスを提供しているスター精密 <7718> も今後の商機拡大が期待される企業のひとつだ。同社は今回の実験には名を連ねていないが、昨年12月には静岡銀行 <8355> と共同で電子レシート機能などのクラウド技術を活用して商店街の回遊性や集客力を高める実証実験を静岡市内の一部地域で実施。レシートプリンターと連動して電子レシートを発行できるメーカーとして存在感が高まりそうだ。

また、電子レシートメール送信サービスを手掛けるエイジア <2352> 、ドンキホーテHDに電子レシートシステムを提供しているログノート(東京都品川区)に出資しているアドウェイズ <2489> [東証M]やサイバーエージェント <4751> にも注目。

このほか、大量の購買データを高速分析できるアプリケーション「シースリーバリュー」を運用するネットイヤーグループ <3622> [東証M]、ビッグデータを活用した販売促進分析に強みを持つALBERT <3906> [東証M]、消費者購買履歴データ「QPR」を提供するマクロミル <3978> 、流通小売り領域に特化したマーケティング支援を行うアイドママーケティングコミュニケーション <9466> などにもビジネス機会がありそうだ。

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