中村潤一の相場スクランブル 「“劇的上昇株”を探せ 新潮流に乗る10銘柄」
minkabu PRESS編集部 株式情報担当編集長 中村潤一
銘柄を選別する際、いうまでもなく当該企業のファンダメンタルズや成長性は株価形成の要素として非常に重要ながら、全体相場の流れや地合いというものが、それ以上に大きな影響力を及ぼすことが少なくありません。株は需給であり、その需給関係も含め投資にはタイミングが肝心といえます。孟子いわく「知恵ありといえども勢いに乗ずるにしかず」。“知恵”が戦略上、大きなウエートを占めるということに異論を挟む余地はありません。しかし“時”はその人智を超えて戦局を左右するもの。株式投資の世界でも肝に銘じておくべき黄金セオリーといってよいでしょう。
今年の相場を振り返ると、2月と3月はいわば時化(しけ)に遭遇した状態であり、内需系のテーマに即した中小型株で勝負することは可能だったとはいえ、勇躍して大海原に出ていくような地合いではありませんでした。全体観としては半身の構え、短期売買と割り切っての立ち回りが投資スタンスとしては正解であったと思います。待てば海路の日和ありの言葉通り、ここにきてようやく天候が改善してきた印象も受けます。
●圧倒的な売り主体であった外国人に変化
需給面からここまでの経緯をおさらいしておくと、1~3月の圧倒的な売り主体であった外国人投資家は、3月末までの3ヵ月間で現物を2兆6170億円、先物では6兆380億円を売り越しました。しかし3月第4週は現物で小幅ながら48億円の買い越しに転じ、ようやく売り物が切れた格好となっています。一方、先物は3月第4週に9402億円の大幅売り越し。ただし、これは3月期末を目前にした配当取りに絡む持ち高移管に伴うもので、特殊要因として想定されていたものです。実質的にはクロス商いの部分がかなりのウエートを占めており、既に先物は3月第3週時点で1970億円の買い越しに転じていました。
外国人が圧倒的な売り主体であったのに対し、1~3月に買い向かったのが個人投資家と日銀。特に不動の買い主体として機能したのが日銀のETF買いです。日銀はETF砲を3月に11回も轟かせ、金額ベースで合計8081億円(新型ETFは除く)に達しています。買い入れ額は年間5兆7000億円の枠が設定されており、月平均にすれば4750億円ですから、3月はかなり積極的に買い向かったことが分かります。ちなみに、1月は7回の発動で5145億円、2月は8回で5848億円を買い入れました。1~3月累計では1兆8340億円となり、外国人の現物売りの7割を相殺している格好。サウジアラビア政府系ファンドなどの売り玉については、日銀がそのまま引き受けた構図となっています。
しかし、今月はこの外国人の売り攻勢が鳴りを潜める可能性が高いとみています。4月は実に過去17年間にわたって月間買い越しを記録しているという鉄壁のアノマリーが存在しており、今年もその実績を踏襲する公算は小さくないと考えています。昨年も2月、3月に外国人は売り姿勢を強めており、4月に買い越しに転じることに懐疑的な市場関係者が多かったことを記憶していますが、実際はアノマリー通りに買い越しとなりました。逆に今回、もし4月月間ベースで外国人が日本株の売り越しを続けた場合、それは全体相場の中長期トレンド下方転換を意味する出来事といってもよいでしょう。
●ローソク足の“陰陽”の入れ替わりに着目
東京市場は新年度入りと合わせ、足もとの需給の変化を前向きに捉えることが許容される段階に入ってきたと個人的にはみています。前回の当コーナーで、日経平均の“週足”で2月第1週(5~9日)以降、ワルツのリズムを刻むように大陰線→陽線→小陰線というパターンを繰り返していることに言及しましたが、その3サイクル目となる3月第3週(19~23日)以降は、大陰線→陽線の後、小陰線ではなく小陽線に変わりました。微妙な変化ですが、相場の潮流が変わったことを教えてくれているようにもみえます。「微を持って萌を知る」という故事を引き合いに出すのはおこがましいかもしれませんが、このローソク足の陰陽の入れ替わりは転機となっている可能性を強く示唆するものではないかと考えます。
きょう(11日)はSQ前の水曜日ということで全体はつかみどころがなく、覇気が感じられない動きとなりましたが、少々の揺さぶりはあっても大勢トレンドは上値を慕う流れになっているということを信じて対処したいところです。シリアの軍事的緊張に加え、安倍政権の政局不安が依然としてくすぶるなか楽観はできませんが、そもそも弱気材料が潜在しない相場というものはありません。
また、足もとは中小型材料株に下げるものが目立っていますが、こういった仕切り直しの動きは必ず一定のインターバルを置いて訪れるものです。屈する場面があるから伸びることができる。要は投資する側のスタンスに関わってくる問題で、いかなる場面でも下値についてはロスカットポイントをあらかじめ決めて、リスクコントロールを徹底しておくことが肝要です。
●外国人売り一巡なら主力株の突っ込み買いも一法
前回3月28日配信の当コーナー「乱気流相場で勝利する“テーマ株攻略”作戦」で取り上げたクレオ <9698> [JQ]、シグマクシス <6088> 、三光産業 <7922> [JQ]、日邦産業 <9913> [JQ]、北の達人コーポレーション <2930> 、アトラ <6029> などいずれも強力な波動を形成しました。主力株が手掛けにくい地合いであったことも、相対的に買い人気を呼び寄せやすい背景があったかと思います。
もちろん、外国人売り一巡という相場観を働かせれば、主力どころで過剰に売り込まれた銘柄を拾いに行くのも一法であり、その場合は黒鉛電極の先行き市況悪化思惑で売り叩かれた昭和電工 <4004> を筆頭に、米中貿易戦争の余波を懸念された日本精工 <6471> やSMC <6273> 、あるいはマテハン機器の競合激化を売り材料に下落したダイフク <6383> 、アイルランド製薬大手の巨額買収構想を嫌気された武田薬品工業 <4502> などのリバウンド狙いがひとつの手段です。
しかし、基本的にトレンドの強い銘柄につくというのが相場と対峙する上での正攻法。急落した大型優良株の逆張りは少し長い目でみればバーゲンハンティングのチャンスとなるケースも多いのですが、すぐに結果がついてくるとも限らず雌伏の時間帯に耐える覚悟が必要となります。また、リバウンドはみせても前の高値を抜くには相当なエネルギーが必要とされ、どこでキャッシュ化するべきか、売り場にも悩まされることになります。
●チャートに力のある銘柄が劇的上昇波に乗る
小回りの利く個人投資家の強みを生かすのであれば、個別のテーマ株に照準を絞るのが選択肢として最有力でしょう。劇的な上昇シナリオに乗るのは常にチャートに力のある銘柄です。内需のテーマ材料株には上値の可能性を内包している“強い銘柄”がまだ数多く眠っています。
【システムソフトは民泊スマートロックで上値期待膨らむ】
システムソフト <7527> は株価100円台と低位に位置しており意外性があります。同社はアパマンショップ傘下のシステム開発会社で、不動産サイトなどの情報サービスにも注力していますが、6月から「住宅宿泊事業法」いわゆる民泊法が施行されることになり、同社にもビジネスチャンスが訪れそうです。「スマートロック 」は民泊に必須のアイテムともいえ、この分野で合弁会社を展開する同社が穴株として頭角を現す可能性は十分です。
【グランディーズは“インバウンド不動産関連”で飛躍】
グランディーズ <3261> [東証M]は大分県を地盤とする不動産会社で低価格の建売住宅で高実績を有しています。投資用やインバウンド向け宿泊施設でも展開力を持っており、訪日観光客の多い福岡で都市型簡易宿泊所を販売するなど時流に乗るインバウンド関連として上値余地が大きそうです。PERはわずか8倍台で18年12月期は期末一括配当12円を計画、2.3%台の配当利回りも評価できます。
【セルフレジでアルファクス、東芝テック、富フロンテック】
セルフレジ関連株が引き続き根強い物色人気をみせています。国内大手ドラッグストアが2025年までにすべての店舗で無人レジを導入する方針と伝わったことが、火付け役となりましたが、今後も火種が消えることはなさそうです。
そのなか3月中旬に急騰後、調整を入れ、ここ再び戻り歩調にあるのがアルファクス・フード・システム <3814> [JQG]であり、3月15日につけた年初来高値2591円を払拭して一段の上値追いが期待されます。
また、セルフレジに先駆して普及しているのが「セミセルフレジ」。これは商品コードの読み取りは店員が行い、精算の処理をレジ横などに設置された精算機を使ってセルフサービスで行うレジのことです。同関連としては、POSレジの世界シェアトップである東芝テック <6588> が注目で株価の居どころを変えそうな気配を漂わせています。
また、2013年からセミセルフレジを手掛ける富士通フロンテック <6945> [東証2]もマークしたい銘柄。富士通系で金融向けに強みを持っていることで知られますが、POSレジでも業界屈指の実力を有しています。
【アンドールは3Dソリューションで注目必至】
CAD・CAMのパッケージソフトを中心に設計開発を行うアンドール <4640> [JQ]も強い動きで目が離せない銘柄です。エンジニアリング部門のプロジェクト管理徹底と、CADシステムの自社開発ソフト拡販によって大きく利益を伸ばしています。3Dデータの作成から3Dプリンターでの造形までを一貫してサポートする3Dソリューションが同社の強みとなっています。
【越境EC関連として上値追い本番のデファスタ】
デファクトスタンダード <3545> [東証M]は5日・25日移動平均線のゴールデンクロスから戻り相場に拍車がかかっています。同社はネットを活用した中古衣料の買い取り・販売を行っており、テレビCMでも馴染みのある「ブランディア」は極めて認知度が高く、顧客のリピート率も高いようです。海外で日本の高品質の中古ブランドが人気であり、越境EC関連として上値追いが本格化するイメージがあります。
【ウェルビーは一億総活躍社会の有望株】
ウェルビー <6556> [東証M]は1100~1300円のゾーンでもみ合い相場となっていますが、ボックス下限に接近している時価近辺は買い場とみています。障害を持つ人などの就職を支援する就労移行支援事業を展開、安倍政権が推し進める「一億総活躍社会」の国策テーマにも乗る銘柄です。3月末に1株を3株にする株式分割を実施、分割後に動意するパターンの銘柄も少なくないだけに要注目。
【テンバガーを通過点とするEガーディアン】
今の株式市場では業態を問わず人工知能(AI)に関連する銘柄のオンパレードとなっていますが、そのなかでイー・ガーディアン <6050> はブレインパッド <3655> やシグマクシス <6088> などと並んで実はAI関連の神髄のような銘柄といえます。人間の知見とAIを活用した効率性を重視、複数の大学や民間の研究機関と共にAI技術を深耕、あらゆる業務の知能化を目標に掲げています。また、株価については2016年の年初は400円台で推移、そこから2年あまりでテンバガーを実現しています。これはもちろん業績の変貌によるところが大きいわけですが、まだまだ懐は深い。テンバガーは通過点というスケールの大きさを感じさせます。
【IXナレッジはブロックチェーンで変貌途上】
今回、最後に紹介するのはアイエックス・ナレッジ <9753> [JQ]。これも何度か取り上げてきた銘柄ですが、メガバンクを取引先に持つ独立系のシステム開発会社でブロックチェーン技術の研究を進捗させている点に注目。みずほフィナンシャルグループ <8411> が主導するJコイン構想に絡んでくる可能性があります。昨年10月4日配信の当コーナー「加速する材料株相場 秋高特選7銘柄」で注目して翌5日に値幅制限いっぱいに買われた相性の良い銘柄です。その後も26週移動平均線をサポートラインとする下値切り上げ波動を形成、このトレンドにはまだ続きがありそうです。
(4月11日記、隔週水曜日掲載)
株探ニュース