窪田朋一郎氏【やっと反発、日経平均、秋相場のポイントと戦略】(1) <相場観特集>

特集
2018年9月10日 18時30分

―8連騰後の6日続落、“一方通行相場”の後に見えるのは―

週明け10日の日経平均株価は朝方安く始まったものの、その後プラス圏に切り返した。しかし、上値に重さは残る。8月下旬の8連騰から一転して、前週末まで6日続落と日経平均は上下に一方通行の動きが続き、いまだ大勢トレンドの方向性がはっきりしない。ボックス圏往来を繰り返すなか、時間軸は夏から秋へと移行してきた。9月から10月にかけての相場展望と物色の方向性について、第一線で活躍する2人の市場関係者に意見を聞いた。

●「決め手となる材料に欠け、もみ合い継続」

窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)

東京株式市場はボックス相場が続いているが、好悪材料が入り混じるなか、当面は上下とも決め手となる手掛かりに欠ける状況でトレンドに大きな変化は出にくい。

米国経済や企業業績は好調を極めており、東京市場でも企業のファンダメンタルズ面から株価は割安な水準にあることは確かだ。しかし、一方で米中貿易摩擦の問題をはじめとする保護主義色の強いトランプ米大統領の通商政策は引き続きリスクとして認識され、新興国経済への影響も考慮すると、センチメントが強気に傾くまでには時間を要する。

トランプ大統領は中国製品への追加関税について、これまで検討してきた2000億ドル分に加えて、さらに2670億ドル分を追加する準備があることに言及しており、中国から輸入するものすべての物品で関税を引き上げる構えをみせるなど、強硬姿勢を際立たせている。これが中国の景気減速懸念に拍車をかける可能性があり、また、他の新興国においてもドル高・新興国通貨安などレパトリエーションの動きと合わせ、負の連鎖を生じさせる懸念は拭えない。

足もとは米8月雇用統計の強い数字を背景としてFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ継続への思惑が米長期金利上昇に反映、これがドル買いの動きを誘発し、ドル・円相場は円安方向に振れた。これ自体は日本株に有利な材料だが、トランプ大統領が中国に続いて日本との貿易にも矛先を向けつつある現状を考えた場合、政治的圧力からこのまま円安傾向が続くとも思えない。当面は1ドル=110~112円のレンジで動くことが想定され、株式市場にとっても中立要因の域を出ないだろう。さらに日銀の国債購入やETF買いなどでも、ステルステーパリングを進捗させており、どうしても上値の重さは意識される。日経平均は向こう1ヵ月を見通しても、2万1500~2万3000円のボックス相場とみておくのが妥当だ。

セクター別では、まず良くも悪くも自動車株 の動きに注目。貿易摩擦問題の槍玉に挙げられる懸念から、下値模索の動きにあるが、トヨタ自動車 <7203> などはPER9倍まで値を下げており割安感は強い。仮にここからトランプ発言などで一段安となった場合には同社株をはじめ自動車株は突っ込み買い好機となる公算が大きい。半導体関連電子部品株にも同様の背景が当てはまり、東京エレクトロン <8035> やキーエンス <6861> 、日本電産 <6594> なども一段と下押した際には拾い場となろう。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)

松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウオッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。

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