S&P500 月例レポート ― 岐路に立つマーケット (2) ―

市況
2018年12月13日 11時53分

●主なポイント

○11月のS&P 500指数は2,760.17で取引を終え、10月末の2,711.74から1.79%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス2.04%)。10月は6.94%の下落でした(同マイナス6.84%)。過去3カ月間では4.87%下落(同マイナス4.40%)、年初来では3.24%上昇(同プラス5.11%)、過去1年間では4.25%上昇(同プラス6.27%)、2016年11月8日の大統領選当日(終値2,139.56)以降では29.01%上昇(同プラス34.43%)となっています。11月26日には、終値で9月20日に付けた直近の高値(2,930.75)から10.17%安の水準まで落ち込み、一時的に調整局面入りしましたが、月の最終週に回復しました(4.85%上昇)。

ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は25,538.46ドルで取引を終え、10月末の25,115.76ドルから1.68%上昇しました(配当込みのトータルリターンはプラス2.11%)。10月は5.07%の下落でした(同マイナス4.98%)。過去3カ月間では1.64%下落(同マイナス1.07%)、年初来では3.24%上昇(同プラス5.59%)となっています。

○米国10年国債利回りは10月末の3.14%から低下して2.99%で11月を終えました(2017年末は2.41%、2016年末は2.45%)。

○英ポンドは10月末の1ポンド=1.2769ドルから1.2743ドルに下落し(同1.3498ドル、同1.2345ドル)、ユーロは10月末の1ユーロ=1.1319ドルから1.1318ドルに下落しました(同1.2000ドル、同1.0520ドル)。円は10月末の1ドル=112.91円から113.55円に下落し(同112.68円、同117.00円)、人民元は10月末の1ドル=6.9758元から6.9590元に上昇しました(同6.5030元、同6.9448元)。

○原油価格は10月末の1バレル=64.96ドルや9月末の73.53ドルから下落して50.72ドルとなりました(同60.09ドル、同53.89ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は10月末の1ガロン=2.896ドルから下落して2.630ドルで11月の取引を終えました(同2.589ドル、同2.364ドル)。

○金価格は10月末の1トロイオンス=1,217.10ドルから上昇して1,227.40ドルで月を終えました(同1,305.00ドル、同1,152.00ドル)。

○VIX恐怖指数は10月末の21.23から低下して18.07で月末を迎えました。月中の最高は23.81、最低は16.09でした(同11.05、同14.04)。

○世界最大の時価総額をめぐるアップルとマイクロソフトの戦いは、マイクロソフトが8,520億ドル(浮動株調整前時価総額)で首位に返り咲き、アップルの時価総額は8,470億ドルに(1兆ドル超から)減少して11月の取引を終えました。アマゾンは8,260億ドルで第3位でした。

○ビットコインは11月中に6,563ドルの高値と3,550ドルの安値を付け、10月末の6,441ドルから下落して3,976ドルで月を終えました(同13,850ドル、同968ドル)。

○ボトムアップベースで算出した1年後の目標値は、アナリストが足元の調整局面より先を見据えていることで市場の下落に対して持ちこたえ、S&P 500指数が3,179(現在値から15.2%上昇、10月末時点の目標値は3,129)、ダウ平均は29,020ドル(同13.6%上昇、29,173ドル)となっています。

●トランプ大統領と政府高官

○トランプ大統領はホンジュラスからメキシコに押し寄せる移民集団「キャラバン」(推定4,000~5,000人)の米国到達前に前進を止めないようであれば、対外援助を打ち切り、米・メキシコ国境を閉鎖すると警告しました。メキシコとの国境付近で移民集団との衝突が起きたため、トランプ大統領は移民集団の米国への入国を阻止するために軍隊を派遣し、メキシコ政府は暴力的な移民を国外退去させると発表しました。

○米政府は2015年の核協定の一環として解除されていたイランに対する経済制裁を再開しました。ただし、8カ国(中国、インド、イタリア、ギリシャ、日本、韓国、台湾、トルコ)はイラン産原油の輸入禁止の対象外としました。

・原油価格は大幅に下落しました。対イラン制裁を控えた原油生産の拡大を受けて一部で供給が増加しましたが、禁輸措置の対象外となった8カ国が原油輸入を急がなかったことが背景にあります。

○ブエノスアイレスで開催されるG20首脳会議(11月30日~12月1日)では、トランプ大統領と習近平国家主席の会談が市場参加者の注目を集めるでしょう。取引や議会にも影響を与えることが見込まれます。米中の貿易と関税をめぐる紛争は、景気減速(経済は成長しているとはいえ、これまでよりも勢いを失っている)と利上げ(個人消費、住宅市場、債務、とりわけ米国の政府債務への影響)とともに、依然として市場の大きな問題の1つとなっています。

・G20首脳会議がスタートし(金曜日午前)、カナダ、メキシコ、米国はNAFTAに代る新通商協定「USMCA」に調印しました。新協定の発効には、3カ国の議会の承認を得る必要があります。

●各国中央銀行の動き

○FOMCは11月の会合で金利を据え置き、声明の文言の変更をわずかにとどめ、次回の利上げが近づいていることを示唆しました。

○パウエルFRB議長は(テキサスでの講演で)、米国経済は好調だが2019年には逆風を受ける可能性があると警告しました。市場参加者は12月18-19日のFOMC会合で0.25%ポイントの利上げが実施されるとの見方を維持しました。

○パウエル議長は11月28日の講演で、金利は中立をわずかに下回る水準にあり、FOMCは経済指標を注視すると述べました。市場はこの発言をハト派的と解釈し、今後の利上げ回数が限られるとして好感しました。

○公表されたFOMC議事録(11月7-8日開催分)では、大半のメンバーが次の利上げが迫っており(12月18-19日の会合とみられる)、その後は緩やかな利上げを見込んでいることが示されました。

●ファンダメンタルズ

○業績面では、S&P 500指数構成銘柄の97%が第3四半期の決算発表を終えた段階で、利益と売上高は過去最高を更新し、77%の銘柄で利益が予想を上回り(過去平均は67%)、60%の銘柄で売上高が予想を上回りました。投資家の動きは引き続き今後の成長性をめぐる懸念に左右され、減税効果は既に織り込み済みで、内部成長に焦点が当てられています。市場参加者は第3四半期の営業利益は過去最高を更新し、第2四半期に記録したこれまでの最高から7.4%増、前年同期比では32.5%増になると予想しています。2018年通期では、利益は2017年を26.7%上回る見通しで(大半は減税効果による)、2019年は2018年から10.3%の増益が予想されています。

営業利益では、これまでに決算発表を終えた488銘柄中、予想を上回ったのは376銘柄、予想を下回ったのは74銘柄、予想通りだったのは38銘柄でした。売上高は486銘柄中293銘柄で予想を上回り、過去最高を更新しました。2018年第3四半期の売上高は前期比2.0%増、前年同期比10.7%増となりました。

配当に関しては、2018年11月の現金配当支払額は1株当たり6.78ドルと、これまで最高の2018年5月の6.55ドルを3.77%上回り、月間ベースの過去最高を記録しました。また、11月の配当総額も2017年11月の559億ドルを上回る573億ドルとなり、過去最高を更新しました。

S&P 500指数構成銘柄の年初来の配当は1株当たり49.52ドルで、2017年同期を8.75%上回り、総額では4,207億ドルと前年同期の3,907億ドルを上回りました。年初来で346銘柄が増配し(前年同期は325銘柄)、減配したのはわずか3銘柄でした(そのうちの1社であるWyndham Worldwideは、事業をスピンオフして2社に分社化し、スピンオフ後の2社の配当率は分社化前と同じでした。前年同期は10銘柄が減配)。346対3という比率は最近の指数の歴史において比類するものがありません(筆者が入手しているデータは2003年以降のものです)。11月末までの12カ月間の配当は前年同期比8.74%増(年初来では8.75%増)となり、年初来の配当総額は既に2017年通年の実績を上回っているため(12月は上乗せ分となる)、2018年も7年連続で過去最高を更新することになります。

自社株買いでは、数銘柄を残して大半が第3四半期の自社株買いの結果の公表を終えた現時点で、自社株買いの総額は既に1,998億ドルと過去最高を更新し、前期比9.6%増、前年同期比55.9%増となっています。発表された発行済株数の97%のEPSに基づけば、発行済株数は前年比での減少が加速しており、多くの銘柄でEPSが4%以上押し上げられています。第3四半期は17.6%の銘柄(2017年第3四半期は14.2%)が発行株数の減少によってEPSが4%以上増加しました。

注目すべきニュースとして、Apple(AAPL)がiPhoneの新型3モデル(9月発売)の減産に踏み切ったとの報道を受け、同社株は売りが続き、2018年10月3日に付けた最高値(233.47ドル)から23.5%下落して178.58ドルとなりました。自動車メーカーのGeneral Motors(GM)は60億ドルの経費削減計画(45億ドルの費用削減と15億ドルの設備投資縮小)を発表しました。計画の実施には雇用削減(6,300人の工場労働者と8,000人の月給制スタッフ)、工場閉鎖、ダウンサイジング(米国の5工場、カナダの1工場)が予想されています。GMは2018年第4四半期と2019年第1四半期に30~38億ドルの費用を計上し(18億ドルは現金以外の財源)、今後も電気自動車や自動運転車に向けた体制整備に取り組むと明らかにしました。

Rockwell Collins(COL)の買収(230億ドル)を完了したUnited Technology(UTX)は、自社をジェットエンジンと飛行制御システム、空調設備の「キャリア」、エレベーターの「オーチス」の3事業に分割すると発表しました。ホテル運営企業のMarriott(MAR)は傘下のスターウッド・ホテルズに対するハッカー攻撃で、2014年にさかのぼる不正アクセスにより最大5億人分の顧客アカウントが流出したと発表しました。

推定によれば、感謝祭からサイバー・マンデーまでの5日間のホリデーシーズンに、1億6,500万人の米国人(3億2,900万人中)が(オンラインや実店舗で)買い物をしました。当初のレポートと推定値を考え合わせると、実店舗での売上高は前年比4~7%減少し、オンライン売上高は25%増加したと見られ、最近の傾向が持続していることが示されました。Amazon(AMZN)はホリデーシーズンとしては過去最高の販売高(1億8,000万個の商品を販売)を記録し、MasterCard(MA)は前年比9%増を見込む一方で、実店舗の来客数は1%減少したと推定されます(ShopperTrak)。

米疾病対策センター(CDC)の発表によると、2017年の米国人の平均寿命は2016年の78.7歳から78.6歳に短縮しました(女性は81.1歳で横ばい、男性は2016年の76.2歳から76.1歳に短縮)。アナリストによれば、平均寿命の短縮は自殺の急増と医療用麻薬オピオイド関連の死亡者数増加が要因となっています。

「岐路に立つマーケット (3) 」へ続く

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