供給過剰のプラチナ、焦点は米中協議とパラジウム代替の動向<コモディティ特集>

特集
2018年12月26日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は、11月28日に発表されたワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)の四半期報告で供給過剰見通しが示されたことや、景気減速懸念を受けて軟調となり、再び800ドルの節目を割り込んだ。

今月1日の米中首脳会談で貿易戦争休戦で合意したことを受け、値を戻す場面も見られたが、通商協議の行方には不透明感が残り、戻りは売られた。776.5~806.1ドルのレンジ相場を形成しており、需給が改善するまで値固めの動きになるとみられる。ただ、米政府機関の一部閉鎖などを受けて株安が進んでいることで、年末年始で薄商いとなるなかレンジ下限を割り込むと、テクニカル要因の売りが出て予想外の安値をつける可能性もある。

●WPICの供給過剰見通し

WPICの四半期報告で、今年のプラチナは15.7トン、来年は14.2トンの供給過剰になるとの見通しが示された。今年は前回の9.2トンの供給過剰見通しから下方修正された。需要面では、石油やガラス部門の増加が目立ち、投資需要も堅調だったが、欧州の自動車触媒需要の減少や中国の宝飾需要の軟調に相殺された。

ただ、2019年の宝飾需要は2014年以来の増加が見込まれている。また、 パラジウムやロジウムに対する割安感から、投資需要も堅調が見込まれ、供給過剰幅を縮小するとみられる。供給面では、鉱山会社の操業に混乱がなく2019年の鉱山生産は2%増が予想された。二次供給では自動車触媒からの回収が進み、2019年は1%増が見込まれている。

2018年下半期の欧州の自動車販売は、9月1日から新たな燃費計測方法として「国際調和排ガス・燃費試験方法(WLTP)」が導入されたことによる影響で混乱した。WLTP導入前の7~8月は在庫一掃セールで販売が増加したが、導入後は再認証を受けていない一部モデルが出荷できない状態となって急減した。また、欧州のディーゼル車販売のシェアは第3四半期に36.8%(前四半期は37.7%)に低下した。

一方、中国では総重量3.5トン以下の乗用車と商用車が含まれる「軽型自動車」の新排ガス基準「国6」が規制値を2段階に分け、2020年と23年に適用される。広州市が2019年に導入する予定であり、「世界で最も厳しい排ガス規制」により、プラチナ系貴金属(PGM)の需要増加につながるとみられている。

2019年のプラチナは、パラジウムから代替の動きが出るかどうかが焦点である。電気自動車への移行が進むなか、代替技術を開発するのは難しいとみられる。ただ、パラジウムは史上最高値1281ドルをつけ、プラチナとの価格差が広がっている。代替が検討されても不思議ではない。

●米中の通商協議は1月に本格化

ムニューシン米財務長官は、来年3月1日までと期限を切った米中の通商協議について、両国高官らが会って本格的に交渉を始めるのは1月になるとの見通しを示した。12月1日の米中首脳会談では、貿易戦争の休戦で合意したのち、中国が米国車への追加関税を一時停止することや米国産大豆の購入再開に動くなど譲歩の姿勢を示した。

中国商務省は23日、通商問題を巡り21日に米中間で次官級の電話協議を行ったと発表し、貿易不均衡や知的財産権保護について「深い意見交換」ができたと明らかにした。中国では11月の小売売上高や鉱工業生産が事前予想を下回り、景気減速懸念が強まった。今回の通商協議で合意できなければ追加関税が課せられ、中国経済がさらに悪化するとみられ、中国当局としてはまとめる必要がある。

米国の対イラン制裁に違反した疑いで華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・最高財務責任者(CFO)がカナダで逮捕された。これは米中の次世代移動通信システム(5G)をめぐる覇権争いが背景にあるとみられており、米国の意図が通商問題の解決のほかに中国の台頭を阻止することにあるとすれば、米国の強硬姿勢は続き貿易戦争が長期化する可能性がある。今回の協議がまとまり、追加関税が見送られたとしても、これまでに課された関税が撤廃されるには相当な時間がかかりそうだ。

●ファンドの売り圧力が再び強まる

米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク・プラチナでファンド筋の売り圧力が再び強まった。買い越しは11月6日時点の2万3924枚がピークとなり、12月11日時点では1万0991枚となった。ただ、売り玉の増加が目立ち、テクニカル面で改善すると買い戻し主導で上昇するとみられる。また、ドル安や金堅調も下支え要因である。

株安が進んだため来年の米連邦準備理事会(FRB)の利上げ休止観測が強まっており、ドル相場の動きも焦点である。一方、プラチナETF(上場投信)残高は12月17日時点のロンドンで8.86トン(11月末9.11トン)、24日時点の米国で19.60トン(同19.02トン)、南アフリカで21.87トン(同21.87トン)となった。米国で安値拾いの買いが入ったが、ロンドンで減少しており、投資資金が戻るかどうかを確認したい。

(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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