徹底分析 2019年株式マーケット <新春特別企画 第2弾>

市況
2019年1月2日 17時00分

―春から反騰相場へ、後半は警戒モード再燃か―

佐藤俊郎(極東証券経済研究所 取締役 主席アナリスト)

2018年の主要国の株式市場は日本を含め7年ぶりに年間の騰落率がマイナスとなることが確実となった(2018年12月25日現在)。また、米国長期金利が上がっても下がっても株価が下がるなど、ちぐはぐな株価の反応も目についたが、個々の要因が指し示す景気先行き不透明感をベースに考えると概ね整合的といえる。米金利上昇を端緒とする2月の下落もさることながら、米中貿易摩擦激化の懸念や景気悪化懸念の増幅による12月の世界株価下落はとりわけ印象深い。

2019年は読みづらい年だが、前半はボラティリティが引き続き高く、イベントへの警戒感から下押し圧力が強いものの、懸念後退と売り過ぎたポジションの巻き戻しにより、春から反騰相場を想定している。後半は実際の景気次第だが、警戒モード再燃を念頭においている。以下、いくつかのポイントについてみてみたい。

●新年相場の行方を左右する5つのポイント

(1)景気サイクルは終盤を迎える

日本は1月に、米国も7月に最長の景気拡大期間となることから、既に「そろそろ感」がで出ている。日本は消費税の反動対策がかなり周到なため景気の急失速は回避されるかもしれないが、勢いはない。米国景気は、2019年も拡大が見込まれるが、減税効果の剥落から年後半は伸びが大きく鈍化しそうだ。OECD(経済協力開発機構)は2018年11月に経済見通しを下方修正した際に、「世界経済拡大(伸び率)のピークは過ぎた」と明言。景気後退には時間はあるが、景気サイクルは終盤を迎えるとみられる。

(2)株式市場はかつてないほど材料に敏感に反応するようになっている

例えば米国では、市場が景気後退の先行指標として注目している長短金利(10-2年)逆転も間近との連想から、12月に中短金利(5-2年)が逆転したことを機に景気懸念による売りが勢いを増した。過去の経験則では中短金利逆転から米景気後退までは1年以上(16ヵ月)のタイムラグがあり、かつ株価(S&P500)はその間2割以上(23%)上昇するにもかかわらずである。

(3)外部要因として重要なイベントが年前半に多い

世界景気の先行き見通しに直結するイベントを控え、特に2月から3月にかけての株式市場は楽観に傾きにくいだろう。2月末を期日とする米中貿易交渉(決裂した場合、3月2日に制裁関税が発動)が最大の注目材料だが、米日、米欧の貿易交渉も1月から開始される。欧州では大きな経済混乱を起こしかねない3月29日のハードブレグジット(英国の合意なきEU離脱)を回避できるかどうかが鍵となる。

(4)バリュエーションは割安で、売られ過ぎ感も強い

景気悪化の先取りが行き過ぎた結果、日経平均株価ではPERが既に10倍台(12月25日時点で10.7倍) と2012年6月以来、安倍政権発足前の不景気水準にまで低下した。PBRも2016年2月のチャイナショック以来の1倍割れとなった。3月にかけての政治イベントへの懸念は強いが、全て最悪の結果になるとは考えにくい。割安感と相まって株式市場は初夏に向けて反騰局面に入るとみている。

(5)年後半はまさに景況感との戦い

年後半にかけては、米国の経済刺激策、英国のEU離脱(ブレグジット)の帰結、中国の経済刺激策の効果次第で波は変わるが、景気鈍化が懸念される可能性を念頭に置くべきだろう。金融政策も投資家を神経質にさせる。特に欧州では、10月に任期を終えるドラギECB(欧州中央銀行)総裁が夏頃に利上げする可能性があると考えている。また、米欧日の中銀が行ってきた量的緩和による市中への巨額資金の供給は19年に転機を迎え、三極合計で吸収に転じることも気掛かりである。

●日経平均の想定レンジは?

既に十分割安との認識は上記の通りだが、2~3月に一段のオーバーシュートがあれば、下値は日経平均でみて1万8150円前後を目安に見ている。これはTOPIXのPBRが1倍を割り込む水準を日経平均に当てはめたもので、日経平均のPBRは0.94倍程度と試算される。その後の上値は19年度の企業業績見通しを微増益に置いても、PERが13倍で2万4000円程度の回復場面をみている。

●波乱相場で着目すべき7つのターゲット

まず、広い意味での“ディフェンシブ”に注目している。

(A)薬品、食品など一般的な業種で見るのではなく、海外展開している企業よりは内需中心のもの、バリュエーションが高すぎないものでシェアが高い企業が良いだろう。

(B)景気に左右されないテーマ関連にも注目。19年のプレサービスや20年の商用サービスに向けたアンリツ <6754> などに代表される5G関連が挙げられる。

(C)逆転の発想で通信株。携帯電話料金の引き下げ圧力やファーウェイ機器排除など政治的要素で敬遠されているが、いったんこうした材料を消化してしまえば、本来的に収入は内需中心で極めて安定的かつ配当利回りもそこそこ高い。

(D)高配当利回り株。12月以降、翌年の3月下旬にかけては高配当利回り株が物色されやすく、またディフェンシブ性も発揮しやすい。

次に政策関連では、

(E) ライト工業 <1926> などの国土強靭化(防災・減災)関連や、人材関連(人手不足、入管法改正)などに注目したい。

アグレッシブな戦術としては、

(F)業況悪化を先行して織り込んできたハイテク株。SCREENホールディングス <7735> など半導体製造装置、太陽誘電 <6976> など電子部品、牧野フライス製作所 <6135> など工作機械の大手が該当する。

(G)パワフルな企業。景気の変動の影響を最小限にとどめ得る、経営力に優れた日本電産 <6594> などの世界トップシェア企業である。

2018年12月25日 記

◆佐藤俊郎 極東証券経済研究所 取締役 主席アナリスト

国内銀行系証券、外資系証券でリサーチ中心に従事。2004年から極東証券の調査子会社、極東証券経済研究所に勤務。

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