IoT・AI活用で生産性革命、「予知保全」で新境地拓く銘柄群<株探トップ特集>
―熟練技術者のリタイア、IoTの“つながるリスク”で予知保全の重要性高まる―
2018年は物色テーマとして「IoT」や「人工知能(AI)」が度々取り上げられ、今年も引き続き相場のキーワードとなる可能性が高い。さまざまな分野で実証実験が進み、IoTやAIの本格導入段階に入ることが見込まれるなか、今月には「スマート工場EXPO」(16~18日)や「Japan IT Week 関西」(23~25日)などが開催される。IoTやAIを活用する動きは多岐にわたるが、製造業では生産性向上につながる「予知保全」の実現を目指す取り組みが活発化しつつあり、ソリューションを提供する企業のビジネス機会が広がっている。
●壊れる前の対応で稼働率低下を防止
予知保全とは、機器の状態をセンサーで計測・監視し、そのデータを基に故障や異常が発生する前ぶれを察知して部品の交換や修理を行い、予定外の生産ラインの停止を回避する保全方法。機器のメンテナンスといえば、故障が発生した後に実施する“事後保全”や、一定期間経過したときに整備・保守する“予防保全”が一般的だが、これらの方法ではトラブル発生に備えて交換用部品を在庫として抱えておく必要があるほか、事前にメンテナンス人員を確保しておく必要がある。対して予知保全では、効果的なメンテナンスにより機器の稼働率向上が図れるだけでなく、修理・交換をギリギリまで延ばすことが可能になることで、部品交換による無駄な費用やメンテナンスに伴う人件費を削減することができる。
製造業を営む企業が予知保全に関心を寄せる要因として挙げられるのが、長年培ったノウハウで故障の予兆などを検知することができる熟練技術者のリタイアに加え、センサーや通信機能を持ったモノ同士が情報交換することにより互いに制御するIoTが普及し、ひとつの機械・装置のダウンによる影響が非常に大きくなっていることがある。IoTやAIの普及に伴い工場のスマート化を推し進める企業が増えているが、高い生産性を維持するためには、予知保全は実現しておきたい管理システムのひとつ。総務省の試算では、20年には世界のIoTデバイス数が約400億個に達すると予測されており、予知保全サービスの市場は今後更に拡大することが見込まれる。
●ドコモはトータルパッケージを提供
こうしたなか、NTTドコモ <9437> は日本ユニシス <8056> 子会社のユニアデックスと協力し、昨年12月から「docomo IoTスマートメンテナンスパッケージ」の提供を開始。これは振動センサー、IoTゲートウェイ、ドコモのIoT向けLTE/3G回線、設備点検ソフトウェアをセットにした、設備点検診断業務のIoT化と機械学習・AI化を支援するパッケージサービスで、既存の設備にも取り付けることができる。
●東エレデバは新機能を追加
また、東京エレクトロン デバイス <2760> は11月、予知保全を実現する異常判別プログラム自動生成マシン「CX-M」に、正常データを学習し装置状態の変化を外れ値として検知可能な判別モデルを自動生成できる「外れ値判定機能」を追加。予知保全を行う場合、装置の振動や音、センサーなどの時系列データを解析して判別モデルを作成するが、正常時・異常時のデータの両方を所有するケースは多くはないのが現状で、「CX-M」はデータの種類に応じた分析方法を提供することで、顧客の状況に合わせた予知保全の実現をサポートする。
●サイバネットはベルトコンベア向けを検証
このほか、11月にはサイバネットシステム <4312> とキヤノンマーケティングジャパン <8060> 子会社のキヤノンITソリューションズ、亀山電機(長崎市)、toor(福島県三島町)の4社は、ベルトコンベアに取り付けられた温度、振動などのセンサー情報に加え、ベルトの状態の2D及び3D画像をIoTで取得・分析し、正常運用時との変化を可視化したMAPをモニタリングすることで、故障につながる予兆をいち早く検知する予知保全システムの検証を実施すると発表。伊藤忠テクノソリューションズ <4739> も同月、再生可能エネルギーなどの利用を管理するIoTクラウドサービス「E-PLSM(エプリズム)」に、設備異常の予兆を検知する機能を追加し、提供を始めた。
●安川情報、フィックスターズなどにも注目
これ以外にも、機械学習を利用した故障予知サービス「MMPredict」を提供している安川情報システム <2354> [東証2]、生産現場向けIoTソリューション「Olive@Factory」を提供するフィックスターズ <3687> 、AIを活用したドリル加工の診断技術「OSP-AI加工診断」を世界に先駆けて開発したオークマ <6103> 、製粉・飼料プラント設備向けIoTを導入した予知保全システムをコンピュートロン(東京都中央区)と共同開発した明治機械 <6334> [東証2]、製造業向け予兆検知アプリケーション「OMNI edge」(オムニエッジ)の商用化を目指しているTHK <6481> 、動作中の三相モーターの絶縁劣化状態が常時監視できる機能モジュールを開発済みのコンテック <6639> [東証2]などに商機拡大が期待される。
株探ニュース